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金木犀の許嫁

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第三十二話 大阪の野球その十

「何かあるとです」
「行けばいいですね」
「そしていい経験をされて下さい」
「わかりました」
「野村さんもおられたのですし」
「そう思うとです」
 白華は幸雄に彼の写真を観つつ話した。
「野村さんが身近に感じられてきました」
「すぐそこにおられる様な」
「はい」
 まさにというのだ。
「その様に」
「そうなのですね」
「本当に」
「そうですね」
 幸雄もそれを否定しなかった。
「私もです」
「幸雄さもですか」
「そう思います」
「そうなのですね」
「南海の後はです」
 それからはというと。
「基本東京におられましたが」
「阪神の監督もしていましたね」
「ですが」
「基本は、ですね」
「東京だったので」
「あまり、ですね」
「今ではです」
 南海時代と違ってというのだ。
「大阪のイメージはです」
「ないですね」
「そうした方ですが」
 それでもというのだ。
「確かにです」
「ここにおられましたね」
「そうでした」
 まさにというのだ。
「かつては」
「そのことは間違いないですね」
「昭和のお話になりますが」
 野村克也が南海ホークスにいた頃はというのだ。
「そうだったのです」
「昭和ですか」
「はい、もう過去ですね」
「私達誰も生まれてないですから」
 白華はそれでと答えた。
「そうですね」
「過去ですね」
「そうですね」
「ですがまだ昭和生まれの人達もです」
「おられますね」
「それも多く」
「それで南海も」
 白華はこのチームもと話した。
「昭和の頃にはあって」
「大阪球場で野球を観た人もです」
「おられますか」
「野村さんの現役時代をです」
 南海でのそれをというのだ、尚野村は南海からロッテ、西武と移籍していき最後は西武でユニフォームを脱いでいる。
「そうです」
「そうなんですね」
「私達にとっては歴史ですが」
「野村さん達が難波を歩いていたことは」
「そうした人達にとっては思い出です」
 そうだというのだ。
「そうなります」
「そうですか」
「歴史と思い出はまた違うでしょう」
 幸雄は温かい目になって話した。
「歴史は自分ではです」
「経験していないですね」
 佐京が言ってきた。 
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