ポケットモンスター対RPG
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第23話:ポケモンの世界
謎の霧に包まれた山の謎を解く為に来た筈のグートミューティヒが謎の霧を抜けると、何故か広大な草原であった。
「これも……さっきの霧が見せてる幻よね?」
マシカルもアムもこれが謎の霧の罠ではないかと疑ったが、グートミューティヒだけはこの草原に危険は無いと確信した。その訳は、
「大丈夫だ。アレを視て」
グートミューティヒが指差す方向には、ケンタロス達が呑気に草を食べていた。
「モンスター!?」
マシカルにそう言われるアムだったが、
「あんな奴知らないわよ私!」
「何で元魔王軍のアンタがあいつらを知らないのよ!?」
その理由を知るのはグートミューティヒだけであった。
「そりゃそうさ。ケンタロスは魔王軍の手下じゃなくてポケモンだからさ」
マシカルはその言い分に理解に苦しんだ。
「ポケモンと魔王軍は違うってアンタは言うけどさぁ―――」
が、ケンタロスの群れの中にケンタロスとは違う姿の牛が混ざっている事に気付いたグートミューティヒは、マシカルの愚痴を聞いていなかった。
「あの黒いのは何だ!?あれもケンタロスなのか!?」
そして、グートミューティヒは何の警戒も無くケンタロスの群れに向かってしまう。
「調べないと」
グートミューティヒが珍しく危なっかしい行動を行うので、マシカルが慌てて呪文を詠唱するが、
「あ……マシカルの奴……まさか」
嫌な予感がしたグートミューティヒがマシカルの方を振り返り、マシカルが呪文詠唱を行っている事に気付くやいなや、
「2人共!早く逃げろぉーーーーー!」
そう。マシカルの呪文詠唱に気付いたケンタロスの群れは、マシカルを群れの平和を乱す敵と判断してしまい、マシカルに向かって『たいあたり』を試みたのだ。
「何これ……ヤバくない……」
「ちょっと待って!詠唱がまだ終わってない!」
だが、ケンタロスの群れはマシカルの呪文詠唱を待つはずも無く、グートミューティヒ達3人はひたすら走って逃げるばかりであった。
「ちょっとおぉーーーーー!詠唱時間を稼ぐって言ったじゃぁーん!」
「確かに言ったけど、ポケモンを敵に回すなんて一言も言ってなぁーーーーーい!」
「そのポケモンって何なのよおぉーーーーー!」
とか言ってる間に、逃げ回るグートミューティヒ達の前にシロデスナが立ち塞がる。
「不味い!シロデスナのすなあら―――」
が、グートミューティヒ達の背後にいる無数のケンタロスの群れを発見したシロデスナは、慌てて地中に隠れてしまった。
「シロデスナの奴……逃げやがったよ」
しばらくケンタロスの群れに追い回されたグートミューティヒ達であったが、どうにか茂みに隠れて難を逃れた。
「何なの、アレ?」
「私にも解んないよ」
「あばれうしポケモンのケンタロスだよ」
元魔王軍のアムより魔王軍の敵であるグートミューティヒの方がポケモンに詳しい事がどうも気になるマシカル。
「何で其処のダークマーメイドよりあんたの方が詳しいのよ」
が、グートミューティヒはその質問の意図が解らなかった。
「だって、アレはポケモンだよ。魔王軍所属のモンスターとは完全に別物だよ」
「別物って言われてもねぇ―――」
と言いながら茂みから出ようとするマシカルだったが、その拍子に何かを踏んでしまった様で……
「あ」
「ん?何?」
マシカルが踏んだそれは、ドダイトスの尻尾だった。
「グルルルルゥ……」
「え……」
ドダイトスの鳴き声に不安そうにドダイトスの方を向くマシカル。
「えーと……どちら様?」
「たいりくポケモンのドダイトスだよぉー!」
「ごおぉー!」
臨戦態勢に入ったドダイトスに驚きつつも文句を垂れるマシカル。
「こいつ木に化けてたって言うの!?紛らわしい事をするな!」
そんなマシカルに文句を垂れるアム。
「こんなに大きい奴に気付かないアンタが悪いんでしょうがぁー!」
