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犬を食べても

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第一章

                犬を食べても
 仕事から帰ってだ、ふわりの飼い主である国咲家の息子でラーメン屋で働いている家の息子の洋介は父で先に仕事から帰っている文太に言った。
「今日店の中でお客さんが話してたけれどな」
「どうしたんだ?」
「いや、犬食うって話してたんだよ」
「ああ、そうした国あるな」
 父は夕食の席に着いた息子に応えた。
「中国とかベトナムとかな」
「韓国とかな」
「昔は日本でも食ってたぞ」
「そうらしいな」
「ああ」
 まさにというのだ。
「実はな」
「終戦直後とかな」
「食いものがなくてな」
 そうした状況であってというのだ。
「それでな」
「犬食ってたな」
「仁義なく戦いって映画あるだろ」
「ヤクザものだったな」
「あれでも出てたぞ」
 犬を食べる場面がというのだ。
「鍋にしてな」
「そうだったんだな」
「ああ、だから昔は日本でも食っていたしな」
「珍しいことでもないか」
「そうだ、ただな」
 父は息子と一緒にジャーマンポテトのベーコンを食べつつ言った。
「今はどの国もあまりな」
「犬は食ってないか」
「実際俺達今何食ってる」
「ベーコンだよ」
 息子もベーコンを食べつつ応えた、厚切りのそれを。
「美味いよな」
「豚肉のな」
「豚肉美味いよな」
「牛肉もだな」
「ああ、鶏肉もな」
「俺も犬の肉食ったことないけれどな」
 それでもというのだ。
「まずくなくてもな」
「美味くもないか?」
「美味いことは美味いらしいな」
 犬肉はというのだ。
「けれど取り立てて好んで食う程かっていうとな」
「そうでもないか」
「それでな」
 父は今度はもやしのひたしを食べて言った、他には野菜が多く入った味噌汁もありそちらも楽しんでいる。
「豚肉や牛肉の方がな」
「美味いんだな」
「そうらしいな」
「そうなんだな」
「あと食うところは少ないみたいだな」
「ああ、ふわりだってな」 
 ここでケージの中で寝ているふわりを見て言った。
「小さいことを抜きにしてもな」
「食う部分少ないだろ」
「犬の身体ってな」
「豚や牛と比べるとな」
「だからか」
「もう中国とかベトナムでもな」
「それで韓国でもか」
 洋介ももやしのひたしを食べた、醤油とごま油で味付けされていて美味い。 
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