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小柄なパワーヒッター

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第一章

                小柄なパワーヒッター
 怪童中西太を見てだ、福岡でサラリーマンをしている田中健介黒髪をスポーツ刈りにしていて長方形の顔で明るい顔立ちの彼は驚いた、背は一七三位で痩せている。
「へえ、プロ野球選手にしちゃ小柄ですね」
「お前と同じ位だな」
 上司で主任の荒岩海男が応えた、一八五のがっしりした体格で黒髪は短く顎が大きく太い眉を持っている。
「そうだな」
「はい、意外と小さいですね」
「ああ、しかしな」
 荒岩は田中と一緒に平和台球場の一塁側で西鉄ライオンズの野球を観つつ話した、その中西が所属しているチームだ。
「凄いパワーだな」
「弾道は低いのに一直線に凄いスピードで飛びますね」
「打った打球はな」
「この前の場外一五〇は飛んだそうで」
「打ったボールが燃えていたとかな」
「凄いですよね」
「守備もいいし足も速いしな」
 荒岩はこのことも話した。
「いい選手だよ」
「全くですね」
「小柄でもパワーがある選手はいるんだ」
「そうですね」
「だから今日もな」
「西鉄の試合観ますか」
「そうしような」
 まだ二十代の二人はそんな話をしながら西鉄の野球を観ていった、歳月は流れ西鉄は紆余曲折を経て西武ライオンズになり所沢に移転し。
 それから南海ホークスがダイエーホークスとなり平和台に来てだった。
 福岡にドームが出来るとそこに移転した、それから暫くしてだ。
 一時期オリックスに行っていた南海時代の主砲門田博光が出戻りの形で福岡に来た、その頃田中も荒岩も五十代で荒岩は定年間近だったが。 
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