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幼稚園に来た高級車

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第二章

「接しないと駄目ですね」
「そうだよ、それじゃあね」
「はい、真面目にです」
「やっていこうね」
「そうしましょう」
 こう話してだった。
 子供達を優しくバスから出して幼稚園に入れた、その間もベンツをちらちらと見たがそこにやって来たのは。
「あの人サッカー選手の」
「ああ、ジェイリーグもね」
「そういえば」
 大西はここであることを思い出して言った。
「ここチームの地元でしたね」
「あの人のいるね」
「そうでしたね」
「それであの人結婚して」
「お子さんおられたんですね」
「そうだよ、結婚したことは知っていても」
「お子さんおられたんですね」 
 大西は今知ったという顔で言った、実際に今知ったばかりだ。
「そうだったんですね」
「この幼稚園に通っていたんだね」
「そうですね、あの人は知ってますけれど」
 その選手はというのだ。見ればラフな普段着で明るい表情をしている。
「お子さんこっちだったんですね」
「そうだね、サッカー選手ならね」
「いいですね、ヤクザ屋さんでなくても」
 先程相模と話した昔のベンツのイメージから話した。
「それでも悪い人かもって思って」
「警戒したけれど」
「サッカー選手ならいいですね」
「お仕事としてはね」
「あの人真面目って評判ですし」
 今度はその人自身の話をした。
「ですから」
「いいね」
「はい、いや高級車を見ると」
 そうすると、というのだった。
「お金持ちでも」
「どんな人か気になるね」
「怖い人とか悪い人なら」
「そうしてお金持ってるとね」
「危ない人なので」
 だからだというのだ。
「近寄りたくないですが」
「それでもね」
「しっかり働いている人なら」
「いいよね」
「そうですよね」
「今はベンツでもね」
 笑って言うのだった。
「ヤクザ屋さんの確率減ったしね」
「ヤクザ屋さん自体減ってるそうで」
「そうみたいだしね」
「昔よりは安心していいですね」
「そう、そしてね」
 そのうえでというのだ。
「お子さんを送り迎えしているなら」
「何も言うことないですね」
「そうだよ」 
 相模は笑顔のままだった、そしてだった。
 大西は幼稚園の先生の仕事に入った、だがその中で。
 ふとだ、同僚の先生にこんなことを言った。
「私もベンツ乗りたいですね」
「ベンツですか」
「お金持ちになって」
「そうしたいですか」
「はい、ちらっと思いました」
 朝に見たその車を思い出して言うのだった、そして帰りは軽四で家に戻ったが軽四の快適さに満足もしていた。


幼稚園に来た高級車   完


                       2024・9・16 
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