金木犀の許嫁
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第三十八話 狭い道を歩いてその一
第三十八話 狭い道を歩いて
二人は法善寺横丁に来た、そこは狭い石造りの道で佐京はその道に入ると夜空にすぐにこう言った。
「昔のね」
「タイムスリップしたみたいでしょ」
「そうだね」
こう言うのだった。
「自由軒もそうだけど」
「ここもね」
「そうした場所だね」
「そう、ここはね」
夜空は微笑んで答えた。
「本当に昔ながらのね」
「懐かしい場所なんだ」
「そうなのよ、一度火事で焼けたけれど」
それでもというのだ。
「復興してね」
「戻ったんだね」
「そうなのよ」
これがというのだ。
「それで夫婦善哉もね」
「あるんだね」
「時代が変わっても火事になってもね」
それでもというのだ。
「ここはね」
「変らないんだ」
「そうよ」
まさにというのだ。
「だからね」
「夫婦善哉もなんだ」
「これから行くお店もね」
「変っていないんだ」
「昭和のままで」
「織田作さんの頃のままなんだ」
「もっと言えばその前からよ」
織田作之助が生きていた時代よりもというのだ。
「こうなのよ」
「それでタイムスリップしたみたいに」
「懐かしい感じなのよ」
「そうなんだね、それじゃあ」
「ええ、今からね」
「お店に行って」
「善哉食べましょう」
「それじゃあね」
こう話して石造りの狭い道を歩くが。
その道についてもだ、佐京は言った。
「ここもね」
「古い造りよね」
「うん、狭くてね」
「今こうした道ないね」
「横丁といってもね」
それでもというのだ。
「もうね」
「こうした道もないね」
「けれどね」
それでもというのだ。
「ここはね」
「昔のままだね」
「残っていてお寺もね」
「あれだね」
前にあるその寺を見て話した。
「法善寺だね」
「そう、法善寺よ」
夜空はまさにと答えた。
「あそこがね」
「そうだね」
「あのお寺もね」
その法善寺もというのだ。
「昔からね」
「あるんだね」
「私達がずっと生まれる前からあって」
「織田作さん以前からだね」
「あってね」
それでというのだ。
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