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台風の時は出ない

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第三章

「全く」
「どうしてかな」
「朝から飲んでいるからよ」
 だからだというのだ。
「ビールをね」
「駄目かい?」
「幾らお休みになってもね」
 それでもというのだ。
「朝からお酒飲むのはよ」
「駄目か」
「そうよ」
 咎める声での言葉だった。
「それはね」
「いや、休日だし」
 今も飲みつつ言う。
「そうだしね」
「普段は休日でも夜からでしょ」
「飲むのはね」
「今日はどうしてなのよ」
「いや、ほっとしたから」
「社員さん達に伝えられて」
「皆が難を逃れられたからね」
 それでというのだ。
「くつろいでね」
「それでなの」
「飲んでるよ」
「もう会社絶対にお休みだから」
「神戸の本社からも英断だって言ってくれたよ」
「社長さんから」
「うん、だからね」 
 つまみの柿ピーを食べつつ話した。
「今日はね」
「朝から飲むのね」
「台風でも避難指示は出ないみたいだし」
 このこともあってというのだ。
「それでね」
「飲んで過ごすのね」
「たまにはいいよね」
 妻に問うた。
「そうしてもいいよね」
「全く。けれどいい判断したし」
 妻はやれやれと思いつつ夫に返した。
「許してあげるわ」
「そういうことでね」
「今日は特別よ」
「その言葉に甘えるよ」
 妻に笑顔で言ってだった。
 内田は窓の外の暴風と豪雨を見ながら缶ビールを飲んでいった、台風も外に出なければいいと思いつつそうした。そして次の日は見事に晴れていたので会社に出勤し社員達と一緒に働いたのだった。台風が過ぎた後の東京は晴れ晴れとしていた。


台風の時は出ない   完


                  2024・9・17 
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