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神々の塔

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第八十二話 神々の黄昏その三

「ほんまな」
「国家の仕組みはやね」
「常にな」
「必要やね」
「秩序は絶対に必要や」
 施も言い切った。
「無政府主義は完全な自由やない」
「地獄やね」
「何をしても許されるんはな」
 日本でも作家の小田実が言っていた、だがそうした社会はどういった代物かは最早言うまでもないことだった。
「全く以てや」
「間違いやね」
「犯罪に満ちていてな」
「それが犯罪やないとなると」
「もうな」
 それこそというのだ。
「今話してるや」
「とんでもない状況になるね」
「地獄にや」
「そやね」
「中国の歴史でもあったさかいな」
 施は自国の歴史からも話した。
「五胡十六国時代とかな」
「あの時は滅茶苦茶な国も多かったね」
「国もそうで状況もな」
 そちらもというのだ。
「ほんまな」
「モヒカンが暴れ回ってるみたいな」
「無政府状態やったりして宮廷に盗賊出たりもしたわ」
 西晋末期の状況だ、八王の乱がありこの国はそこまで荒廃していたのだ。そして遂に異民族に攻め滅ぼされたのだ。
「あの頃は」
「もう滅茶苦茶やったんやね」
「これがや」
「国家も法もない状況やね」
「宮廷に盗賊が出る位やとな」
「もう国中滅茶苦茶やね」
「実際荒れきってな」
 八王の乱の結果であることは言うまでもない。
「どうにもならん状況やった」
「そやったね」
「まだ三国時代の方がましやった」
 戸籍制度が崩壊し統計上の人口が六分の一にまで落ちた時代よりもというのだ。
「ほんまな」
「酷い時代やったね」
「そんな風になるさかいな」
 だからだというのだ。
「国家と法はや」
「絶対に必要やね」
「この二つがないとな」
 それこそというのだ。
「民が苦しむだけや」
「そや、何が悲しくてや」
 トウェインも綾乃に話した。
「国家とか法のない世界にするねん」
「やったら完全な自由どころかやね」
「暴力が支配する社会や」
「自由なんてないね」
「暴力振るう奴は自分の自由は認める」
 その自由はというのだ。
「そうする、けどな」
「それでもやね」
「他人の自由はや」 
 それはというのだ。 
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