金木犀の許嫁
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第三十七話 織田作好みのカレーその六
「やっぱり高校生だけで入ると」
「鰻屋さんは違和感あるわね」
「そうだよね」
「どうしてもね」
「それはあるね」
「ええ、けれどね」
夜空はそれでもと笑って返した。
「織田作さんはこうしてよ」
「食べてたね」
「そうなのよ、場所は違ってもね」
「鰻も食べていたね」
「鰻丼をね、それもね」
夜空はさらに話した。
「お一人じゃなくて」
「奥さんとお二人でだね」
「食べてたのよ」
「そうだね、それで船場にも」
「織田作さんはよく行ってたのよ」
「そうだね」
「大阪のこうしたところにね」
佐京に鰻丼を食べつつ話した。
「いつもだったのよ」
「難波とかこの船場とか」
「道頓堀にもね」
「法善寺に行く途中に通るし」
「あちらにも。あと住吉大社とか梅田の方にもね」
「織田作さん行ってたんだ」
「多分ね。あと今宮にも」
そちらにもというのだ。
「行ってたみたいよ」
「新今宮かな」
「あの辺りもね」
「織田作さん行ってたんだ」
「本当に大阪のあちこちにね」
「行ってたんだね」
「あの人はね」
こう話すのだった。
「そうだったのよ」
「成程ね」
「大阪市内は全部遊び場だった様な」
「そんな人だったんだ」
「だから作品も大阪が殆どなのよ」
その舞台はというのだ。
「大阪を彷徨って最後に落ち着く」
「そんな作風なんだ」
「織田作さんはね」
「彷徨うんだね」
「そう、流れ流れてね」
そうしてというのだ。
「最後に仮寝の宿にね」
「落ち着くんだ」
「そしてほっとする様な」
そうしたというのだ。
「作品が多いのよ」
「面白そうだね」
「面白いわよ」
夜空は優しく微笑んで答えた。
「私は好きだから。純文学でも飾っていないし」
「読みやすいかな」
「読みやすいわ」
実際にというのだ。
「文章も作風もね」
「じゃあ今度本格的に読んでみるよ」
「読んで損はしないから」
夜空はこうも話した。
「だからね」
「安心して読めばいいね」
「ええ、最近までちょっとマイナーだったけれど」
「最近メジャーなんだ」
「文豪の人達を題材にした漫画やゲームにも出てね」
そうなってというのだ。
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