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金木犀の許嫁

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第三十七話 織田作好みのカレーその三

「この味なの」
「そうなんだ」
「お店もね」
「ずっとここにあるんだね」
「このままね」
「織田作さんの頃から」
「それで織田作さんが毎日みたいに来て」
 そうしてというのだ。
「このカレーを食べていたのよ」
「今の俺達みたいに」
「そうだったのよ」
 まさにというのだ。
「ずっとね」
「そうなんだね」
「これまでお話させてもらった通りね」
「昭和の頃のままだね」
「この辺りも色々変わるけれど」
 時代と共にというのだ。
「このお店とこのカレーはね」
「変らないんだね」
「織田作さん今もひょっとしたら」
 幽霊になっていてもというのだ。
「来ているかもね」
「そうなんだね」
「ええ、若しかしたら」
「織田作さん今もこのカレー好きなんだね」
「若しかしたらね。それで」
 今はというのだ。
「私達はね」
「このカレーを食べて」
「楽しみましょう」
「それじゃあね」
「そして」
 夜空はさらに言った。
「このカレーを食べたら」
「次のお店だね」
「そうしましょう、何かね」
 夜空は食べつつ言った。
「上本町で結構歩いたから」
「お腹空いてるね」
「だからね」
 それでというのだ。
「鰻丼食べられそうね」
「じゃあ法善寺横丁に行く前に」
「船場に行ってね」
 そうしてというのだ。
「いづも屋行きましょう」
「それじゃあね」
「昔はここからすぐそこにあったのよね」
「自油研からだね」
「グランド花月の方に行ったら」
 吉本興業の舞台があるそちらにというのだ。
「もうすぐにね」
「行けたんだね」
「そうだったけれど」
「今は違って」
「船場の方にあるから」
「そっちに行って」
「そしてね」
 そのうえでというのだ。
「食べましょう」
「鰻丼をね」
「次はね」
 こう話してだった。
 二人は自由軒のカレーを食べた、昔ながらの味がするそのカレーの味は二人を満足させた。そうしてだった。
 食べ終えて勘定を済ませるとだった。
「じゃあね」
「次はいづも屋だね」
「船場まで歩いて」
 そうしてというのだ。
「行きましょう」
「それじゃあね」
「あそこは昔は船が一杯行き来していたから」
「それで船場だね」
「海からも来て」
「川や堀を進んで」
「そうしてね」
 そのうえでというのだ。 
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