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昔はヤクザ屋さんだったお家

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第一章

                昔はヤクザ屋さんだったお家
 建設会社の力道建設は地元では有名な企業である、県内で広く仕事をしていてかつホワイト企業としても有名だ。
 社長の力道隼人は大柄で丸顔で優しい顔立ちをしている。丸坊主で力が強いが誰も怒っているところを見たことがない。
 そんな彼だがある日だ。
 息子で高校生の志郎にこんなことを言われた、見れば父親そっくりの外見で黒髪をスポーツ刈りにしている。
「うち昔建設やってるよな」
「それがどうしたんだ?」
 息子に豪邸である自宅の中で応えた。
「一体」
「いや、友達から言われたんだよ」
 県内有数の進学校に通っていてそこでというのだ。
「昔建設はヤクザ屋さんがやってたってな」
「ああ、そうだったんだよ」
 父はその通りだと答えた。
「人足の斡旋だってな」
「ヤクザ屋さんがやってたんだな」
「プロレスや芸能の興業や裏方もな」
「ヤクザ屋さんのシマか」
「そうだったんだ」
 かつてはというのだ。
「テキ屋とか賭場もな、だからお寺や神社ともな」
「関りあるんだな」
「昔はな、芸能界だってな」
「さっき芸能言ったらな」
「裏に表にってな」
 息子に穏やかに話した。
「関わっててな、うちもな」
「えっ、うちもかよ」
「お前のひい祖父さんの代まではな」
 その頃まではというのだ。
「ヤクザだったんだよ」
「そうだったのかよ」
「うちもな」
「それは知らなかったな」
「お父さんが子供の頃はまだそんな雰囲気あったんだ」
「会社にか」
「家だってな、昔は刀もあったな」
 家の中にというのだ。
「こっそりと拳銃もな」
「それ駄目だろ」
「ヤクザだからな、けれどそのひい祖父さんが辞めてな」
 ヤクザ屋という稼業をというのだ。
「健全な建設会社になったんだ」
「そうだったんだな」
「それでお前の祖父さんの頃にはな」
「ああ、祖父ちゃん」
 息子はすぐに応えた。
「今会長だよな」
「その会長の代でな」
 社長だった頃にというのだ。 
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