八条学園騒動記
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第七百六十六話 沙羅双樹の花その十三
「卑しい存在です」
「地獄に堕ちるのと同じ部分がありますね」
「餓鬼になることは」
「そうなのですね」
「確かです」
ここでベッキーはこう言った。
「地獄に仏とです」
「言いますね」
「仏は地獄の亡者も救うと」
「そして実際にです」
「救うことがありますね」
「餓鬼も同じです」
彼等もというのだ。
「そうした時もあります」
「そうなのですね」
「ですが」
それでもとだ、セーラはベッキーにも話した。
「それが出来るのは仏だからです」
「悟りを開いた」
「そしてそれだけの力を得た」
そうしたというのだ。
「人を超越した存在だからです」
「出来ますね」
「人では無理なのです」
「餓鬼を救うことは」
「仏でなければ。地獄の亡者を救うことも難しいですが」
「仏でなければなので」
「餓鬼もです」
彼等もというのだ。
「同じです」
「仏でないとですね」
「救えないのです」
「そうなのですね」
「それだけです」
「餓鬼は救われにくいですか」
「人や生きものとは違います」
全くというのだ。
「無論修羅ともです」
「非常に救われにくい」
「そして苦しむので」
そうであるからだというのだ。
「なりたくないですね」
「全く以てですね」
「なれば今お話している人と同じです」
「絶対になりたくないものですね」
「はい、そうなってしまいます」
まさにというのだ。
「人であるなら」
「人ならですね」
「そこまで堕ちたくないものですね」
「地獄にもで」
「餓鬼にも」
「そしてそう思うからこそ」
だからこそというのだ。
「人は学びです」
「努力しますね」
「そうですね」
「そうなのですね」
「そうしないと駄目ということですね」
「私も餓鬼になりたくありません」
絶対にとだ、セーラは言い切った。
「ですからこれからも」
「努力をされますね」
「学問に修行を重ねられますね」
「そうされますね」
「ずっと」
「そうして自分を磨いて高めていきます」
そうするというのだ。
「絶対に、餓鬼はまことに戒めです」
「その存在が」
「餓えて渇き苦しんでいる彼等は」
「浅ましさ、卑しさ、醜さ故に」
「お嬢様にとってもですね」
「そうですので」
だからだというのだ。
「信仰も忘れません」
「では私もです」
「私もです」
ラメダスもベッキーもセーラに続いた。
「そうしていきます」
「修行と学問を続けていきます」
「そして己を高め」
「餓鬼になぞなりません」
「それが幸福になります」
餓鬼にならないそれだとだ、セーラは二人に答えた。そして沙羅双樹を見続けた。木は何も言わないがそこにこの世の理を見せていた。
沙羅双樹の花 完
2024・6・2
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