豊臣秀吉が異世界で無双系姫騎士やるってよ
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第14話:まともな名君が足りない……
前書き
前回のあらすじ
エイジオブ帝国農村搭載機動キャノンガリオン船『スイゲン』によるカイジンニキス港国蹂躙まであと3日!
外交面でも外聞面でも窮地なムソーウ王国でしたが、全く答えが出ず……
その後、カイジンニキス港国がスイゲンだけではなく山賊にも悩まされていた事を知ったオラウが、実際に山賊に出遭うも、オラウの口から出た言葉は、
「……信長様?」
へべく!
「……信長様?」
まさか……信長様もこの世界に転生して……
「のぶながさま?誰だそいつ?」
「え?違うの?」
「と言うか、誰よお前?」
あれ?
違うの?
「でも、豊臣秀吉の事を猿と呼びましたよね?」
「猿?」
あれれ?
話が何時まで経っても噛み合わんぞ?
「もしかして、こいつの事か?」
「こいつって?」
そこにいたのは、まるで猿の様な小男であった。
「ちょっと待て、つまり豊臣秀吉はそいつと間違われたのか?」
「んー……でも、こいつには無い美貌が有るか?」
何なんだよもう!
もしかして、信長様がムソーウ王国の代わりに水源と言う小田原城の様な鉄甲船と戦ってくれると思っておったが……
うん!……豊臣秀吉ながら完全に人任せだな……
ま、でも、エイジオブ帝国以外に鉄砲の有効性に気付いた人物をこのまま野放しは勿体無い!
「私は、ムソーウ王国国王、サカシラ・ガ・ムソーウの妹、オラウ・タ・ムソーウ」
その途端、目の前の山賊頭が少し困った顔をした。
「ムソーウ?あの恐ろしい突撃をする軍勢でお馴染みの?」
……どんだけ突撃が好きなんだ?我が国は。
「お恥ずかしながら、今はその勢いはありませんよ」
その途端、山賊頭は首を傾げおった。
「そうか?この便利な武器だって、えいじおぶなんとかが捨てた砦から奪った物だが、お前達ムソーウ王国のお得意の突撃が無かったら、こうはならなかったぞ?」
結局、その鉄砲はエイジオブ帝国から奪った物だったか……
しかも、エイジオブ帝国が捨てた砦の本当の目的には気付いていない様だ。
エイジオブ帝国が囮にした砦を次々と嬉々として落として、馬鹿みたいに死地に突っ込んで敵の罠に嵌ったのが……我が国であるムソーウ王国ですけどね!
「もし、本当に我が国の突撃が全てを打ち砕ける程の力が有るなら、カイジンニキス港国は今頃、我が国に助けを―――」
その途端、山賊頭の目が鋭く光った。
……何を考えておる?
「そのカイジンニキス港国なんだが、アンタはどう思う?」
ほう。
豊臣秀吉を試す気か?
「救えるものなら救いたいのですが、正直言って、今の我が国にはそこまでの力が無い。悔しい事であるが―――」
「本当に悔しいの?」
ん?
この豊臣秀吉とした事が、不正解を口にしてしまったか?
「あんな糞みたいな国を護りきれなかった事が、アンタはそんなに悔しいのか?本当に?」
こやつ、カイジンニキス港国への未練がほどんど無いと視える。
「悔しいと言うより、恥ずかしいかな?エイジオブ帝国に好き勝手されて、それを阻止出来ない私が……本当に憎いよ」
その途端、山賊頭がポンと手を叩いた。
「あ、なるほどね。えいじおぶなんとかに敗けるのが嫌なだけであって、カイジンニキス港国の様な糞国に未練が有る訳じゃないって事ね」
それを聴いて、豊臣秀吉は腹を立ててしまった。
思い起こしてみれば……豊臣秀吉は戦ってばかりの人生だった。
今川に拾われるまでただの農民だった私が、今川や織田を渡り歩きながら様々な戦場に赴き、領地を得てからは、その領地を護り広げる為に様々な大名と戦い。出世する為に朝廷に媚を売り、欲深い部下共を黙らせる為に大陸に攻め込んだ。
そして……ムソーウ王国の王女として再び生を受けてもなお領地争奪戦の様な人生は続いた……
それをこいつは……こいつは……
気付いた時には、豊臣秀吉はこの腹ただしい男の顔を蹴っていた。
「何が糞国だ!?己の事のみを考え、利だけは敏感で、犠牲を嫌い、国を守る事にすら興味を持たぬ。お前……」
冷静になった途端、豊臣秀吉は「しまった!」と思った。
そうだった!
