高級レストランに入るのに必要なもの

　　　　　　　　　　　　　　　　高級レストランに入るのに必要なもの
　その店は高級レストランである、それで自分が言うにはしがない肉体労働者の川瀬雄三は妻でパトで働いている真礼に言った。
「会社の抽選でクーポンけれど」
「私達が行くとね」
「場違いかな」
「そうよね」
　妻は夫にまさにと応えた、夫は細面で細い小さな目で黒髪は短く耳が大きく一七〇位の痩せた身体だ。妻も痩せていて気弱そうな顔立ちで黒髪を後ろで束ねていて眉が弱々しい。背は一六〇位だ。
「幾ら何でも」
「せめてお洒落して行くか」
　夫は妻に言った。
「スーツ着てな」
「二人共」
「それで幸もな」
　二人の娘で母親そっくりの小学四年生の彼女もというのだ。
「レンタルでもドレス着せて」
「行くのね」
「そうしようか」
「セレブご用足しのお店でも」
「折角クーポン当たったしな」
「それじゃあね」
　こう話してだった。
　一家でそのレストランに行った、箪笥から夫婦は着慣れないスーツを出して娘にドレスをレンタルして着せてだった。
　そのうえでその店に行った、二人はこの時も不安だった。
「来店お断りとかな」
「されないわよね」
「場違いとか言われて」
「そうされないわよね」
　夫婦は兎に角不安だった、そうした話をしてだった。
　店の前で店員にクーポンを見せるとだ、笑顔で言われた。
「いらっしゃいませ、川瀬様ですね」
「は、はい」　
　夫がおどおどとした調子で応えた。
「そうです」
「ではご案内します」
　予約されている席にとだ、こう言ってだった。