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第45話「んな馬鹿な!?嘘だと言ってくれ!!」

 
前書き
ネオ・代表05−1です。第45話「んな馬鹿な!?嘘だと言ってくれ!!」となります。どうぞ、ご覧ください。 

 
 ―――アンドロメダ級一番艦〈アンドロメダ〉。
 
 前衛武装宇宙艦AAAー1とも呼称される〈アンドロメダ〉は、掃討戦のため前進を開始する。やがて戦闘宙域へと侵入した〈アンドロメダ〉は、索敵を開始した。

 「戦闘宙域に侵入するも、周辺に敵艦影は感知できず」

 「油断するな。まだ電磁波の影響が残っている。敵艦が残骸に紛れ隠れていることを考慮し、引き続き索敵を行え」
 
 「はっ!」

 その報告を聞いていた艦長席に座る男―――山南修は思う。今のところ敵艦はおらず、全てが戦闘艦であった残骸ばかりのようだ。だが、自身が先程そう言ったように索敵を怠ってはならない。新兵器である拡散波動砲とて、敵艦隊を全て沈めたという保証は無いのだ。

 そう時間が経たない時だった。レーダーに、最初の残敵が探知される。

 「レーダーに反応、数は2」

 方角9時10分に瀕死状態のククルカン級駆逐艦1隻、3時30分に同状態のラスコー級巡洋艦1隻が、頼りない足取りで航行している。

 砲雷長が命令する。
 
 「第一砲塔は9時の敵ククルカン級、第二砲塔は3時の敵ラスコー級に照準合わせ」

 取得した情報が戦術コンピューターに送信されるやその情報を整理し、前部に搭載されている2基の三連装大型主砲塔が標的へ向け照準を合わせた。

 「ターゲットロック、射撃準備よし」

 その報告を聞くや、山南は即座に号令を下した。

 「撃て!」

 三連装主砲から蒼色の陽電子ビームが放たれる。旗艦〈アンドロメダ〉に装備されている新主砲―――収束圧縮型衝撃波砲の口径は、40.8cm。その口径は宇宙戦艦ヤマトの三連装48cm砲と比較すると、貧弱な印象を与えるかもしれない。

 だが、だ。貧弱な印象など、アンドロメダ級は持っていない。

 蒼色の陽電子ビームは相対するガトランティス艦を撃ち抜き、撃沈していく。装甲を強化しただけのガトランティスに、〈アンドロメダ〉の艦砲を防ぐことなど出来る筈もない。

 ガトランティス将兵は、それで臆することはない。単艦で侵入してきたアンドロメダ級戦艦を見るや、次々に突っ込んで来た。彼らにとって逃げるという文字を持ち合わせず、大帝の為に戦い散ることを良しとしているのだ。

 「敵艦3を……いえ、5を探知!」

 「…やはり、拡散波動砲にも限度があったか。だが、数は多くない。主砲、発射。近い順に狙い撃て」

 山南は、落ち着いた様子で対応する。無人化を推進されたアンドロメダ級は各システムの自動化と効率化により、艦を運用する為に必要なクルー数は最小限の200名となっている。

 更に、〈アンドロメダ〉の収束圧縮型衝撃波砲―――ショックカノンとも呼ばれる主砲は速射性に優れ、一部の将兵からは「戦闘マシーン」と称されている。称されるだけあって、〈アンドロメダ〉の砲撃が残敵を新たなデブリへ加えていった。

 そして遂に、〈アンドロメダ〉は目の前の大戦艦―――カラクルム級戦闘艦と邂逅する。

 「…死んだか?」

 スクリーンには、カラクルム級が映っている。死んでいるか確かめるように砲撃での威嚇をするが、カラクルム級からの反撃は無い。猛威を振るったカラクルム級は、クジラのように漂わせていた。表面は拡散波動砲の影響で、上手に焼けました状態で赤黒く焼け焦げていた。どうやら、武装も死んでいるようだ。

 それでも原型を残している辺り、直撃しなかったにしろ頑丈であることに変わりはない。この驚異的な頑丈さに、山南は舌を巻いた。溜息が出そうになった時、副長が声高に報告した。

 「……ッ、艦長!敵艦、機関始動を確認!生きています!」
 
 その報告に、カラクルム級へ睨んでいた視線を山南はより強くする。死んでいると思われたカラクルム級の機関部は始動し、青白い熱源を発しながら噴射する。つまり、このカラクルム級は、機関部だけは健在だったのだ。これだけダメージを受けていても動けたことに唖然とするしかないが、その前に沈めねばならない。
 
 艦首をこちらに向けつつあるカラクルム級を今度こそ沈める為に、山南は砲撃を指示した。

 「主砲、発射用意!」

 旗艦〈アンドロメダ〉の戦術コンピューターが再び砲戦モードに入り、動き出したカラクルム級に狙いを定めるべく処理を開始する。

 「第1、第2主砲、間に合いません!」

 「敵艦の針路、本艦です!もの凄い加速です!?」

 だが、追いつかない。カラクルム級の急加速が勝り、〈アンドロメダ〉に向かって真っすぐ突っ込んで来ている。

 地球連邦軍では大型の部類に入る全長444mの〈アンドロメダ〉といえど、相手は全長520mと約80mの差がある。真面にぶつかれば、〈アンドロメダ〉とで無視出来ない被害を出してしまうだろう。であれば、だ。ここは砲撃を優先せず、回避に専念するべきだ。山南は即座に指令した。

