まず足腰
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第一章
まず足腰
投手の肩は消耗品、八条大学野球部のキャッチャー古川義輝はよくこう言っていた。大柄でがっしりした体格で黒髪を真ん中で分けている。やや面長できりっとした貌だ。
「だからな」
「俺はか」
「ああ、投げるのは程々でな」
バッテリーを組んでいる椎葉正に言った、長身ですらりとした身体で脚が長く卵型の顔に小さな目と短い黒髪の彼にだ。
「それよりもな」
「走ることか」
「その方がいいな」
「監督もそう言うな」
「本当に肩はな」
ピッチャーのこの部分はというのだ。
「大事でな」
「消耗品か」
「もっと言えば肘もな」
この部分もというのだ。
「そうだからな」
「それでだな」
「練習はな」
そのメニューはというと。
「本当にな」
「投げるよりもか」
「ああ、走るんだよ」
「足腰を鍛えることだな」
「投げ過ぎるなよ」
練習の時はというのだ。
「いいな」
「わかった」
椎葉は古川の言葉に頷いた、そうしてだった。
練習は走り続けた、投げるよりもそちらだった。兎に角走って走っていった。そうすると次第にだった。
スタミナがついた、そして。
「足腰がしっかりしてな」
「安定してきたな」
「ああ」
古川にグラウンドでキャッチボールをしつつ話した。
「そうなってきたよ」
「そうだよ、足腰がな」
これがというのだ。
「どうかだよ」
「ピッチャーはそうか」
「そりゃ投げないとな」
練習の時にというのだ。
「駄目だけれどな」
「投げるポジションだからな」
「それでもな」
これがというのだ。
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