助けを求めて回る犬達
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第二章
「助かったよ」
「私達は呼ばれただけでね」
ポーツマスはマーシャルに答えた、妻と子も一緒である。
「ルナがだよ」
「助けてくれたんだね」
「あの娘がね」
「そう言ってくれるんだね、確かにルナがいなかったら」
今も自分と一緒にいる彼女を観つつ話した。
「僕は死んでいたよ、散歩の帰りに倒れたけれど」
「ルナがいてくれて」
「そして助かったよ」
こう言うのだった、そしてだった。
ポーツマスの一家を家に案内してご馳走を振る舞った、そしてルナには特上の牛肉をあげたのだった。
その話をだ、ペンシルバニア州ピッツバーグで聞いたヤスオ=ムライ痩せて小柄なアジア系の銀行員をしている彼は自宅で友人に話した。
「私と同じだよ」
「君は散歩中に丘から六メートル下に落ちて」
「足を滑らしてね」
「大怪我をしたね」
「その時にだよ」
自分の傍にいる雌のゴールデンレッドリバー、大人しく寝ている彼女を優しい目で見つつ言うのだった。
「この娘、カオリが近所を回ってね」
「助けを呼んで」
「そうしてくれてね」
それでというのだ。
「実際に近所の人が来てくれて」
「それでだね」
「その人が救急車を呼んでくれて」
「病院に連れて行ってもらって」
「助かったんだ」
「そうだったんだね」
「犬は素晴らしい生きものだよ」
ムライは満面の笑顔で話した。
「本当にね」
「家族を絶対に見捨てない」
「そう、何があっても助けてくれる」
「それも全力で」
「それでね」
そのうえでというのだ。
「このことを私も伝えるよ」
「ネットでだね」
「そう、メルボルンの人と同じくね」
「カオリが君に何をしてくれたのか」
「そのことをね」
「いいことだよ、それなら」
「やっていくよ、カオリのことを知ってもらう為にね」
「ワン」
カオリは別にいいという感じで鳴いた、そしてだった。
家族に寄り添った、ムライはその彼女を愛しそうに見た。彼と共にいる友人はそんな彼等を見て自然と微笑みになった。
助けを求めて回る犬達 完
2024・9・24
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