かつてのムソーウ王国の部将以上の将校は、まるで作り話に出てくる一騎当千の様に強過ぎたんだった!
だから、ムソーウ王国王女、オラウ・タ・ムソーウである豊臣秀吉も、ムソーウ王国の部将になる為にムソーウ王国が求める強さに達する必要が有る訳で……
大丈夫かアイツ!?
なんか……壁にめり込んでいる様に見えるんですけど……
「すまんすまん。つい怒って冷静さを失っておった」
だが、豊臣秀吉に蹴られて壁にめり込んだ男は……笑っていた。
「なんだ……ちゃんと自分の意思を持ってるじゃないの?」
「……何?」
「それに引き換え、カイジンニキス港国の元老院共ときたら……お前の言う、『己の事のみを考え、利だけは敏感で、犠牲を嫌い、国を守る事にすら興味を持たぬ』だらけだよ」
「やはり豊臣秀吉を試したな?」
「奴らは、あの小島の様な船に対して何もしておらん。お前達ムソーウ王国に助けを求めておきながら、それが叶わむと視るや、手の平を返す様にあの船に媚を売る術を探っておる」
悔しいが、返す言葉はこれしかなかった。
「だが、私達ムソーウ王国はカイジンニキス港国の救助要請に応える事が出来なかった。そんな薄情な国を同盟国扱いするのは、流石にお人好しが過ぎるだろ?」
「で、そのお人好しなムソーウ王国があの船に敗けてる間、奴らは何をしていた?俺達やあの船がこの糞国で好き勝手やってる時、奴らは何をしていたと思う?」
……この男は、豊臣秀吉の返答に何も期待していない。
だがら、豊臣秀吉は黙った。
「何もしておらん!ただの様子見じゃ。自分の意志で選択した訳じゃない。戦う訳でも媚を売る訳でもない。『民草に偉そうに命令する』すらしない。ただの風見鶏じゃ。こんな腐った連中に上に立つ資格が有ると思うか?」
……豊臣秀吉は考え過ぎたかな?
なら……もうこの男と話す事は何も無い。
「失礼したな。私は国に戻る。とは言え、君の言う糞国じゃなくてな」
そう言って豊臣秀吉は山賊頭に背を向けたが、1つだけ訊き忘れておった事があった。
「そう言えば、名は?」
「……ノブナ」
ノブナ!?
……まさかね。
「その名、忘れぬぞ」
結局、鉄砲の存在を知る山賊を仲間に加える事は出来なかったが、得る物は多かった。
と言うか、ムソーウ王国の常識に飲まれ過ぎて、自分を見失っていたらしい。
それが判っただけでも儲けものだ。
オラウが去った後、部下がノブナに訊ねた。
「信長様、もしかして?」
ノブナは笑顔で答えた。
「だな。あ奴は秀吉だ。まさか、アイツまでこの糞国で人生2周目をしておったとは……よほど天は元老院の糞共がお嫌いと視える」
そう。
オラウの最初の予想通り、ノブナは織田信長の生まれ変わりだった。
だが、ノブナはそれを悟られない様に道化を装っていたのだ。多少のヒントを混ぜながら。
「だが、秀吉の奴、大殿の中身が何者かをすっかり忘れておる様ですぞ」
「それはどうかな?秀吉めの顔、最初と最後でまるで別人だった。まるで憑き物が落ちたかの様にな」
それよりも、ノブナ率いる山賊も実際は進退窮まれりの状態であった。
「……さて、で、あの元老院の糞共はあの船に対して何をしておる?」
ノブナの質問に対し、部下達は呆れながら答えた。
「先程の信長様と秀吉様の会話通りです。カイジンニキス港国元老院めは、ムソーウ王国とエイジオブ帝国、どっちが勝っても自分が得する為の外交策に尽力するのみです」
それを聴いたナブナがつまらなそうに質問する。
「で、この糞国に暮らす民草の反応は?」
対する部下も残念そうに告げた。
「申されませぬ。ただ、何も聞かされぬままあの船に翻弄されているのみ」
「何も聞かされていない?」
それが何を意味しているのかを、前世の頃から知っている山賊達は驚いた。
「やはり……あの糞共の将の器は無かったな。なら……」
その途端、ノブナが率いる山賊達が冷や汗を掻いた。
「カイジンニキス港国元老院も、大殿に企まれちゃ気の毒なものですな」
結局、ノブナをこちらに引き摺り込めなかった豊臣秀吉は、例の水源との戦いに備えて出張っているムソーウ王国の兵士達と合流するが、
「オラウ様!よい所へ」
「ん?どうかしたのか?」
「サカシラ様があの島との戦いに備えて民衆を安全な場所に避難させよと命じましたが、カイジンニキス港国の兵士達がそれに賛同してくれず―――」
何じゃこれは!?
