ウルトラマンゼロ ~絆と零の使い魔~
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黒星団-ブラックスターズ-Part11/奇怪な末路
翌朝……
サイトたちは、停泊した魅惑の妖精亭の外にて集合していた。
「全員集まったか?」
アニエスがこの場に集まったシュウとムサシ、ヤマワラワ、マチルダ…そしてサイトに目を向ける。4人の円陣の外で、テファやシエスタ、スカロン、ジェシカ…他数名の妖精さんたちが見守っている。
「…ふぁ」
そんな中、サイトがついあくびをしてしまう。
「おいサイト。眠いのか?しっかりしろ、お前の相棒の剣を取り戻すための戦いでもあるのだぞ、これから我らが飛び込むのは」
「すみません…なんつーか、今妙に疲れが抜け切れてないっていうか…」
夜更かしでもしたのかといぶかしげに見るアニエスに、サイトは頭を掻く。
「そういえば、シュウ。あんたも今日は目にクマができてないか?」
「いや、睡眠はちゃんと取ったつもりなんだが…」
一方でマチルダもシュウの顔が、サイト同様どこか眠たそうで、全快とはやや違う印象を抱く。
「シュウ、大丈夫?やっぱり休んだ方が…」
「いや、これくらい大丈夫だ。ナイトレイダーをやっていた頃は、ろくに眠れてない時間にたたき起こされることなんてざらだったからな」
彼が無理をしすぎた経緯もあって、テファはシュウを案じるが、シュウは首を横に振る。
「シュウ兄、早く帰ってきておやすみしよ?リシュが子守唄を歌ってあげる」
「気持ちだけ受け取るよ」
リシュも、仕事に出向かなければならないシュウの気を遣う言葉を送る。
「サイト…ヤマワラワ、姉さんと一緒にシュウを助けてあげて」
「あぁ、任せろテファ」
今回はシュウも行かねばならないことが決まった。それは頭で理解はしているが、なおのこと不安が拭えないテファは、せめて一緒に着いて行く仲間たちにシュウのことを託す以外になかった。
「少女よ、安心してくれ。彼らが限界を感じたら下がらせるつもりだ。お前たちは我々を信じて待っていてくれ」
テファの不安をくみ取ったアニエスが、彼女を安心させようと諭した。
「サイトさん、みなさん。どうかお気を付けて」
「サイトちゃん、お願いね。ブラックちゃんたちのためにも」
「あんたが頼りだからね。でも無理はしちゃだめよ。ルイズたちのためにもね」
「わかってる。ありがとうみんな」
サイトの方も、シエスタとスカロン、そしてジェシカを筆頭に彼の無事を祈る言葉が贈られた。
盗まれたデルフや、クリス提案の平民向け舞踏会に力を貸してくれるシエスタたちのためにも、バロッサ星人をどうにかしなければ。
「地下水。透明になった奴の居場所の特定する魔法はあるか?」
シュウは地下水を手に取り、バロッサ星人への対抗策について問いただす。バロッサ星人バロムは、ブラックの手紙の情報が正しければ透明になれるマントを所持していたはず。だとしたら、このまま向かったところで姿を見せるとは思えない。隠れてこちらの動きを伺っていることすら考えられる。
「正確な場所を割り出す、なんて都合のいい魔法は流石にないぜ。けどま、手がないわけじゃない」
そんなのがあるのかと一同が地下水に注目する。
「簡単さ。周囲に霧を発生させりゃいい。いくら透明になったっつっても、マジックアイテムじみたもんを使ってやってんだ。目に見えねぇだけで、間違いなくそこにいるって事実は嘘にしきれねぇ。だったら適当に塗料でもなんでも使って塗りたくっちまえばいいさ。奴自身を塗り潰すなり、その周りをそうするなり、な」
「なるほどな。確かクール星人の円盤も、透明になれる機能があったけど、当時のウルトラ警備隊も塗料をぶちまけて円盤を見破ったんだっけ」
「あ、それ私も聞いたことがあります。ひいおじいちゃんからそんな話を聞きました」
かつて義母が所属していた防衛チームの体験談のことを思い出すサイト。フルハシの血を引くシエスタもそのことを知っていたため反応を見せた。
「後はその手にバロッサ星人とやらが引っかかってくれるかどうかだね」
「どうにかさせるのさ。これ以上あいつの勝手で誰かが困らないためにもね」
マチルダは、バロッサ星人もこの手段について無対策ではないかもしれないということを懸念していた。ムサシも同様の見解を持っていたが、被害者のことを思うとだからって引くわけにもいかない。
「よし、対抗手段さえわかればどうということはないな。よし、行く…」
