間違えて入れたラブレター
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二章
「だからね」
「安心していいか」
「ええ、それであんたどうするの?」
里佳子は井岡に尋ねた。
「これから」
「これから?」
「工藤さんに告白するの?」
「俺は何度でも言うぞ」
井岡は背中に赤く燃え上がる炎を背負って答えた。
「振られてもな」
「じゃあ今回もなのね」
「ああ、あらためてな」
「ラブレター工藤さんの下駄箱に入れるのね」
「ああ」
実際にというのだ。
「そうするな」
「わかったわ、じゃあ頑張ってね」
井岡に彼が書いたラブレターを渡して告げた。
「応援はしてあげるわ」
「そうしてくれるんだな」
「人の恋路は邪魔しないけれど嫉妬もしないから」
だからだというのだ。
「応援するわ」
「そうか、お前いい奴だな」
「少なくとも意地悪じゃないつもりよ」
「そうなんだな、じゃあな」
「ええ、頑張ってね」
微笑んで告げてだった。
里佳子は井岡の前を後にした、そしてだった。
彼は次の日あらためてすみれの下駄箱にラブレターを入れた、そうして今度は彼女に校舎裏で告白してだった。
告白を受け入れてもらった、そうして彼女と交際をはじめたが。
「いや、最初は間違えたことはな」
「言ったの?」
「言ったよ、隠しごとしたらな」
それこそとだ、井岡は里佳子に話した。
「カップルではよくないからな」
「また随分と真面目ね」
「親戚で浮気隠して離婚になった馬鹿男いたんだよ」
「ああ、よくあるお話ね」
「だからな」
「間違えて私の下駄箱に入れたこと言ったのね」
「最初はな」
里佳子に対して話した。
「ちゃんと言ったよ」
「言わなくていいお話だと思うけれど、ただね」
それでもというのだった。
「その真面目で素直なところいいわね、そんな子は好かれるから」
「だからか」
「工藤さんと上手くいきそうね」
「そうなんだな」
「ええ、じゃあ引き続き応援するわね」
「有り難うな」
笑顔で話してそうしてだった。
すみれと幸せに交際していった、そして彼女からも素直で真面目だと言われたのだった。
間違えて入れたラブレター 完
2024・8・22
ページ上へ戻る