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赤いスポーツカーを買った理由

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第二章

「幸い手頃な値段で買えたから」
「買ったの」
「そうだよ、これから乗ろうね」
「あの、どうしてなの?」 
 妻は夫に驚きを隠せない顔で問うた。
「赤いスポーツカーなの?」
「母さん昔言っただろ」 
 夫は妻に笑顔で答えた。
「結婚したての頃な」
「三十年以上前ね」
「テレビを観ていて赤いスポーツカーがドラマの中で出て」
「その時になの」
「こんな車に乗ってみたいってな」
 その様にというのだ。
「言ったからな」
「今買ったの」
「これまで家の車は軽四だったな」
「安くて燃費もいいしね」
「スポーツカーを買う余裕もなかったしな」
「けれどなの」
「貯金もしていたし退職金も出たしな」
 それでというのだ。
「買える様になったからな」
「それでなのね」
「買ったんだ、じゃあこれからは」
「この車に乗って」
「ドライブしよう」
「私そんなこと言ったか覚えてないけれど」
 夫の言葉に笑顔になってだ、妻は答えた。
「けれど嬉しいわ、私の願いを適えてくれて」
「そう言ってくれるんだ」
「ええ、じゃあこれからはね」
「二人でこの車でドライブしよう」
「そうしましょう」
「若い頃は無理だったけれど」
 夫は妻にそれでもと話した。
「今は出来るから」
「このスポーツカーでドライブしていいわね」
「出来る様になったんだ、じゃ乗ろう」
「そうしましょう」
 二人で笑顔で話した、そしてだった。
 早速二人で赤いスポーツカーに乗った、そのうえでドライブを楽しんだ。夫婦はそれからもドライブを楽しんだ。それは若い頃の二人がそうしている様に実に楽しいものだった。


赤いスポーツカーを買った理由   完


                  2024・8・20 
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