「隊長!」
いざ、対バロッサ星人作戦の決行に移ろうとしたところで、アニエスの元に銃士隊の隊員の女性が大慌てで駆けつけてきた。
「どうした?」
「例の、バロッサ星人とやらについてなのですが…」
「まさか、奴が何かの動きを?」
「と、とにかく現場へいらしてください!どうも妙なことになっておりまして…」
妙なことに?サイトたちは一体何が起きたのだろうかと不思議に思ったが、銃士隊隊員の誘導に従ってアニエスと共に、奴の居座るジャンバードへと向かった。
「これは!?」
そこで目にしたのは…
「…ば…ば…ろ…」
白目を剥いて、全身を痙攣させながら、『土くれのフーケ』を名乗ったブラックスターズに盗ませたマジックアイテムの山の中で大の字で倒れていた、バロッサ星人バロムの姿があった。
ブラストショットの銃口を向けたシュウが先頭に立って、操縦室へ侵入するが、バロムはなんの反応も示さない。泡を吹いて痙攣したままだ。
「意識がないのか?」
あまりにも不可解な事態に、バロムにブラストショットを向け続けながらもシュウは訝しげに呟く。
「待ってて。僕が見てみる」
ムサシもバロムの顔を覗き見て容体を診るが、少しの間バロムの容態を確認して、サイトたちに向けて首を横に振った。
「ダメだ。彼はもう正気を失っている。人間で言う廃人化を引き起こしてるんだ」
廃人化、と聞いて一同に衝撃が走った。
(いったいなぜこんな有様に?何もきっかけがなしにこんなことになるはずがないのは確かだが…)
ついさっきまで、何とかバロムの元から人質を解放しそのまま奴をやっつけてやろうかと思っていたのに、直接何も手を下さないままバロムの方が勝手にくたばる結末を辿るとは、誰も予想だにしないことであった。
「何があったんだデルフ」
サイトは、この場にずっといさせられていたデルフに、自分たちが来るまでのバロムの様子を尋ねる。
「わからねぇ、ただ夜中…こいつは寝ている間に急に悲鳴をあげやがってよ、狂ったように苦しんだと思ったら、今度は糸が切れた人形みたいに倒れたんだ。それからずっとこのザマだ」
「……」
ムサシもバロムの様子に表情が険しくなっていた。TEAM EYESとしての経験と勘が、間違いなく何かが起きたと捉えていた。それも目に見えない、何かもっと恐ろしい力が、バロムをここようにした。
「腑に落ちんが、まだいいだろう。この様では、もう二度と悪事を働くどころか、他人の介護無くしては生きられないだろうな。
こやつは我々で厳重に拘束した上で回収しよう。盗まれたものも持ち主に変換しなければ」
正直何が起きたのか察することも難しい。でもこのままバロムを放置するわけにいかない。アニエスは銃士隊の仲間たちと共にバロムをひとまず回収することにした。
サイトたちはひとまず外に出て、拘束され担架に乗せられたバロムがアニエスたち銃士隊に更迭されていく様を見届けた。盗まれたマジックアイテムや金銀財宝も同じく銃士隊の隊員たちによって全て元の所持者に戻すために回収され、今後は元の所持者の特定に追われていくだろう。
「なんでぃ、せっかく久方ぶりに旦那が俺を振るってくれるんじゃないかって期待してたのによ」
バロムが更迭され、ジャンバード内の盗品が銃士隊の隊員たちの手で運ばれてゆくのを見届ける中、活躍の場を求めている地下水は、肩透かしを食らってがっかりした。
「デルフリンガー、だったな。あのバロッサ星人…ブラックとか言う女たちから報復を受けたわけではないのか?」
「いや、昨日からずっとここにはあのふざけた野郎と俺しかいなかったぜ」
地下水の愚痴を無視したシュウからの質問にも、自分でも何が起きたのかさっぱりと言った様子のデルフ。しかもブラックたちの報復によるものでもないらしい。
「例のブラックって子達もきっと違うだろうね。その子達がこんなことできるっていうなら、あたしたちに助けなんて求めることも、この変な亜人にいいように使われることもなかっただろうし」
マチルダもデルフの言ったブラックの仕業ではないという話に信憑性を覚える。彼女の言う通り、ブラックたちがバロムへの復讐が可能なら、そもそもこんな事態にもなっていなかっただろう。
「そういえば、そのブラックって人や、人質にされてたサツキって子は?」
「あ、そういえば…いなかったな。デルフ、見てないか?その子も一緒だったんだろ?」
「あー、その子だけどよ、あのバロッサ星人ってのがあんなふうになって少ししたら目を覚ましたみたいでな。驚いてた様子だったけどその後は勝手にいなくなっちまった。きっと今頃、仲間の元に戻ってるだろうよ」
