八条学園騒動記
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第七百六十八話 ナンの歯磨き粉その一
ナンの歯磨き粉
ナンはアロアに自分の歯磨き粉を出して見せた、それはモンゴルでよく売られている白い練り歯磨き粉であった。
「これでよ」
「あんたは歯磨きしてるのね」
「ちなみに歯ブラシはこれよ」
今度は市販の固めの途中でやや角度が入っている歯ブラシを出した。
「これを使ってるの」
「そうして歯磨きしてるの」
「そう、いつもね」
「無臭なのね」
「ええ、それで奥歯までね」
「磨いてるのね」
「いつもね」
そうしているというのだ。
「私はね」
「そうなのね」
「それでも薔薇の歯磨き粉もいいのね」
「お口の中が奇麗になって」
アロアはそうしてと話した。
「しかも薔薇の香りがする」
「二重にいいものね」
「言うなら薔薇の石鹸やシャンプーと同じよ」
「ボディーソープとかと」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「結構ポピュラーよ」
「成程ね」
「私の国でもそうで」
「連合全体で見ても」
「そうよ」
まさにというのだ。
「お店に行けばね」
「売ってる?」
「普通にね」
そうだというのだ。
「これがね」
「そうだったの、私お店に行っても」
「ああ、自分が買うもの以外は目に入らないの」
「そうだからね」
そうした性分だからだというのだ。
「そうした歯磨き粉があっても」
「目に入らないの」
「それで気付かないのね」
自分で言うのだった。
「今思うと」
「そうなのね」
「けれどね」
ナンはあらためて言った。
「今度からはね」
「他の歯磨き粉も見るわね」
「しかもね」
それにというのだ。
「歯磨き粉以外のものもね」
「見るのね」
「いや、最低限でいいって」
「考えるのね」
「どうしてもね」
「それが遊牧民の生活ね」
「そうね、どうしても余分なものは持てないから」
定住せず常に移住する、それでは多くのものを持って行けないのだ。このことは基本この時代も変わらないのだ。
「買いたいものを買ったら」
「他のものは買わなくて」
「見ることもね」
そうすることもというのだ。
「しないわ」
「遊牧民の習性ってやつ?」
「そうかもね」
こう言うのだった。
「今気付いたけれど」
「ううん、そこはね」
アロアは考える顔で述べた。
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