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八条学園騒動記

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第七百六十五話 感謝されずともその十二

「あの人の持っていたものです」
「他にはですね」
「まさにです」
 それこそというのだ。
「持っていませんでした」
「人間の徳分も」
「そうでした、器もです」
「人としてのそれも」
「実にです」
 極めて強い否定を以て言った。
「小さかったです」
「そうでしたね」
「離婚した時に」
 その時のことをここでも話した。
「爪切りまで持って行ったなぞと」
「言うことはですね」
「もうそのことをです」
 器の小ささをというのだ。
「物語っています」
「自分で、ですね」
「そうです」
 まさにというのだ。
「何ともです」
「器が小さいですね」
「爪切りまで言うなぞ」
「離婚の時爪切りまで持って行った」
「衝撃の言葉ですね」
「器が小さく」
 それに加えてというのだ。
「そこまでお世話になっていたことへのです」
「感謝の気持ちもない」
「恩義を知らないですね」
「それも全く」
「そう言えますね」
「それにです」
 さらに言うのだった。
「それを人に言う無神経さ」
「それも相当ですね」
「かなりのものですね」
「人に言えばどう思われるか」
「その様なことを」
「それすらもわかっていない」
「実に無神経ですね」
「そして爪切りまでも買っていない」
 自分でというのだ。
「吝嗇ですね」
「それ位と思いますが」
「それが、ですね」
「まさに爪切りさえ買わない」
「自分では」
「またそれすら買うお金もない程です」
 自分ではというのだ。
「甲斐性もない」
「実に情けないですね」
「恥ずかしいですね」
「そうしたことまで見ますと」
「実に」
「器が小さく」 
 その人を総括してだ、セーラは話した。そこは感情は出さずそうして淡々と言っていくのであった。
「恩義を知らず無神経で」
「そこにですね」
「さらにですね」
「吝嗇で甲斐性なく恥も知らない」
「大人になって」
「それでもですね」
「四十代でのことですが」 
 そう言ったのはというのだ。
「四十代でこれです」
「自分はこの世で最も偉いと思っていても」
「そうしたものですね」
「そして餓鬼になっていた」
「生きながら」
「そしてです」
 そのうえでというのだ。
「今は餓鬼道にいます、やはりそうはです」
「そこまでなれないですね」
「流石に」
「はい、あまりにもです」 
 実にというのだ。
「浅ましく醜いですね」
「左様ですね」
「そこまでいきますと」
「餓鬼とはそうしたものですね」
「何もかもが浅ましく醜いですね」
「ですから」
 そうした存在だからだというのだ。
「布施餓鬼をしないと言うなら」
「わかりますね」
「その考えも」
「はい、まことにです」
「卑しいので」
「浅ましく醜いので」
「そうした人はです」
 まさにというのだ、そしてだった。
 セーラは今度は庭に咲いているある木を観た、その木はというと。


感謝されずとも   完


                  2024・5・24 
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