「おいおい、それアニエスさんに早く言うべきだったんじゃね?色々事情とか聞かないとダメだろうし」
サイトがどうして訊かれる前に早く言わなかったんだよと言いたげに突っ込む。
「ウゥ、ウゥ!」
ふと、ヤマワラワが武蔵の服を引っ張り、何か訴えるように唸り出した。
「どうしたんだヤマワラワ?」
「えっと、何か言いたそうにしてるみたいだけど、わかるかい?」
マチルダもヤマワラワの反応が気になって首を突っ込む。ヤマワラワは皆にわかるよう、ある方角を指さしていた。
「あそこ?」
ムサシの問いに頷くヤマワラワ。しかし指を刺した方角は、ジャンバードの入り口ハッチ近くの草地。別にものもなければ人もいない、なんの変哲もない一角であった。目を凝らしても、特に何かある訳でもない。
試しにマチルダはディレクト•マジックをかけてみる。魔法的な力で何か隠されているならこれでわかるのだが、これでも反応はない。
「何もないみたいだけど?」
「待って」
ムサシが待ったをかけ、ヤマワラワの指差した方角を睨んだ。
ムサシは一瞬だけ、何もないはずのその一角に、風に靡くカーテンのようにわずかに空気の揺れがあった。
サイトとシュウも、目にこそ見えてないが、ムサシが待ったをかけた瞬間に、そこ何もないはずの一角に奇妙な違和感を覚えた。
「地下水、いい機会だ。水を出せ」
「地味な作業だねぇ…まぁいいさ」
地下水はようやく使いどきに恵まれたものの、長いだけの退屈な人生ゆえに名声や刺激を求めていた割に、恵まれたその機会が地味なものであることを軽く嘆いた。
「〈ウォーターフォール〉」
そうは言うものの、地下水は水魔法の呪文を詠唱し、シュウが地下水の刀身を前に突き出すと、水鉄砲の如く勢いよく放たれた水が、ムサシの指差した方角に向けて発射された。すると…
「冷た!」「ひゃー!」
何もないその一角から年若い少女たちの悲鳴が漏れ出てきて、まるで水に濡れて塗料が剥がれたようにぐにゃりと歪んでいく。結果、その一角の内側に隠れた者がずぶ濡れ姿で現れた。
それは、スカロンたちの伝手で一度顔を見ていた…ブラックたち3人と、バロムによって人質とされていたサツキであった。その足元に、水ですっかり濡れてしまったマントがベシャっと音を立てて落ちた。
「く、見つかってしまったか!」
姿を看破されてしまったブラックは、焦りを口に出す。
「あっちゃぁ、さすがに怪獣さんの嗅覚まではごまかせないか」
「透明になっても、においまではごまかせないからな」
「そっか。それでヤマワラワは…でかしたぜヤマワラワ」
「ワウ!」
長袖セーターの少女、シルバと赤マントの少女ノヴァもすっかり濡れた姿で現れた。ヤマワラワは匂いでどうやら彼女たちが隠れていたことに気づいていたらしい。自分たちでは気づけなかった彼女らを看破したヤマワラワをサイトは讃える。
「それ、バロッサ星人が使ってたマントだろ?なんでわざわざ隠れてた?」
ブラックたちの足元の地面の上にべちゃべちゃになった状態で捨て置かれた、サータンの透明マントを指さす。
「これはその…そ、そう、仲間であるサツキ君の救出のため…だ。は…ハックし!」
そう答えるブラックだが、しどろもどろな口調と泳ぎまくりな目のせいで嘘がバレバレであった。ついでに全身濡らされたせいでくしゃみが出ている。
「嘘こいてんじゃないよ。その子が例の渦巻顔の亜人に操られてる間、そのマントは奴が使ってたじゃないか?あたしたちがあの亜人を国の兵に引き渡すために外に出た時に、一緒に船に乗り込んでいたあんたたちは、あいつの盗んでたものをネコババして逃げるつもりだったんだろ?そのマントが何よりの証拠さ」
かの悪名高い盗賊フーケであったマチルダだからこそ、即座にブラックたちの胸中を見抜いた。図星だったらしくブラックたちは体の冷え具合とは無関係にビクッと身が震える。
「図星のようだな」
「お、今度こそ俺の活躍の番か?」
はっきりと確信を得たシュウは、一歩も逃がすまいとブラックたちへ冷たい視線と共に地下水の刃を向けると、地下水は今度こそ恵まれた機に期待を抱く。
「もおお!だから言ったじゃないですかブラックさん!バロッサ星人が残したお宝なんて放って逃げましょうって!」
「し、仕方ないだろう!我々ブラックスターズは金欠状態なのだぞ!侵略の野望のためにも、それ以前にも日々の生活費稼ぎのためにも資金調達は免れぬことであろう!
