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馬乳酒

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第二章

「税も収めてもらうし用も申し付けるが」
「従えばですか」
「それでよい、だからな」
 それでというのだ。
「そなた達もだ」
「ここまで寛大ですか」
「これがモンゴルの常だ」
「左様ですね」
「その通りだ、それでこれから食事だが」 
 ハーンは使者にこうも言った。
「そなたもどうだ」
「私もですか」
「折角来たのだ」
 だからだというのだ。
「ここでだ」
「ご相伴して宜しいのですか」
「構わぬ。どうだ」
「お言葉に甘えまして」 
 それでとだ。
 使者は応えた、そしてだった。
 ハーンそれに居並ぶ重臣達と共に飲んで食べはじめた、それはモンゴルの料理で羊の肉に乳製品にだった。
 馬乳酒もあった、使者はその酒を飲んで言った。
「これは」
「どうであるか」
「あまり強くなく」 
 ハーンに飲んでから答えた。
「多く飲めます」
「それで身体にいいからな」
「だからですか」
「我が民達はよく飲んでいる」
 モンゴルの者達はというのだ。
「そうしているのだ」
「左様ですか」
「そのことがわかったな」
「よく。ただ」
 使者はハーンの言葉に頷いた、だがだった。
 ここでだ、彼はこうも言ったのだった。
「ハーン、宜しいでしょうか」
「何であるか」
「まずご無礼をお許し下さい」 
「無礼だと」
「これからの私の言うことに気分を害されたなら」
 そうなればというのだ。
「無礼ですので」
「何を言うのか」
「はい、馬乳酒のことはわかりましたが」 
 今話を聞いてというのだ。
「よく。ただハーンはあまり飲まれていませんね」
「そのことか」
「ご気分を害されたなら申し訳ありません」
「こんなことで気分を害したりはせぬ」
 ハーンは使者に鷹揚に笑って応えた。
「安心せよ」
「そうなのですね」
「実はわしは酒はあまり強くないのだ」
 ハーンは自ら話した。
「だからだ」
「それ程飲まれないのですね」
「そうなのだ」
「そうした事情がおありでしたか」
「左様、これでわかったな」
「はい」
 使者は確かな声で答えた。
「ハーンのことも」
「そうなのだ、モンゴルの者達もそれぞれな」
「酒の強い弱いがありますか」
「そのことも覚えたな」
「そうなりました」
「では飲もうぞ」
 こう言ってだった、ハーンは酒を少し飲んだ。居並ぶモンゴルの者達はどんどん飲み使者もそうした。羊肉や乳製品と共に飲むその酒は美味いものだった。


馬乳酒   完


                  2024・2・14 
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