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あの人もケーキ好きだった

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第二章

「チョコレートもお好きで」
「ケーキもなんだ」
「お好きでお仕事している時に料理人の人が差し入れで」
「ケーキ作ってたんだ」
「それで食べていたのよ」
「そうだったんだ」
「意外でしょ」
 母は息子に笑って話した。
「あの人がケーキ好きなんて」
「残酷な人だから人の血でも飲んでるかと思ったよ」
 自由は実際にヒトラーを吸血鬼の様に思っていた、それでこう言った。
「けれどお酒も煙草もしなくて」
「菜食主義者でね」
「ケーキ好きだったんだ」
「そうなのよ」
「そうじゃなくても甘いものが好きな人は多いんだ」
 父はまた言った。
「だから大人になってもな」
「ケーキ食べていいんだね」
「ヒトラー以外の人も好きだしな」
「大人でもだね」
「そうだ、ただ食べ過ぎるとな」
 父は笑ってこうも言った。
「太るからな」
「そこは注意だね」
「だから時々だ、いいな」
「そうするよ」
 自由は父にビーフシチューを食べながら笑顔で答えた。
「何でも食べて甘いものは食べ過ぎない」
「そうするんだぞ、ヒトラーも太ったらしいしな」
 最晩年はテロで受けた怪我の後遺症や薬物の影響でむくんでいたという。
「だからな」
「あと歯も磨くのよ」
 母はこのことを言った。
「虫歯になるからね。ヒトラーもよ」
「虫歯になっていたんだ」
「だからね」
「食べ過ぎないで歯を磨く」
 自由は自分から言った。
「甘いものが好きでも」
「そのことを気を付けるんだぞ」
「いいわね」
「そうするよ」
 息子は両親に笑顔で答えた、そうして夕食を食べてだった。
 デザートも楽しんだ、その日のデザートは西瓜ではなく葡萄だったがそちらも心から楽しんだのだった。


あの人もケーキ好きだった   完


                    2024・8・19 
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