彼は いつから私の彼氏?
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駅から歩いて10分程のところ。この前はイタリアンのお店で会ったから、私は初めて訪問するのだ。クリーム色の4階建ての小さなビルで、1.2階は歯医者さんで使っているみたいなのだ。窓には (たけみち歯科医院)の看板がかかっていた。
ビルの横にある階段のところの竹通の表札があるインターホーンを香ちゃんが押すと
「は~ぃ すみません 階段を3階まで来てもらえますか」と、一真さんの声だ。
階段の途中で一真さんが現れて
「ようこそ ごめんね 今日は わざわざ 呼びたてするようなことになってしまってー」
「あっ いえ 私達も楽しみにしてましたんですよーぅ」香ちゃんは、それまで、何となく、彼のことを悪く言っていたのに、会った途端に声が可愛らしくなっていた。
玄関から部屋ん中に通されると、広いリビングがあって奥の方から一真さんのお母さんが出てきて
「いらっしやい 今日はありがとうね 一真のために・・・」と、私達の短くなった髪の毛をしばらく見ていた。
「あっ 今日は お招きしていただいてありがとうございます」と、私は、お母さんから教えられていた口上とおりに・・・。
「水澄ちゃん 髪の毛切ったのね 香ちゃんも短いのねー 二人とも卓球やっているからなのね 今の人は 女の子でもスポーツやっていると すごく 短いのね」
「はぁ この方が すごく 動けるみたいでー」
「でも 男の子と変わらないぐらいに・・・刈り上げまでしてー 私等の頃は 短いと言っても 荻野目ちゃんとか内田有紀ちゃんのショートカットとかザンギリ頭ぐらいだったけどね」
「お母さん 時代が違うんだよ もう 男も女も区別無いんだよ」
「あっ そうだ゛ これっ! お誕生日おめでとう」と、差し出したハンドタオル。香ちゃんもハンカチを選んでいた。
「あぁ 二人とも ありがとう 女の子からこんなの貰うのって 初めてだしー 有難く使わしてもらいます」と、一真さんは変わらずに丁寧だった。
私達はダイニングテーブルを勧められて、おばさんが良い匂いが漂うものを出してくれて
「ラザニャよ 時々作るの 遠慮なく食べて下さいな」と、取り分けながら
「今日はありがとうね この子ね 中学から陽光学院でしょ お友達も少なくて 女の子にもまるで慣れなくて・・・ この前 水澄ちゃんにお願いしたのよね お話相手になってーって だけど、塾に通う様になって 途絶えちゃってー だから 今日 香ちゃんと水澄ちゃんに来てもらったのよ」
「だってよー ラインも聞いたけど 何 話していいのかわからんものー つい そのまんまになってしまった」
「そんなの 恰好つけんでも 普通に起こったことなんか送ればいいんやー」と、香ちゃんも早速 ラインを交換していた。
そして、おばさんが「パエリア仕上がったわー」と、テーブルに運んできた時
「ちょっと 待ってね 一真さん これっ 写真撮って・・・それで、私と水澄に送るの 今日はこれっ 食べました おいしそうでしょう? 僕の大好物です とかコメントつけて やってみてー」と、一真さんにレクチャーしていた。二人の携帯が鳴ってちゃんと送られて来たら
「うん その調子」と、香ちゃんがいじっていたら
「あっ おいしそー 食べたいぃー だって 早速 返ってきた あっ 水澄ちゃんは 作り方教えてほしい だって」
「そー そんな調子よ 例えば ウチなんか 陽光の学食なんかもどんなものなのか 興味あるモン 定食とか時々食べるんでしょ?」
「うん まぁー」
「そんな時 ラインするのよー 普通の生活の様子で良いの」
「そうかぁー それなら 出来るかなー」
「香ちゃん ありがとうね 自然に話し掛けてくれてー 一真も楽しそー あっ どうぞ 自慢のパエリァよ」
と、一真さんが取り分けてくれて
「これは 本当に僕の大好物なんだ」
「わぁー おいしいぃー」と、私も香ちゃんも感激していた。
「ねぇ 一真さんって お母さんから今日の話 聞いた時 わぁー 恐そーって思ってたけど お会いすると 背も高くて、清潔そうで いい感じですよー」と、香ちゃんは一真さんのことが好みに合ったみたいだった。
彼は、夕方から塾に行くと言っていたので、その帰り道、香ちゃんが
「ねぇ 水澄 ウチ 一真さんの彼女にしてもらっても良いかなぁー 恰好ええやんかー あっ でもラインは3人でね 水澄はさー 彼氏おるやんかー だから・・・」
「どうぞー 私に気つかわんとってー 私は何となく成り行きで知り合っただけやからー 頑張ってネ 香」と、言うと香ちゃんは ルンルンで歩いていたが、私はお母さんが、逢うのを好ましくないと思っている翔琉のことを考えていたのだ。
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