ボーイズ・バンド・スクリーム
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第4話 ロックンローラーズ
前書き
おつマグ!(おつトゲ!的なやつです!#流行れ)それでは今回もどうぞ!
「へえ、ONES CRY OUTかあ。聞いたことあるよ。曲も知ってる。インディーズじゃ名が知れてるほうじゃないか?」
「本当かっ!?嬉しいな…ま、まだまだ発展途上だけどな。俺のボーカル力は大したことないし。じいちゃんと比べられちゃうからな。あとはドラムが安定しなくてな…ハマれば強いが、お前のとこのすばるが羨ましいよ」
ラゾーナ川崎1階がブリチキンにて。唐揚げを堪能しながら昔話もそこそこに近況を話し合う瑞貴と桃香。瑞貴は大学に通いながらインディーズバンド、ONES CRY OUTのボーカルをしていた。厭世的な歌詞や絶望の中に希望が見えるような歌詞をロックチューンに乗せて歌う。バンドのイケメン率が高く個性派メンバーが多い。トークを楽しみにしているファンが一定おり、ファンの間ではワンクラの相性で親しまれていた。
(あれ?こいつと話すのってこんなに楽しかったか?それとも告白されて舞い上がってるのか?)
桃香は自身の気持ちが分からなくなっていた。瑞貴は確かにイケメンだ。今はインディーズかもしれないが有名演歌歌手の孫というバックボーンがある。着実に成長し、有名になって日本を代表するアーティストになるかもしれない。将来有望株だ。
(くそっ、私最低だ…白石は私のことを真剣に想ってくれてるのに打算的な考えばかり!)
「河原木?体調、悪いのか?顔が険しいぞ?」
心配そうな顔で瑞貴は桃香に顔を近づける。
「だ、大丈夫だから!顔が近いって!」
「わ、悪い…」
(だから!そんな悲しそうな顔すんなよ…本気で好きなのかよ、私みたいな女が)
端正な瑞貴の顔が近くにある。告白された気恥ずかしさもあってか、桃香は強い口調が出てしまう。瑞貴は捨てられた子犬みたいな表情で彼女から顔を離した。
「お前のせいで変に意識してしまうだろ!」
「意識してくれてるのか?」
「またお前はそうやって…私をからかってそんなに楽しいか?どうせ女と同棲してるんだろ?」
「…ぷっ、あははっ!」
「な、何がおかしいんだよ!」
瑞貴は友達と同棲していると言ったが、女友達とは一言も言っていない。桃香の勘違いに吹き出してしまった。
「いや、悪い悪い…俺が同棲してんのは男だ。工藤春樹って覚えてるか?あいつだよ」
「ああ…確かいつもお前と一緒にいたよな?」
「部活が一緒だったしね。小・中・高と一緒で腐れ縁みたいなもんさ」
「幼馴染ってやつか」
「そうそう。いやー、なんか河原木と話すの楽しいな」
「そ、そうかよ…」
まさか同じことを考えていたとは言えない。桃香は恥ずかしさを誤魔化すようにビールを一気に飲み干す。
「河原木はどう?今のバンド楽しい?」
「楽しいよ。自分がボーカルじゃないバンド、やってみたかったんだ。ギターに専念したかったって言うかさ」
「仁菜は17歳だっけ?荒削りだけど年相応の貫禄じゃないな、あれは。河原木、慧眼すぎ」
「あははっ、ありがとう。あいつも私のファンだったらしい。最後のつもりでアゼリアで路上ライブしてたら声かけてくれて。実家帰るつもりだったのを『一緒に中指立ててください』って言われて、まあバンドやってみるかって」
「えっ、何だよそれ。俺も見たかった…」
「もうしてあげませーん」
「ず、ずるいぞ河原木!」
本気で悔しがる瑞貴がおかしくて、くすくす笑いをする桃香。瑞貴の電車の時間が迫っており桃香を家に送ってから帰ることにした。
「悪いな、家まで送ってもらっちゃって。その…気をつけて帰れよ」
「いいって。変なやつに絡まれでもしたら俺の寝目覚めが悪くなる」
「はいはい。じゃあ、またな」
「ああ、また!」
瑞貴は名残惜しい気持ちと喜びを胸に帰路に着くのであった。
後書き
いつも読んでくださってありがとうございます!今年の投稿はこれが最後になります!みなさん良いお年を!
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