お局さんの悩み
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第二章
「もうそこはね」
「断る筈ないわね」
「そう、それで今度籍をね」
「入れるのね」
「私としてはね」
晴子はさらに言った。
「二十八で社内でこっそりお局さんってね」
「二十八でなの」
「言われだしてたし」
「まだ若いのに」
「何か雰囲気がね、貫禄あるっていうし」
「あっ、あんたスタイルいいから」
「それでかしら」
「背が高くてね」
それでというのだ。
「その分体格もあるし」
「そう言われたの」
「そうだと思うわ」
「そうなのね」
「それでね」
友人はさらに話した。
「お局さんって言われてたの」
「そうだったの。気にしていない振りを装っていたけどね」
「内心何でって思ってたのね」
「そう言われるのかってね」
「そうだったのね」
「ええ、けれど結婚するから」
だからだとだ、晴子は笑顔で言った。
「もう言われないわね」
「そうね」
「これで悩みは解決したわ」
「結婚してお局さんって呼ばれなくなって」
「これからは奥様よ。三十になるぎりぎりで結婚出来たし」
このことについても言うのだった。
「本当にね」
「よかったわね」
「ええ、最高よ」
満面の笑顔で言った、そうして純也と結婚したが。
籍を入れて一年後だ、息子が生まれてから夫に苦笑いで言った。
「もううわ、よ」
「ああ、白髪あったんだ」
「髪の毛にね、三十過ぎて子供産んだら」
「一本だけだよね」
「一本でもあったから」
だからだというのだ。
「怖いわ」
「そうなんだね」
「悩みが解決したと思ったら」
結婚してお局さんとも言われなくなってというのだ。
「また一つよ」
「まあそうしたことはね」
「これが世の中ね、悩みは尽きないわ」
がっくりとして苦笑いしつつ言った、そうしながらも暮らしていった。夫の仕事も順調で息子の成長の然りで全体で見て幸せだと思いつつ。
お局さんの悩み 完
2024・9・19
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