これでは、あのノブナの言った通りではないか!
「で、まだ避難しておらん民衆はどこじゃ?」
「未だに町から脱出出来ておりません。それどころかカイジンニキス港国が戒厳令を強いて民衆の外出が禁じられています」
敵が目の前にいるのにか?
いや……待てよ?
「元老院は既に、エイジオブ帝国と手を組んでいる」
豊臣秀吉の予想に対し、ムソーウ王国側の兵士達が首を傾げている。
「それでは話が違います。エイジオブ帝国がカイジンニキス港国の安全を保障しているのであれば、何故戦場に民衆がおるのですか?しかも大勢」
「お前は甘いな」
「と、申しますと?」
「エイジオブ帝国が組んでいるのは、カイジンニキス港国ではなく元老院だ。恐らく、今回の戦にエイジオブ帝国が勝利すれば、カイジンニキス港国の元老院の生命と地位を保障する」
「な!?」
「つまり、最初から筋書きが出来ておったと言う訳よ」
ムソーウ王国の兵士達が怒りで震えていた。
豊臣秀吉から見れば『甘い』のだが、その甘さがムソーウ王国の良い所なのだろう……
で、民衆の避難が大幅に遅れている街の1つに案内されたが、そこでは、避難の準備をしている民衆に対して兵士達が帰宅を強制していた。
「何をしている!?早く家に帰らぬか!」
「あの馬鹿デカい船がもう直ぐここを攻撃するって、ムソーウ王国の兵士達が―――」
「その様な話は聴くな!お前達はさっさと帰宅して、ずーと家に引き篭もれ!」
「本当にあの馬鹿デカい船がこの街を攻撃しないと言う保証は有るのかよ!?」
話は完全に一方通行である。
寧ろ、邪魔である。
「逃がしてやれ。寧ろさっさと逃げてくれ」
その時、兵士達のリーダー格が私の顔を見て少し蒼褪めた。
それに対し、民衆達は豊臣秀吉に向かって津波の様な質問攻めにした。
とは言え、言ってる事はただ1つ……どうやったら自分達は助かるのかである。
ならば、カイジンニキス港国の兵士に対する最初の質問はこれだ。
「で、例のエイジオブ帝国ご自慢の巨大戦艦と戦う上で、避難せずに家に引き籠ってる民衆がどう役に立つと言うのだ?」
その途端、兵士達は首を傾げながら仲間と話し合い始めた。
ただし、リーダー格だけは御怒り気味に怒鳴った。
「五月蠅い!お前達はただ、国民の帰宅と外出禁止を徹底させれば良いだけだ!」
「で、理由は?」
「そんな事はどうでも良い!」
「良くない。理由も無しに家に引き籠れと言われても、民衆は納得せんぞ」
こいつ……舌戦下手だなぁー。
言い訳の1つでも考えておけよ。
なら、ちょっと先手を打ってみるか。
「我々ムソーウ王国がお前達の避難の催促をした理由についてだが、お恥ずかしい事に、今の我々は君達を護りながらあの巨大戦艦と戦う力は無い。ならば、戦う力無い者にここに残られるより、急ぎ安全な場所に避難してくれた方が戦い易いと考えた次第である」
「じゃあ、俺達が邪魔だからさっさと逃げろと言うのか?」
「そうだ。お前達だって死にたくないで―――」
「ばかもぉーん!誰がこの街から出て良いと言ったぁー!」
あのリーダー格、必死だな。
カマをかけて視るか。
「我々ムソーウ王国はあの巨大戦艦と戦う事を宣言し、そして、民衆の避難を催促した理由を言ったぞ。なら、お前達も外出禁止を強要する理由を申してみよ。さあ」
「黙れぇー!元老院の決定に異論を申す気かぁー!」
舌戦下手のクセにしつこいな。
なら……攻め方を変えるか。
「なら、質問を変えよう。ただ、その前に言っておく、今から言う質問への台詞は『はい』と『いいえ』の2つのみとし、それ以外の台詞を申した者は作戦漏洩罪の名目の下……殺す!」
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