子供の頃は太っていても

　　　　　　　　　　　　　　　　子供の頃は太っていても
　小学四年生の奥田美紀は丸々と太っている、面長で丸い目と黒いポニーテールで色白で赤い唇の形がとてもいい。
　太っているのでクラスでよくそのことをからかわれる、だが本人は気にせず笑って言うばかりだった。
「それじゃあ大人になったら女性力士になるわ」
「ああ、そうかよ」
「勝手になってろ」
「それで熊でも倒してろ」
「その時はサインくれよ」
　からかうクラスメイト達もあっさりと返され本人が平気なのでこう返した、美紀は太っていても明るく面倒見がよく親切でしかも学校の成績もそこそこいいので太っていることをこう返されると誰も何も言わなかった。
　そんな彼女が中学に入るとだ。
「水泳部に勧誘されたから」
「水泳部に入るの」
「そうするわ」
　自分そっくりの母の美帆に答えた。
「これからはね」
「水泳ね」
「続けられるかどうかわからないけれど」
　それでもというのだ。
「とりあえずね」
「やってみるのね」
「そうするわ」
　こう言ってだった。
　美紀は水泳部で毎日身体を動かしはじめた、すると。
　徐々に脂肪がなくなっていった、同じ中学校に入ったクラスメイト達はその彼女を見て驚いて言った。
「お前痩せたな」
「力士さんになるんじゃないのかよ」
「水泳はじめたら痩せたな」
「凄いな」
「いや、水泳って全身運動でしょ」　
　美紀は彼等に笑って話した。
「だからね」
「カロリー消費してか」
「痩せたんだな」
「力士さんじゃなくなったんだな」
「今じゃね」
　美紀は笑ってこう言った。