だ、だいたいサツキ君だってつい昨日まで捕まってたではないか!
ふぁ…へ、へっくし!」
「それとこれとは話が別で…くちゅ!!」
サツキはブラックに向けて叱り飛ばす勢いで責め立てると、対するブラックは見苦しく言い訳を吐きながら、体が冷えていたこともあって、サツキ共々盛大なくしゃみをかます。
「相棒…俺ぁちと哀れに思えてきたぜ。こんな間抜けな嬢ちゃんたちに一度でも盗まれた自分をよぉ」
「言うなってデルフ。それ俺が一番自覚してるから」
デルフの愚痴に、一度はデルフを盗まれた怒りから報復を考えていたサイトも同様の思いを抱きながらも、一度はデルフの柄に触れていた手を放すのだった。もう止めを刺すとかどうしてくれようかとか、ブラックたちのところどころ抜けまくりな一面の連続に、そういう気も失せていた。
「まぁまぁ、折角人質の子を取り戻したんだ。余計なことしないで、このまま大人しくアニエスさんところへ行って事情を話したらどうだい?僕らも口添えするから、なんとか釈放してスカロンさんたちの元へ帰してもらえるようにするから」
ムサシは彼女たちが、人質を取られ悪事に加担させられた被害者というだけでなく、実は彼女たちもややアウトローよりな存在なのだということは察した。とはいえ、彼は元々共存不可、絶対悪とすら思われていた侵略者との対話を成功させたほどの男。最後まで分かり合えることを捨てはしなかった。下手に欲望を出すよりも、平和的解決のためにと優しく諭す。
だがブラックは、その手を取らなかった。一瞬だけ「お、おう…」と手を伸ばしかけたが、相手側の一部の者の中にウルトラマンがいるという事実を思い出して思い治し、即座にいつもの気取った態度で相対する。
「くくく…よくぞ我らの隠遁術を見破ったな」
(マントをかぶっただけじゃん)
あたかも自分の特殊能力で隠れていたのだと言ってるようなブラックの口ぶりに、心の中でサイトは突っ込むがいちいちそうするのも疲れるので口に出さなかった。
「そうだな。口惜しいがバロッサ星人バロムの盗んだものについては、諦めるとしよう。人質にされていたサツキ君もこの通り救出できたからな。なら、せめてもの礼と手打ち量として、これを君たちに託す。
サツキ君、あれを」
「は、はい」
ブラックから促され、サツキは両手を広げる。すると、彼女の前の空間に突如『穴』が出現、その中から大きめの樽が3つほど排出された。
「空間に穴を!?それにこれって…!」
サイトはその樽を見て目を見開く。
「スカロンさんの店と、我々が資金稼ぎのために開いていたカフェで提供していたコーヒーだ。これを君たちに譲渡しよう。味の方なら心配いらない。寧ろコーヒーのないこの世界でも間違いなく絶品ものだと保証しよう。」
「……確かにコーヒーの匂いだな」
シュウは、樽の中から漂ってきたほのかな苦い香りを感じて、おそらく本物なのだろうと捉える。
「だが、勘違いしてもらっては困る。我々は決してあきらめたわけではない。
地球のみならず、いずれこのハルケギニアも、我ら『ブラックスターズ』がいただく!首を洗って待っているがいい!」
「ブラックスターズ!?」
サイトは思わず声を上げた ブラックの名乗った、『ブラックスター』に聞き覚えがあったからだ。
「ではさらばだ、ウルトラマン共よ!とりゃ!」
すると、ブラックは胸元から取り出した一発の白い球を取り出し、それを目の前の地面に叩きつけた。瞬間、ブラックたちとサイトたちとの間に凄まじい量の白い煙が、濃霧のごとく立ち込めて視界を真っ白に塗り潰してしまう。
「な…煙玉!?」
