ハッピークローバー
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第百四十一話 楽園はなくてもその七
「とてもね」
「それはどうしてなの?」
「だってね」
そう思う理由も話した。
「阪神クライマックスで勝ってね」
「シリーズ出場決めたわね」
「だからね」
それでというのだ。
「凄くね」
「幸せよね」
「しかも巨人がね」
憎むべき邪悪の権化であるこのチームがというのだ。
「最下位だしね」
「あそこはもうとっくに決まってたけどね」
「最下位がね、けれど阪神がペナント制覇して」
そうしてというのだ。
「シリーズも出て」
「巨人が最下位なら」
「それならね」
まさにというのだ。
「幸せだよ」
「それを言ったら」
理虹は笑顔で応じた。
「私もよ」
「理虹ちゃんも阪神ファンだったね」
「それでアンチ巨人だから」
それでというのだ。
「阪神が優勝してね」
「巨人が負けたら」
「もうね」
「幸せだね」
「ええ」
そうだというのだ。
「本当にね」
「八条学園だったら皆そうだね」
「この団地でもね」
「関西だから尚更だね」
「今巨人ファンなんてね」
この邪悪と悪徳に満ちた全人類普遍の敵であるこのチームはとだ、理虹は古田に対して酒を飲みつつ話した。
「もう殆どいないでしょ」
「十二球団で一番人気ないよ」
「ダントツでね」
「そうなってるよ」
まさにというのだ。
「今やね」
「二十五年連続最下位で」
「勝率一割台のね」
「チーム打率とか何でも最下位で」
「しかも不祥事ばかり起こる」
「そんなチームだから」
「もうね」
今ではというのだ。
「人気最下位だよ」
「そうなってるわね」
「それで嫌いな人はね」
アンチ巨人はというのだ。
「もう殆どの人がだよ」
「野球を好きな人は」
「そうなってるよ」
「巨人はそうなったわね」
「昔は」
古田は昭和の頃の話をした。
「巨人軍、大鵬、卵焼きってね」
「言ってたのよね」
「けれどね」
それがというのだ。
「今はね」
「アンチばかり多いわね」
「高度成長の頃は」
昭和三十年代のことだ。
「子供はね」
「皆その三つが好きだったのよね」
「そうだったよ」
「おかしな時代だったのね」
「白が黒になる位にね」
まさに悪が善となる様なだ。
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