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ある白猫の生涯

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1-3

 次の日、魚の匂いに釣られてデッキから出て行くと、そこの住人に捕まえられてケージの中に閉じ込められて、そのまま、よその玄関に置き去りにされた。

 「お父さんが 飼ってもいいって 言ってたからね ここんちの猫になるのよ」と、女の人の声がして、そのままだ。子供達が寄ってきて・・・俺をケージ越しに眺めているけど、そこから出そうとはしないのだ。

 辺りが暗くなって、誰か帰って来て

「ギャー なに これっ!」と、女の人の声

「衣川さんが置いて行ったよ お父さんが飼っていいって言ったらしいよー」と、子供の声が

 そのまま、リビングに運ばれて、ようやくケージから出されたのだけど、俺は見慣れないところで、見慣れない人達の前なので、部屋の隅に逃げ込んでいた。子供達が触ろうとしてくるんだけど、逃げ回っていたのだ。そのうち諦めたのだろうけど、俺は部屋の隅で辺りを伺っていた。餌を出してくれたのだけど、あの乾いた丸っこいものなので、食べたいとは思わなかった。それどころじゃぁ無いのだ。今までの環境と状況がまるで違うのだ。この事態が理解出来なかった。

 どれぐらいの時間が経っただろうか、男の人が部屋に入って来て

「なんだ! なんで こいつが居るのぉー?」と、叫んでいた。

「衣川さんが置いていったんだって! あなた 飼ってもいいって言ったの?」

「うん 言ったかなーぁ でも そんなー」

 と、言う訳で俺はここの飼い猫になった。そして、お父さんが俺のことを 岩 岩と呼ぶので、名前も 岩になったようだ。お母さんは

「こんなー 子猫のうちからなら懐くけどー こんな大きくなったのは どうかしらねぇー それに こんな大きいの きっと7~8Kgあるよ 可愛げないわよー」と、言っていたけど、俺にとっては、初めての家族なんだから、『そんなことは無いよ! 出来るだけその気になるつもりだよ』と思っていたのだ。

 早速、お父さんは俺に「岩 お前は岩なんだよ でかいけど豚ではないみたいだな こっち こいよ」と、呼ぶのだけど、そんなわけにはいかない。まだ、信頼関係が無いのだと、警戒はしていたのだ。『勝手に呼び方を変えやがって・・・』俺が、寄って行く気配がないのを察知したのか、その後は構わなくなっていた。割と、あっさりした人間なんだとわかったのだ。

「まぁ だんだんと慣れるよなー お前は家族ってものがどういうものか知らないだろうからー いつまでも そんな部屋の隅ってわけにいかないぞ いいか? 家族の一員なんだからな」

『家族? ってなんだぁー』

 次の日から、家のみんなは出て行って、俺は、2階に閉じ込められた。だけど、ベランダにはトイレ用の砂の箱も置いてあって、ベランダから屋根に跳び移って、そこから駐車場の屋根に、飛び降りると難なく、外に出れることを発見したのだ。

 戻るのはどうする! 降りるのは簡単だけど、あそこまで飛び上がるのは無理だろう。仕方ないので、誰か家の人が帰ってくるのを待って、入れてもらうか と そんな俺の新しい生活が始まったのだ。 
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