金木犀の許嫁
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第三十五話 大阪でのデートその十四
「昔はそれ以上にね」
「結核で亡くなる人が多かったのね」
「そうだったのよ」
これがというのだ。
「本当にね」
「あと梅毒とかでも」
「そうした時代だったってことよ」
「結核が助からない病気だったのね」
「そうした時代だったから」
だからだというのだ。
「仕方なかったけれどね」
「結核が治らない病気だった時代ね」
「助からない病気で」
「そうだったから」
「そう、だから仕方ないけれど」
それでもというのだ。
「それでもね」
「残念って思うのね」
「私としてはね」
苦い顔でだ、真昼は話した。
「そうよ」
「そうなのね」
「それで今は幽霊になって」
織田作之助、彼はというのだ。
「大阪中をね」
「巡ってるのね」
「いつもね、白華ちゃんが出会ったその幽霊と」
真昼は妹に優しい笑顔で話した。
「出会えたらね」
「幸せね」
「ええ、そう思ってね」
それでというのだ。
「行けばいいわ」
「幽霊でもね」
「いい幽霊と悪い幽霊があってね」
「織田作さんはいい幽霊ね」
「めでたいね」
真昼はにこりと笑って言った。
「そうした幽霊よ」
「お会い出来たらラッキーな」
「そうしたね」
まさにというのだ。
「いい幽霊なのよ」
「そうよね」
「織田作さんは悪い人じゃなかったのよ」
「人としては」
「ふらふらと動き回るところはあっても」
大阪のあちこちを歩き回っていたのだ、そうして大阪を見て回って楽しんでもいたのが彼の人生だった。
「それでもね」
「根っこはなのね」
「いい人だったのよ」
「人を騙したり意地悪をしない」
「奥さんが好きなね」
「そんな人だったから」
「それで何よりもね」
それこそというのだ。
「大阪が大好きな」
「そんな人で」
「だからね」
そうであってというのだ。
「いい人だったし」
「幽霊になっても」
「今もね」
まさにというのだ。
「めでたいね」
「幽霊なのね」
「そうよ」
こう言うのだった。
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