 「波動防壁を展開しつつ、回避行動!」

 咄嗟の反応で〈アンドロメダ〉は回避したが、カラクルム級は元から〈アンドロメダ〉に特攻するつもりはなかったようで、回避そのものは決して難しくなかった。

 「第3、第4主砲、目標に照準を合わせ!」

 山南は敵艦が側面を通過すると判断した時点で、砲撃準備の再会を命じられた。コンピューターがすれ違うカラクルム級を狙い撃つために、砲塔が調整される。

 「主砲、発射準備完了!」

 「撃て!」

 即座に、山南は発射を命じた。後部の主砲塔が斉射され、急加速中のカラクルム級へ目掛け着弾せんとする。

 「初弾、逸れた!」

 しかし、6本のショックカノンは命中せず、艦体左側を追い抜いてしまう。それでも速射性能の高い新ショックカノンは直ぐ修正を完了させ、山南は主砲の発射を命じた。

 「撃て!」

 二射目のショックカノンは、今度はカラクルム級の艦尾右舷側に着弾する。6発のショックカノンは確かに命中したが、安堵するには未だ早かった。〈アンドロメダ〉の砲撃を受けてもなお加速を止めないカラクルム級に、艦橋要員は息を飲んだ。

 「逃がすな!」


 ―――アルポ銀河 ブリリアンス本星〈ブリリアンス〉。

 「いやはや、素晴らしき力だな、拡散波動砲は。〈アンドロメダ〉はイイ、実にイイ」

 給仕ドロイドにコーヒのお代わりを貰ったギルド長スヴェートは、見惚れていた。500mにも満たない全長だというのにその力、流石は地球だ。新鋭戦艦なだけはある。

 次元波動爆縮放射器―――通称、波動砲。
 宇宙戦艦ヤマトが初めて搭載した波動砲は、惑星を一撃で死に至らせることが出来る。艦艇が惑星を死に至らせるとは、驚愕に値する。実はこの兵器、真田志郎なる優秀な科学者によって作られたのだが、最初に波動砲を作ったのはイスカンダルと呼ばれる勢力なのだ。

 イスカンダル。
 ガミラスの信仰対象であるイスカンダルは《救済》の名のもとに、波動砲を用いて他の星を侵略もしくは破壊。つまりは、バリバリの覇権国家。ヴァルキウス銀河帝国か、とツッコミを入れたものだ。最も銀河帝国に、《救済》という文字は無い。彼らは皇帝を頂点とする実力主義勢力で、力による帝政を敷いている。力による帝政ならば、イスカンダルもそれに該当するだろう。

 さて、だ。

 そのイスカンダルだが、今となっては遠い過去のものとなり、イスカンダル人は本星に籠もっているようだ。なんとイスカンダル人、人口は5人以下の王族のみで、それも傾国級の美しい金髪の女性のみ。それでも畏怖してしまうのは、仕方ないというものだろう。

 当時は驚いたものだ。バリバリの覇権主義国家のもそうだが、人口が少なすぎるどころではないのだから。男性がいなくては、子供が出来ないじゃないか。その、夜の…夜の……恥ずかし過ぎる。最も、出来ようが出来まいが、私には関係ないのだが。

 「あのガトランティス艦、新鋭戦艦か」

 スヴェートは思う。〈アンドロメダ〉が相対するガトランティス艦が標準的なガトランティス艦ではないのは、一目(ひとめ)で分かる。まさか、拡散波動砲の攻撃に生き残るとは。上手に焼けました状態となっているガトランティスの新鋭戦艦―――カラクルム級を観つつコーヒーを飲んでいる中、バトルドロイドから報告が入る。

 「ア〜、ギルド長閣下」

 「…ん、どうした?」

 「敵ガトランティス艦、生キテイマス。敵ガトランティス艦ハ急加速、ワープヲ行う模様」

 「ギルド長閣下、ワープアウトスル場所ヲ予測出来マシタ。地球圏デス」

 「!?」

 コーヒを口に含んでいたスヴェートは、思わず霧状に噴き出してしてしまう。更に、手に持っていたコーヒカップを落とし、パリンっと割れコーヒーをバラ撒いた。席に座っていた彼女は、勢いよく立ち上がる。

 「んな馬鹿な!?嘘だと言ってくれ!!そこのバトルドロイド、それを片付けておけ!…何故、何故だ!本当に嘘だと言ってくれー!!」

 「ラジャー、ラジャー。…オレガ片付ケルノカ、…ハァ」

 気を落とすバトルドロイドを他所に、スヴェートは頭を抱えるのだった。 
 

 
後書き
さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!  
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