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危ないから家にいろ

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第一章

               危ないから家にいろ
 最近家の近所に変質者が出たと聞いてだ、それでだ。
 サラリーマンの木田光長方形の顔で細く小さな目と短い黒髪を持つ中背で痩せた彼は娘の志保里黒髪をツインテールにしたあどけない顔立ちの幼稚園児の彼女に家で言った。
「暫く外に出るな」
「どうしてなの?」
「変な人がうろうろしているからだ」
 この事実を話した。
「だからだ」
「変な人が?」
「幼稚園にはお父さんとお母さんが送る」
 そうするというのだ。
「そして家に帰るとな」
「出たら駄目なの」
「お買いものもな」 
「一緒に行けないの」
「暫くはな」
「つまんないの」
「面白くなくてもだ」
 父の顔は必死のものだった。
「いいな」
「お外に出たら駄目なのね」
「お家の中で遊びなさい」
 あくまでこう言うのだった、そしてだった。
 木田も彼の妻の明菜娘がそのまま大きくなり黒髪をポニーテールにした彼女も娘の幼稚園への送り迎えを徹底してだった。
 家の外に出さなかった、娘は面白くなさそうだったが。
「変質者が出るそうだからな」
「何かあったからじゃ遅いし」
「だからな」
「今は我慢してもらわないと」
 こう話して待った、そしてだった。
 娘を外に出さなかった、そんなある日娘が両親に夕食の時に言った。
「お庭の外、塀の向こう側を変な人が歩いていたの?」
「変な人?」
「どんな人なの?」
「髪の毛がなくて小さな鼠みたいな目で」
 娘は両親にその者のことを具体的に話した。
「前歯に隙間があって痩せて頬張った感じの人よ」
「そうか、そんな人か」
「それで怪しい感じなのね」
「うん、何か凄く気持ち悪くて」
 そうであってというのだ。
「変な人だったわ」
「そうか、わかった」
「その人が出たら今度はお家の中に入りなさい」
 両親はこう言ってだった。 
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