そんな2人の口喧嘩などお構いなしに舌を伸ばすドダイトス 「不味い!養分を吸い取られる。ブーバー、バニリッチ」
幸い、ドダイトスは炎と氷に弱いので簡単に追い払えたが、
「あんた……いい加減にしてよ」
ポケモンだらけの世界に来てからずっとトラブルメーカーなマシカルの困り果てるアム。
「すいません……」
だが、グートミューティヒはそれどころではなかった。
「言い争いは……まだ早い様だぞ」
そう。白いポケモンが3人の頭上を飛んでいた。
「今度は何?アンタ、アイツに何をしたの?」
「何もしてないわよ」
が、マシカルの反論に自信が見えない。
しかも、このポケモンはケンタロスやドダイトスとは比べ物にならない程の大物だった。
「……ルギア……こんな幻のポケモンに逢えるなんて……」
そのルギアが3人の前に降り立ち、付いて来いと言わんばかりにゆっくりと歩き出した。
グートミューティヒは迷わず後を追うが、アムとマシカルはルギアを信じる事が出来なかった。
「さっきの牛や木に化けたオオトカゲの事が遭ったのに……」
が、アムにはルギアを追うグートミューティヒを追う以外の選択肢が無かった。
「でも、この世界のモンスターに詳しいのは……あの糞男だけよ」
元魔王軍のアムがグートミューティヒよりこの世界のモンスターに疎いと言われると……
「……私も付いて行った方が良い様ね……」
ルギアに案内されたグートミューティヒ達は、神秘的な泉に辿り着いた。
「あの泉は?」
「何か出てきそう……」
マシカルのボヤキに不安になるアム。
「何がって何よ?」
「知らないわよ。もう、優しい奴が出ると期待するしか」
「冗談はよせ!」
またアムとマシカルが口論になりそうになる中、ルギアはそれを無視して泉に方を向いて吠えた。
「何だ!?」
すると、カジキのような魚型の殻が泉から出て来た。
「出たアァーーーーー!」
本当に何かが出た事に慌て驚くアムとマシカル。
それに対し、グートミューティヒは冷静に訊ねた。
「これも……ポケモンなんだよね」
その質問に殻は答えた。
「珍しいですね。白魔界のモンスターと黒魔界のモンスターをちゃんと区別するとは」
殻の言葉にアムは首を傾げた。
「白魔界?」
「この世界の事です。我々モンスターは、元は2つある魔界の住人。それが地上界に興味を示して移住する事があるのです」
殻の主張にマシカルが噛みつく。
「移住ですって?侵略の間違いじゃないの?」
が、殻はマシカルの質問の意味が解らなかった。
「それは、移住者の事をどう思っているのかの話では?」
殻のその言い方に、アムはこの殻は魔王軍とは関係無いと判断し、殻を庇う様にマシカルの眼前に躍り出る。
「待て!こいつは魔王軍とは無関係だ!」
だが、グートミューティヒに敗けるまでマドノ率いる勇者一行に同行していた事もあってか、やはりモンスターの言葉を鵜呑みにする事はそう簡単には出来なかった。
「本当にそう言えるの?これが魔王の罠じゃないと?」
アムとマシカルの間に緊張が走るが、グートミューティヒもまたこの殻が敵ではないと感じていた。
「大丈夫だと思うよ。本当にこいつが魔王軍の手下なら、もう既に攻撃を受けてるか逃げ出している筈だ」
グートミューティヒにまでそう言われ、マシカルは矛を収めた。
「……あんたがそこまで言うのであれば」
3人共納得したと判断した殻は、焼きアサリの様に開いて中にいる長髪の女性を思わせる本体を晒した。
「私はカプ・レヒレ。そこの女装をしている星空の勇者に訊ねたい事が有ってそなたらをここに呼びました」
殻の予想外の言葉に、3人共耳を疑った。
「え?」
で、直ぐに冷静になって殻にツッコミを入れた。
「この中にマドノはいませんけど」
が、殻はお構いなしに話を進めた。
「マドノ?誰ですかソレ?」
「いや、そのマドノが星空の勇者―――」
「星空の勇者なら、そこにいますよ」
殻が指差したのは……グートミューティヒだった。
「……何?」
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