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実は悪い人だった 

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第一章

                実は悪い人だった 
 代現ビジネスというメディアから取材が来たと聞いてだ、県会議員の住友多持長方形の穏やかな顔で黒髪をセットした長身痩躯の彼は採用したばかりの秘書の奥寺義人に言った。
「断るんだ」
「取材をですか」
「あそこは絶対にね」
「何かあるんですか?」
「あそこは碌な奴がいないんだよ」
 奥寺、大学を卒業したばかりで大人しくかつ真面目そうな悪く言えばまだ世間をよく知らない様な子供っぽさが残る顔で髪の毛を左で分けた卵型の顔で一七〇位の背で痩せた彼に話した。二人共スーツ姿だ。
「あまりにも酷いんだ」
「あの、あそこのデスクに」
 奥寺は真剣な顔で言う住友に言った。
「僕の大学の先輩がいるんですが」
「先輩が?」
「同じ学部で同じサークルで」
 それでというのだ。
「よくしてもらったんですが」
「その人の名前は何て言うのかな」
「朝香基安です」
 奥寺はその名前を紹介した。
「その人です」
「聞かない名前だね、しかしね」
「それでもですか」
「その先輩とは絶対に関わらない方がいいよ」
 住友は奥寺個人にも真面目な顔で告げた。
「何があってもね」
「いい人ですが」
「どうかな」
 今度は疑問形の声と顔で応えた。
「それは」
「わからないですか」
「全くね」
 それこそというのだ。
「簿kが思うに」
「代現ビジネスだからですか」
「あそこは本当に酷いから」
「講壇社の所属ですよね」
「日刊キムダイと一緒にね」
「タブロイド紙の」
「キムダイも代現も同じだよ」
「関わったら駄目ですか」
「いい人でもね、だからね」
「今回はですか」
「断るんだ」
 この時も絶対にという言葉で言った。
「いいね」
「そうですか」
「うん、君自身もね
「朝香先輩とはですね」
「金輪際、プライベートでもね」
「付き合ってはいけないですか」
「それが君の為になるよ」
 忠告であった、完全な。
「本当にね」
「いい人なんですが」
「じゃあ調べればわかるよ」
 住友の言葉はこの時も真剣なものだった。
「代現ビジネスもその人もね」
「どんなところでどんな人か」
「そして日刊キムダイもね」
「わかりました」
 奥寺は住友の言葉に素直に頷いた、そしてだった。 
 まずは代現ビジネスについて調べ日刊キムダイもそうした、それから大学時代の先輩や友人達から朝香のことを聞いた。
 そうしてだ、住友に話した。
「代現ビジネスは最悪なところみたいですね」
「日刊キムダイもだね」
「代現の系列は」 
 それはというと。
「思想の左右関係なく」
「代現は一見右でね」
「日刊は左ですが」
「同じだよ」
 住友は忌々し気に言った。
「とことん腐ってるんだ」
「碌な記事がないですね」
「脳内で取材して」 
 即ちまともに取材せずというのだ。
「適当なことを悪意に満ちてだよ」
「書いていますね」
「どっちもまともに読んだら駄目だよ」 
 それこそというのだ。
「あのフォーカス雑誌サタデーと一緒の系列だしね」
「あの出歯亀雑誌ですね」
「そうだしね」
「下品極まりなくて悪意に満ちた」
「元々講壇社でどうしようもなく仕事が出来なくて性格も最低な連中が行く場所なんだ」
「最低な連中ですね」
「あそこは大手も大手の出版社で」
 そうであってというのだ。 
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