神々の塔
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第八十四話 三つの世界の主神達その八
「牛とかを殺してな」
「そのお肉や革を加工して売って生計を立てる」
「昔からそうしてたさかいな」
「死の穢れやな」
「それがあるって考えられてな」
それでというのだ。
「あるな」
「そやな」
「他の国やと差別されんやろ」
特にというのだ。
「牛や豚を殺しても」
「それがどないした」
シェリルは実際に何でもないといった口調で応えた。
「一体」
「そう考えるな」
「他の国やとな」
「ほんまそやな」
「生きものを殺してもな」
そうしてもというのだ。
「別にな」
「何でもないな」
「一体何がある」
シェリルは中里に問う様に言った。
「普通のお仕事の一つや」
「そう考えるな」
「お肉屋さんをやってもな」
ここで言う肉屋とは所謂屠殺業のことである、日本ではこの仕事が穢れとされて忌まれていたのである。
「別にな」
「何でもないな」
「ああ、というかな」
シェリルは怪訝な顔で中里に問う様に言った。
「汲み取りとかバキュームとか」
「日本にあるな」
「出すもん処理するな」
「そうしたお仕事もあるわ」
「清掃業もな」
「あるで」
「ゴミの回収とかな、そうしたお仕事は確かにな」
まさにというのだ。
「汚いものを扱うな」
「出したもんもゴミもな」
「そう言ってええな」
「しかしそうしたお仕事よりもな」
「生きものを殺す仕事は忌まれてたか」
「そやったな」
中里も否定しなかった。
「僕もそう思うわ」
「そやな」
「それだけや」
「日本では死の穢れが忌まれてきたんやな」
「そして今もな」
起きた世界だけでなくこちらの世界でもその考えはある。
「忌まれてる」
「それが奇妙にや」
「思う時があるか」
「私達にしてみればな」
こう言うのだった。
「そうや」
「何でそれで差別されるか」
「確かに血で汚れてな」
食材となる家畜を殺す際にだ。
「その匂いはあるけどな」
「仕事でやからな」
「そもそも殺さんとな」
「食べられへんな」
「そうやしな」
それでというのだ。
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