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金木犀の許嫁

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第二十九話 質素な充実その二

「もうお二人以上にね」
「貧乏で」
「凄い生活送っていたのよ」
「そうでしたね」
「それでご先祖様達もね」
「大坂の陣から薩摩に逃れて」
「代々続いていたけれど」 
 生き延びてというのだ。
「それでもね」
「貧乏でしたね」
「本当に実際の石高低いのに」
 薩摩藩はというのだ。
「お侍が多過ぎて」
「貧しかったですね」
「そもそも暫く浪人だったわね」
 夜空はここでこのことを思い出した。
「関ヶ原の後で」
「あっ、高野山に入って」
「それで十数年ね」
 大坂の陣がはじまるまでのことだ。
「浪人してたし」
「その時にですか」
「質素な生活がね」
 これがというのだ。
「かなりね」
「身に着いていましたか」
「そうかもね」
 こう言うのだった。
「やっぱり」
「そうですか」
「元々豊かじゃないしね、真田家って」
「小さなお家で」
「どう考えても贅沢はね」 
 これはというのだ。
「無縁よ」
「そうしたお家ですね」
「だから今の私達もね」
「贅沢じゃないですね」
「もう今でね」
 今の状況でというのだ。
「贅沢よ」
「そう言っていいですね」
「本当にね、ただね」
「ただ?」
「大阪はね」
 この街はというとだ、今自分達が暮らしている。
「贅沢じゃなくてもむしろね」
「ケチですね」
「何かそうだっていう雰囲気がね」
 それがというのだ。
「結構ね」
「ありますね」
「どうしてもね」
 このことはというのだ。
「大阪に付きものね」
「そうですね」
「これはお金の使い方を知っていて」
「無駄遣いしないことですね」
「そういうことだってね」
 その様にというのだ。
「考えればね」
「いいですね」
「そうでしょ」 
 こう言うのだった。
「ケチはまた違うわよ」
「無駄遣いしないことと」
「大阪の無駄遣いしないこととね」
「大阪はね」
 真昼も言って来た。
「ケチって言われてるけれど」
「実は違うわね」
「お金の使い方を知ってるのよ」
 こう言うのだった。
「そうなのよ」
「そうよね」
「そんなね」
 それこそというのだ。 
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