給食を馬鹿にするな
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第一章
給食を馬鹿にするな
給食と聞いてだ、フランスの大金持ちの御曹司で日本の小学校に留学してきたビクトル=ド=ピエールは馬鹿にした様に言った。長い金髪に青い目と中世的な顔立ちを持つ少年だ。
「全く、皆で昼食なぞ」
「いや、普通だろ」
隣の席の水田正雄が言って来た、黒髪を短くしたやや面長の元気そうな顔立ちの長身の少年である。
「どの国でもだろ」
「フランスの僕が前いた学校ではフルコースだったよ」
こう言うのだった。
「しかし日本、この八条学園ではかい」
「どの学校でも小学校だと給食だろ」
「駄目だね、やはりフルコースでないとね」
「フランスみたいにか」
「駄目だね」
「話は聞いたからな」
水田はピエールにクールに返した。
「食え、話はそれからだ」
「その給食をかい?」
「ここはフランスじゃないからな」
「日本だからかい」
「ある程度は日本に入れよ」
「日本語だけじゃなくてだね」
「そうだよ」
流暢な日本語を話す彼に告げた。
「騙されたと思って食え」
「美味しいのかい」
「滅茶苦茶な」
「フルコースよりもかい」
「ああ、だから食え」
あくまでというのだ。
「いいな」
「若しまずかったらどうするんだい?」
「甲子園の一塁側で巨人を応援してやる」
「それは死ぬからいいよ、僕は鯉党だからカープにしてね」
「日本に来てすぐに好きな野球チーム出来たんだな」
「たまたまネットで観た記事で興味持って試合を観たら大好きになったよ」
「野球もカープもか」
「あのひたむきさがいいね」
カープはというのだ。
「だからカープをお願いするよ」
「それじゃあな」
「うん、ではお昼は給食にするよ」
まずいに決まっている、そして水田は甲子園の一塁側でカープを応援すると確信していた。そのうえで給食を食べたが。
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