ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル
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第138話 イッセーVSフリード!イッセーの新必殺技炸裂!
side:イッセー
フリードと戦いを始めて10分近くが立ったが未だに俺はコイツを倒せていない、それだけフリードの奴がパワーアップをしているってことか。
「シャアアアッ!死ね死ね死ねぇ!!」
フリードが剣を振るい高速の連撃を放ってくる、俺はそれを赤龍帝の籠手とフォークシールドでいなしていく。
「ふっ!!」
そして奴の隙をついてその顔面にシャブを8発撃ち込んでやった。だが……
「生ぬるいぜ!!」
傷を負っても直ぐに回復した奴は俺に向かって火炎を吹きかけてきた。
「スパイラルフォーク!」
炎を右手で円を描くように動かして発生させたフォ―クでかき消した、だがドラゴンの性質を持つ俺の腕に軽い火傷ができる。
「レッグフォーク!」
俺はお返しと言わんばかりに奴の胸に足でのフォークを打ち込んだ。
「アイアンコング!!」
だが奴の胸は一瞬で変化すると鎧のような胸板に変化した、そしてレッグフォ―クのダメージを軽減する。
「アイアンコング!?捕獲レベル37の猛獣か!」
俺は後ろに下がってフライングナイフを放とうとするが地中から現れた触手に足を取られてしまった。
よく見ると奴の左腕が触手のように伸びていた。
「ゴブリンプラント!そらよっ!」
「ぐうっ!?」
そしてフリードは俺を振り回して地面に叩きつけた。
「おらっ!もういっぱつだ!」
「させるか!」
もう一度俺を振り回そうとしたフリードの触手をナイフで切断して俺は脱出する。
「逃がすか!」
フリードの足が豹のように変化すると爆発的な速度で接近してきた。
俺は複数のフライングナイフやフライングフォークで迎撃するが全て交わされてしまう、だがそれでいいんだ。
かわした奴がこの位置に飛んで来るように直感で攻撃を放ったんだからな
「ナイフ!」
「チッ、誘われたか……だが効かねえな!」
俺はナイフを縦に振るいフリードに斬りかかる、だが奴は剣を横にして受け止めようとした。
「グッ!?重い……!?」
倍加で威力を上げたナイフは予想以上に重かったらしく両手で剣を持って支えようとするフリード、ナイフ自体は当たらなかったが奴の体勢を崩す事には成功した。
「今だ!14連釘パン……ッ!?」
釘パンチを当てようとしたが腹部に強い衝撃が走り俺は後ろに吹き飛んでしまった。
よく見るとフリードの横腹から二本の腕が生えていた、それはまるでトロルコングを思わせるような姿だった。
「殺す!」
ジグザグに空中を動きながら俺に迫るフリード、奴は剣による突きを放とうと構えていた。
(受け流して反撃だ!)
カウンターを狙った俺は構えたが奴は俺に接近した合間に剣を離してしまった。
「なにを……」
「噛み殺すんだよ!」
するとフリードの腕がまるでガララワニのような顎に変化して俺の胴体に噛みついた。
「ぐわぁぁぁっ!」
鋭い牙が俺の体に食い込んで思わず絶叫を上げてしまう。
「おまけの電撃だ!」
「があぁぁぁぁっ!!」
更にそこに高圧電流までも流し込まれて悲鳴を上げる俺、このままじゃ不味い……!