「くっそ、そんなものまで」
手で振り払っても、一切晴れる気配の無い煙の中、ブラックたちの姿を探し求めるサイトたち。なんとかその中をかいくぐって煙の外に出たが、思った通りブラックたちの姿は消えていた。
「逃がしたか…」
パルスブレイガーにも探知されていない。やはり今の煙に紛れて逃げたのだとシュウは確信する。
「けほっ、けほっ!ったく、あの嬢ちゃんたち間抜けそうに見えてやってくれるじゃないか!」
自分でも誇るようなことでは無いと思うものの、土くれのフーケとして名を挙げた分だけ腕にも目利きにも自身のある自分が出し抜かれたことに、マチルダは歯噛みする。
「結局、エメラル鉱石のこととかもよくわからないままだね…いや、今はひとまず構わないか。例の舞踏会に必要な目的のものも、スカロンさんたちの知り合いであるあの子たちの事件も、首謀者がああなった以上、もうこれ以上誰かが困るってことはないと思う」
ムサシは、まだわからないことがあることについて思うところがあったものの、これ以上事件が深刻化することはないだろうと悟った。
「でも…ムサシさん、あいつらの名乗ってたブラックスターズって」
「知ってるのかい?」
サイトはブラックスターズ…いや、ブラックスターについて話していく。
ブラックスター。
自分の師匠であるウルトラマンレオが当時の地球で最後に戦った暗黒惑星の名前だ。その星の星人、『ブラック指令』が円盤生物と呼ばれる怪獣を用いて、防衛チームMACを壊滅、果ては当時のレオの恋人をはじめとした多くの人たちの命を奪った悪名高き存在だ。
だとしたらあの女は、あのブラック指令の同族に違いない!そして黒服の男を追っていたシルバとノヴァという少女。あの子達もそれぞれ円盤生物『シルバーブルーメ』と『ノーバ』と特徴が合致しているのだ。名前だって人間っぽく変えてはいるが、ほぼそのままである。まさか人間の姿になれるとは思わなかった。
いや、そもそもあのブラック指令に、同族がいたなんて話は聞いたことがない。存在していたとしても、てっきりレオの手でブラックスターと共に死滅したとばかり思っていたのだが…現に今、彼女らは…いや、奴らは存在している。それも人間の姿そのままで。
…が。同じく話を聞いていたシュウは訝し気な表情を浮かべていた。
「平賀、その事例が事実だとしても、正直あの女たちが次なる脅威になるとは、いくら俺でも考えにくいぞ。
あんな連中…特にあの間抜けなリーダーにそれができるか?」
それを言われてみて、サイトは沈黙する。
これまでブラックたちは、自分たちの敵になり得そうな行動自体はとっていた。でも実際のところはバロムに言い様にされていた上に、バロムの盗品を今度は自分たちが盗もうとしたところを結局見つかったりもするし、度々間の抜けた姿を見せていた。
言われてみれば、確かに…かつてレオが戦った相手とはとても思えない、どこか憎めないような人となりとも思えてきた。
「…あ~…うん…そう、だな。別にいいか」
ブラックスター、その単語で一度警戒こそ抱いたサイトだが、ブラックスターズについては敵として完全にノーマークにしてもかまわないだろうと結論付けるのだった。
ブラックが聞いていたらたいそう不満だろうが、まぁ別にいいだろう。
これで舞踏会に用意するコーヒーも手に入れたので、ひとまず今回の事件の終息をスカロンに報告するためにも、ブラックたちが残したコーヒー樽を持ってサイトたちはこの場を後にした。
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