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侍女と不倫

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第一章

                侍女と不倫
 王は王妃を愛している、だが。
「よくあるお話ですね」
 王妃は側近の女官から自身の部屋の中で話を聞いて憮然として言った。
「世の中には」
「それはそうですが」
 女官は暗い顔で応えた。
「ですがこのことは」
「気付いていてもです」
 王妃は憮然としたまま答えた。
「王妃としてはです」
「何も言わないのですね」
「そうしなければなりません」
 栗色の波立つ見事な長い髪の毛と緑の大きな目と象げ色の歯に赤い唇を持つ美貌の顔で言った、長身で白いドレスがよく似合うスタイルである。
「こうした時も」
「左様ですか」
「それにです」
 王妃は女官にさらに言った。
「王は私を第一としていますね」
「お妃様ですから」
「私達の間には十人の子がいます」
「太子もお元気です」
「床のことは今も多いので」
「いいのですね」
「男の人はそうしたものです」
 今度は達観した言葉を出した。
「一人の女性を愛していても」
「火遊びをするものですね」
「私の父もそうでした」
 このことからも言うのだった。
「母を愛していても」
「浮気はされていたのですか」
「そうです、しかも」
 女官にさらに話した、見れば女官も長い金髪に青い目と面長の顔に豊かな胸を持つかなりの美貌の持ち主である。
「身分が低く器量もです」
「そうした相手をですか」
「選びます」
 そうだというのだ。
「これが」
「そうなのですね」
「そして母も黙っていましたし」
「王妃様もですね」
「そうします」
 こう言って実際にだった。
 王の浮気のことは何も言わなかった、夫婦生活は円満でだ。
 王の政務も子供達の世話もしていたので何も言わなかった、そしてそれは。
 王の不倫相手である自分の侍女の一人にもだった、見ればだ。
「あの、その相手の」
「彼女ですね」
「どうにもです」
 女官は王妃に話した、今も王妃の部屋で二人でいる。
「身分だけでなく」
「器量もですね」
「若いですが」
 十人もの子供を産んで立派に育っている太子も持っている王妃と比べてというのだ。 
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