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第49話「テスト」
前書き
ネオ・代表O5−1です。第49話「テスト」となります。
どうぞ、ご覧ください。
―――アルポ銀河。
ブリリアンス本星が存在するサニー星系からそう離れていない星系では、《スターダスト計画》の一部である要塞―――球体状の天体兵器を建造していた。
その星系のとある惑星宙域―――建造宙域では、量産型機関を内奥に宿すアクラメーター級Ⅰ型戦闘航宙艦とAC721級Ⅱ型駆逐艦シリーズの艦隊、そして次元跳躍阻害と通常空間に引き戻す能力を持つ”兵器”が警備に就いていることから、ブリリアンス・ギルドにとって重要性がある代物だと伺えることだろう。
その重要性があるであろう代物が、遂に完成した。同時に、地球ではアンドロメダ級4隻の就役式典が始まった瞬間でもあった。
現在、完成した球体状の天体兵器は少数のブリリアンス艦隊によって誘導されている最中だった。
「サブスペースの影響領域への侵入準備…。パイロット艦隊による誘導終了。繰り返す、パイロット艦隊による誘導終了」
ブリリアンス艦隊―――パイロット艦隊による誘導が終わる。誘導されていた灰色の天体兵器は、当然というべきか艦船より遥かに大きかった。
「サブスペース発生シークエンス8まで終了を確認。これより、サブスペース発生シークエンスを最終段階へ移行」
天体兵器には、本計画の立案者にして作戦の司令官を務めるスーパー・タクティカル・ドロイド。副司令官のタクティカルドロイド。そして、数多のバトルドロイドが乗り込んでいた。
一方、改アクラメーター級戦闘航宙艦からブリュンヒルト級一番艦〈ブリュンヒルト〉に搭乗したギルド長スヴェートは、艦橋のキャプテンシートに座っていた。代理ギルド長がスヴェートの左後ろに控え、天体兵器より離れた宙域で、三次元投影されている大型スクリーンに映る光景を見守っていた。
これは、テストだ。内容は、ワープと天体兵器が装備する”主砲”を目標へ撃つことである。
「──。カウントダウンを開始…30、29、28、27──」
「後方支援部隊は、速やかにワープゲート軸線上から退避せよ。繰り返す──」
カウントダウンが始まると、オペレーターが退避する旨を後方支援部隊に指示する。指示を受け取った後方支援部隊の艦艇は、直ぐ様に退避に入る。完了した頃にはカウントダウンは10秒を切っていた。
「──6、5、4、3、2、1。〈DSー1〉、ワープ開始」
刹那、天体兵器〈DSー1〉は宙域を照らし、吸い込まれるかのようにワープした。そして、ワープする予定のポイントに、姿を現そうとしていた。
旗艦〈ブリュンヒルト〉に報告する為、ワープゲート近場で報告する艦が1隻存在していた。
「〈フォックスアハト〉より通信。―――発生時、重力場、共に許容範囲内」
ワープゲートが形成されると、〈DSー1〉が姿を現した。つまりは…。
「〈フォックスアハト〉より通信。〈DSー1〉、ワープ成功です」
その報告を聞いたスヴェートは赤ワイン片手にニヤリとした笑みを浮かべ、スラクルはホっと安堵の息を出した。
「〈DSー1〉前方、惑星《デュントス》を確認。テスト砲撃目標です」
「〈DSー1〉、主砲発射準備」
最後に、緑豊かな惑星《デュントス》へ、〈DSー1〉の主砲を発射するテストを行う。〈DSー1〉の真髄を確かめる為である。
ここで、スヴェートは変更した。主砲を最大出力ではなく一撃のエネルギーを三分の一に抑え、3回に分けて砲撃を行うよう砲術班に命令を出したのだ。命令が出されるや発射シーケンスを即座に実行され、《デュントス》へ向けてトリガーが引かれた。〈DSー1〉の主砲にエネルギーが充填されてゆく。眩しいとも思える光が一閃するとエメラルドグリーン色の極光が放たれ、その光は一直線に《デュントス》へと降り注ぐ。
発射された主砲の一撃目は大気が蒸発し、地表の全てが焼き尽くしたことで惑星の全生物―――エイリアンが死に絶える。
二撃目では地殻が捲れ上がり、全ての火山が大爆発を引き起こす。三撃目のエネルギーが充電される間、〈DSー1〉は惑星が崩壊する過程をじっくりと観察。そして、充電が完了した主砲から三撃目が放たれる。この三撃目が、とどめとなる。幾つもの欠片に分裂した《デュントス》は、宇宙の屑となったのだ。
「目標《デュントス》、破壊を確認」
「重力井戸発生なれど、〈DSー1〉に支障は認められず」
その報告を聞いたスヴェートは優雅に赤ワインを飲み、スラクルはゴクンっと口に溜まっていた唾を飲み込んだ。
「テスト、終了」
こうして、地球・ガミラス・イスカンダルの与り知らぬところで、ワープと惑星破壊のテストが終了した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
《ある日のギルド長》
惑星破壊兵器が、遂に完成した!惑星破壊兵器の真髄を、惑星《デュントス》で試すのだ。予定は既に組み込んでいる。楽しみだなぁ。
本当なら死刑囚が収監されている惑星《ファルコム》で試そうと我が娘―――スラクルに提案したのだが、説教されてしまった。スラクルは笑顔で、私を殴った。ほっぺが痛かった。殴るなんて酷い。死刑囚なのだから別に死んでもよいだろうに。何が悪いのだろうか。
第八浮遊大陸の作戦前も、艦隊編成を提案したのだが却下されてしまった。何がいけなかったんだ…。
「で、あるからして―――」
そして何故か私は、道徳の授業を強制的に受けさせられている。生徒は私で、先生は我が娘である。いや、私に道徳の授業は必要ないだろう。倫理観も問題ない筈だ。
授業を受けてますよ〜のフリをしつつ、そっと黒ペンで遊ぶとしよう。あ、ナニコレ楽しい。回して遊ぶって、凄い楽しい。癖になりそう。
「……」
おや、声が聞こえなくなったな。何故だろう。それに影が出来たような。外で道徳の授業をしているとはいえ、今日の天気は晴天なのに。不思議だなと思う私は、顔を上げた。
「ギルド長閣下」
そこには、仁王立ちする我が娘がいた。ニコリと笑みを浮かべている。…あ。
「……ふ、ふふふふふ」
これは、うん、あれだな。
「あはは、あははははは…」
笑うしかない、これ一択である。
「ギルド長閣下ァァアー!!」
スヴェートは遠い目をし、自然と収まるまで待つことにしたのだった。
後書き
さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!
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