彼は いつから私の彼氏?
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4-8
昨日の朝 翔琉と駅で会った時、私は後ろめたくてろくな話も出来なかったのだ。土曜日の練習は1年生の強化が目的で、2年、3年生も出てきているけど、主に自分の調整目的で、コーチ達は主に1年生の面倒を見ているのだ。
そして、練習終わる頃になって、私は石切コーチに呼ばれて
「水澄 スマッシュの練習ね 打ち込んできなさい」と、私相手にサーブを繰り出してきた。
「ダメ! もっと 上体を捻って思いきり振り切るのよー」「自分の打点まで身体持って行かなきゃー 打てないでしょ!」とか、いきなり厳しい声が飛んできて、嫌というほど球を繰り出してくるのだ。私がスマッシュを打ち込んでも、平気でコーチは打ち返してきていて、私の後ろには何人か1年生が球を拾ってくれるのだけど、私が空振りする度だから申し訳なかったのだ。しばらく、続いたのだけど
「お前はバカかぁー もっと 跳んでも良いから身体ごとをボールに持っていかなきやー返せないでしょ! 腕だけで返そうとしてもダメに決まってるじゃぁない! 打つ時はスキップしてもいいんだからね! モタモタしないでちょーだい!」
ボロカスに言われながらも何度目かにスマシュが決まり出すと、コーチの返球が強くなりだして、それでも喰らいついていった。30分ぐらいやっただろうか
「まぁ まぁ 見れるぐらいにはなってきたわね もっと 自分で 武器を考えなさいよ 次は、相手の球を返す練習ね あなた ドンくさいから頑張んなきゃーね」と、ようやく解放されたのだ。
「なんなの 水澄 眼つけられてるのかしら いじめカナー 鍛えてるといえば そーだし あなた ドンくさいだってー うふっ」と、香ちゃんが寄ってきて言ってくれたけど・・・私はヘトヘトでどうでも良かったのだ。今は、そんなこと考えられないぐらいバテていた。
もっと、気が重かったのはシャワーを浴びた後、香ちゃんに
「ごめんね 今日 知り合いと待ち合わせするんだ」と、別れて、震える手で電話帳の竹通一真さんを押した。
「もしもし 終わった?」
「はい 今 まだ 学校出るとこですけど」
「あっ そう じゃぁ 中央改札出たとこのマルシェの前で待ってます」と、直ぐに切られた。なんか、事務的な人と思いながら、指定されたところに向かった。
そこは、直ぐにわかって、頭が出ているあの人もわかったけど、この前と違ってメガネをかけている。むこうも私のことわかったみたいだけど、手を挙げるとかも無く近づいてきて
「すぐに わかりましたよね 芝生公園に行きましょうか」と、手をつなぐでも無く、さっさと歩き出した。私も仕方なく後ろから付いて歩き出した。信号を渡って公園に入っても、すたすたと歩いていて、後ろから歩いている私は これじゃー 補導されているみたいだなって思いながら歩いていたのだ。しばらく歩くと
「あそこに座りましょうか サンドイッチ買ってきたんだ」と、芝生の中に座ろうと
「あっ 私 バスタオルあるからー シャワーしたから 少し 湿っているけど」と、バッグから取り出して芝の上に敷いて、とりあえず並んで座ることになった。
「おなかすいているかなと思ってー」と、ミックスサンドとオレンジジュースのパックを渡してきた。
「ありがとうございます 本当はおなかすいてたんです えへっ いただきます」と、この人 意外と気が利くのかもと、パクッとしたんだけど (何かしゃべらなきやー えーと 何だっだけなぁー)
「あのーぅ 背が高いですよねー 何センチですか?」想定していたことと違うことを聞いてしまった。
「183cm 運動は何にもしていないので 木偶の棒って言われてます ははっ」と、少し笑い気味のとこは優しい表情だった。
「水澄さんは 卓球 大変でしょう?」
「えっ えぇー まぁ 今日もコーチからイジメみたいにしごかれてきました。 でも、鍛えられてんだって思って」
「イジメかぁー 水澄さんは可愛いからなー リスかうさぎのイメージだよ 僕だって 抱きしめたくなるよー」
「・・・あのー それ なんか 言い方 やーらしくないですか」
「あぁー ごめん 僕は中学から男子校だろう 付き合ったこと無いから 女の子とどう接して良いのかわからなくって 水澄さんは女子校どう?」
「どう ってー 私 別の中学校になってしまったけど 小学校から仲の良いグループで 男の子も居るからー」と、言いながら、当然 翔琉の顔が浮かんでいた。こんな風に芝生に並んで座って他の男の人と話してるなんて・・・気分悪いだろうなーと思いながら・・・。
「そうかー 彼氏か なんか?」
「えー そんなんと 違います」と、否定してしまった。
その後も、私の好きな食べ物とか好きなアイドルとか居るのとか聞かればなしで、私が尋ねる間もなかった。だけど 私 最初の緊張もほぐれて、笑ったりもしていたのだ。2時間以上も座り込んでいたろうか。
「あっ 気づかなかった こんなに居たら 日焼けしちゃうね ごめん」
「私 そんなの気にしませんからー」
「これからは ダメだよー シミになるっていうからー そんなきれいな肌なのにー」
「うふっ そーですねー」
「そろそろ帰ろうか? ねぇ 明日も会ってくれない? 長居公園 植物園もあるしアスレチックも・・・自然史博物館ってのがあって面白いんだよ 恐竜の骨組みなんかもある レプリカだけどね」
「わぁー 面白そう だけど・・・お母さんに聞いてみないと」この時、私は 一緒に行ってもいいかなって思っていた。
「うん 夜にでも 連絡ちょーだいな そうだ ライン交換しょっ」
と、帰りはようやく私は彼と並んで歩いていたのだ。まるで 付き合っているみたいになってしまった。同じ電車で・・・私が先に降りて、さよならしてきた。
その夜、お母さんに
「明日 長居公園に行こうって 誘われたんだけど・・・」
「一真さんに? 今日 どうだったの?」
「うん 天芝で座って お話しただけ」
「そう どぉーだったの? 彼の印象は?」
「この前 会った感じと違った まぁ 話しやすかったの 前とは違うのよ! そこの博物館に行ってみたいの」
「ふ~ん それで 明日もなのね いいんじゃぁない 行ってらっしゃいよ」
「えっ いいの? 家の用事は?」
「そんなの なんとかなるわよー 日焼け止め塗って行きなさいよ あとは、クリァマスカラとリップ薄いもの程度ね」
横でお兄ちゃんが聞いていたんだけど、別段 何にも 言って来なかった。翔琉君とのこと・・・は。
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