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澄まし灰

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第二章

 主は実際に店の中を調べ回った、するとだった。
 この状況に悪事がばれる前に言った方が罪は軽くなる、そして逃げるより早く楽になりたいと思ってだった。
 治郎吉は白状した、そのうえで主に平伏した。
「どうか許して下さい」
「売るもんを駄目にしようとするのは絶対にあかん」
 主は治郎吉に告げた、その場には留吉と半助もいる。
「商売人としてや」
「やったらあきませんね」
「何があってもな」
 こう言うのだった。
「あかん、しかしな」
「それでもですか」
「最近の茂三はわしから見てもや」
 今そこにいない怒った彼はというのだ。
「目に余るわ」
「怒り過ぎですか」
「やっぱりそうですね」
「そや」 
 留吉と半助に話した。
「どうもな、それでわしから言うとくわ」
「あまり怒らへん様に」
「そうですか」
「そや、振られた八つ当たりも入っててな」
 そうであってというのだ。
「些細なことで怒ってると身体がもたん」
「怒り過ぎは身体に悪いですね」
「そう言われてますね」
「そやからな、それでな」
 店の主としてというのだ。
「言うとくわ、そしてな」
「それで、ですね」
「これからはですね」
「あまりな」
「怒らへん様にね」
「言いますね」
「そうするわ、それで酒に話を戻すが」
 治郎吉に顔を戻して彼に話した。
「今後はするな、ええな」
「何があってもですね」
「今度やったら店追い出すさかいな」
 こう言うのだった。
「商売道具わざとあかん様にしたら」
「わかりました」
「しかしや」
 それでもというのだった。
「今回はええ、それにや」
「それに?」
「澄んだ酒はえらい奇麗でな」
 彼が灰を入れたそれがというのだ。
「試しに飲んでみたらな」
「どうでした?」
「美味かった、濁った酒もええが」
「澄んだ酒もですか」
「よかった、そやからな」
 治郎吉に微笑んで話した。 
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