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第47話
前書き
ネオ・代表O5−1です。第47話となります。
どうぞ、ご覧ください。
―――スヴェートの私室。
先程の事を、深く席に座るスヴェートは振り返っていた。本当に、驚いたものだ。八番浮遊大陸にてガトランティス艦が地球に特攻したことを、昇天するぐらい驚いた。だが、地球は救われた。それも、海底ドックに眠る改装中の〈ヤマト〉によって。
全く、ガトランティスめ。首都に艦船ごと落下させるとは。まるで神風特攻だ。あのガトランティスの艦艇は、〈アンドロメダ〉と同じく新鋭なのだろう。地球は勿論、ガミラスですら知らないと聞く。
そのガミラスは、かつて美しかった青い地球の姿を奪った。改造した、が正しいだろう。地殻変動や火山の噴火、地震、大地は干上がり大気汚染などを誘発。陸空海その全てにおいて、人類を除く生命は死に絶え、除く人類もまた、総人口の三分の二が死亡した。加えて、ガミラスの生物の種子や菌が大気中に四散し、発芽した植物からは地球生物にとって毒となる成分が放出された。地球環境は、激変させられたのだ。
「ふふ、フフフフ…」
ガミラスについて思いだしていると、今まで蓋をしてきた憤怒と激怒が胸の内から湧き上がる。
「クソが!クソが!クソッタレガァァァアア!!…ふぅ」
…はぁ、お仕置きしてやろうかな。ギッタンギッタンのベッタベッタに。同盟国とはいえ、だ。
「でもなぁ、流石にそれは大人げない」
ガミラスが太陽系を侵攻したのは、さぞ余程の理由あっての事なのだろう。過去の件は全て水に流すなんぞ出来ないが、表面上は仲良くしてやる。少しでも地球に悪さしてみろ、艦隊で威嚇してやるからな。いや、艦隊での威嚇は駄目だな。外交での威嚇としよう。外交での威嚇、自分はなんて優しいのだろうか。まぁ、そのどちらも、我が娘、スラクルに強く言われているからしないが。もしも実行した場合、私へ向けられる眼差しが絶対零度となってしまう。避けたいところだ。
それにしても、だ。地球は兎も角、ガミラスの戦闘艦艇の最大全長はブリリアンス基準で巡洋艦であるのは驚きだった。後はガトランティス。ガトランティスも、先の新鋭艦520m級とブリリアンス基準では駆逐艦だ。ややこしくなりそうだから、今後はブリリアンス艦艇以外の他国艦艇はその国家の艦種識別基準に合わせよう。そのほうが、こちらが混乱することは無い。
さて、だ。
失敗に終わったガトランティス新鋭戦艦による首都特攻事件であるが、地球は太陽系全域に《ガミラス臣民の盾》を配置させたと、我がブリリアンスの大使より知らせを受けた。《ガミラス臣民の盾》は強固なフィールド付き装甲の他、転送や如何なる次元跳躍をも不可能にする空間撹乱能力を持つ。簡単に纏めれば、《ガミラス臣民の盾》はワープを阻害させる能力を有するのだ。これで、地球への直接攻撃事態の危機は無くなった。
そういえば、とスヴェートはホログラム投影装置を起動し設計図を観ながら思い出す。思えば、こちらもワープを阻害することが出来るのを保有しているんだったな。《ガミラス臣民の盾》と同じくワープを阻害する能力を有するが、《ガミラス臣民の盾》には無い能力が存在する。それはワープ空間にいる艦船を捕捉し、通常空間に引き戻す能力。”アレ”は確か今、テスト運用をしてるんだったな。
「さて、と」
設計図から予定表に切り替えたスヴェートは、水を飲みつつ確認する。失敗に終わったガトランティス新鋭戦艦による首都特攻事件の翌日の朝より、式典―――アンドロメダ級の進宙式が開催されるのか。我がブリリアンスの駐地球大使である為”アイツ”は、式典に参加。大使だから参加するのは当然だろう。
「この目で見てみたかった」
叶わぬ夢だな、とスヴェートは溜息を吐く。そうほいほいと、ブリリアンスの頂点が地球に直接行っては色々と大変なのは、流石の自分でも分かっているつもりだ。
「そういえば、未遂で終わった首都特攻事件の日に太陽系全域で通信障害が起きたんだったな」
原因は未だ分かっていない。ただ分かるとすれば「地球に向けれた」くらいだ。それと、アイツからこんな報告が来た。要約すると「知人、あるいは親族の幻を見た者達が地球連邦軍の中にいる」、と。
「気になるものだ」
深く座るスヴェートが口にした直後、向かい側のドアが開かれる。スヴェートはオッドアイの視線を、開かれたドアに向ける。そこには、タクティカルドロイドと2体のコマンドー・バトルドロイドが入室していた。ボディカラーが青基調のタクティカルドロイドは、目のセンサーを白く点滅させながら告げる。
「スヴェート様。シャトルノ準備ガ整イマシタ。隣星系ノ第4惑星宙域ノ建設現場にテ、スラクル様ガオ待チデス」
このタクティカルドロイドが準備していたのは、隣星系の第4惑星の軌道上で建造が進む球体の人工天体へ視察に向かう為のニュー級アタックシャトルだ。建造の都合上、改アクラメータ級戦闘航宙艦に搭乗しての視察となる。スヴェートはこれから、視察しに行くのだ。
「行くとしようか」
ホログラム投影装置の電源を消したスヴェートは立ち上がり、足取りを緩めることなく私室を後にした。
そして、彼女を乗せたニュー級アタックシャトルは本部から飛び立ち、Xウィングスターファイター6機に護衛されながら本星を後にしたのだった。
後書き
さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。次回もお楽しみに!
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