「10連……釘パンチ!!」
俺は奴のボディに釘パンチを叩き込むがまるでゴムみたいな感触を感じて手ごたえがなかった。
「捕獲レベル21のゴムのような怪獣『ゴムラゴン』の体だ。打撃なんざ効かねえよ!」
「だったらこうだ!」
俺は打ち込んでいた拳を開いてゴムの肉体を掴んだ、そして思いっきり引っ張る。
「お前、まさか……!?」
「吹っ飛べ!」
「ぬあっ!?」
そしてゴムの反動を利用してフリードを吹っ飛ばしてやった。
「はぁはぁ……まるで100体の猛獣を相手にしている気分だ」
「ククッ、実際にそれくらいの猛獣の遺伝子を使ってるらしいぞ」
吹っ飛ばされて壁に激突したフリードが大きく跳躍して戻ってくる。
「どうだイッセー、この体は?お前に何度も何度もぶっ飛ばされていたころの俺とは訳が違う!」
「俺もグルメ細胞や神器の力で戦ってる、貰い物の力で……なんて言ったりはしねぇよ。大したもんだ、見違えたじゃないか」
俺は素直に奴を褒めた、実際にてこずってるのは確かだからな。
「でももう覚えた、要するに猛獣100体と戦ってると思えばいいだけだ」
「ハッ!だったらそれがつよがりじゃないかどうか見せてもらおうか!」
フリードは覇者の剣以外にも残った3本の手に光の剣を構えて襲い掛かってきた。
「そらそらそらっ!」
凄まじい速度で放たれる四本の剣での斬撃、だが俺は腕の筋肉の動きやトロルコングとの戦闘の経験を活かして予測しながら回避していく。
「なにぃ!?当たらないだと!」
「ナイフ・タリアータ」
俺はフリードの斬撃をすり抜けるように回避してすれ違いざまに奴の手を斬り付けた。
「クソッ、なら……」
フリードは息を吸って肺を膨らませる、俺はそれを見た瞬間に右側に大きく跳躍した。
「冷凍光線!!」
口から蒼白い光線を吐いたフリード、俺はその一撃を難なく回避するが後ろにあった柱が一瞬で凍り付いてしまう。
(ツンドラドラゴンの能力を使った、なら奴は今高温に弱くなってるはずだ)
見覚えのある攻撃を見た俺はフリードが元に使った生物の原型を予測して炎のブレスを吐きだした。
炎はフリードの全身を燃え上がらせて奴を苦しめていく。
「ぐわぁぁぁ!?熱ぃじゃねえか!?どうなってんだ!!」
やはり高温に弱くなっていたようでフリードは悲鳴を上げた。
しかし奴は複数の生物の能力や生態を使える、炎に対して強い耐性を持つ生物になろうとするはずだ。
そして奴の体から体毛が出てきて炎をシャットアウトした。アレはマグマラットの体毛だな、狙い通りだ。
「マグマラットじゃこの一撃は防げないよな?」
「しまっ……!?」
「13+2!26連ツイン・釘パンチ!!」
俺は奴の腹部にツイン・釘パンチを叩き込んだ。奴は何度も宙を跳ねまわり最後に勢いよく地面に叩きつけられた。
『やったか?』
「手ごたえはあったが……」
ドライグの問いに俺は手ごたえはあったと答える。だが直感で奴がまだ倒れていないと感じた俺は砂煙の上がった奴の落下地点から視線をそらさずに警戒を続けた。
「ゴハッ……とんでもねぇ威力だ。前の体なら50回くらいは死んでるぞ、コレ」
フラフラとしながらも立ち上がってきたフリード、その体はシュウシュウと音を立てながら傷を修復していた。
「再生能力か……」
「ははっ、この命が尽きるまで俺は止まらねえ。覚悟しろ、イッセー。俺を舐めるなぁぁぁぁぁっ!!」
フリードは両手を伸ばして更にそこから枝分かれさせて様々な生物の形にして襲い掛かってきた。
ガララワニの顎、トロルコングの腕、デビル大蛇の触手、リーガルマンモスの鼻……今まで出会った猛獣も沢山いた。
だが俺は怯まずに突っ込んでいた。そして今までの経験と直感を使い全ての攻撃をいなし防ぎ回避していく。
「クソッ!なんで当たらねぇ!!」
「フリード、お前こそ俺を舐めるな。今までどれだけの猛獣と戦ってきたと思ってるんだ?既に100はとっくに超えているんだよ!!」
俺は一気に距離を詰めよって拳を握りしめる。
「15×2で30!ブーステッド・釘パンチ!!」
俺は必殺の一撃を奴の胸板に叩き込んでやった。フリードは血反吐を吐いて今度は壁に突っ込みそのままめり込んでいく。
そして最後の衝撃で壁が崩れて奴を生き埋めにしてしまった。
「……まだだ」
だがその一撃をもってしてもフリードは立ち上がった。瓦礫を押しのけて血走った目で俺を睨んでいる。
『馬鹿な、奴は不死身なのか!?』
「どうだろうな、いくら再生能力を持っていてもあそこまでタフな奴がいた記憶はないな。グルメ界の生物ならいるかもしれないがなんとなくフリードはグルメ界の猛獣の遺伝子を持ってないような気がする」
『それも直感か?』
「ああ、そうだ」
もしグルメ界の生物の猛獣の力を使えるなら俺は瞬殺されていただろう、だが奴の能力は今のところ全てG×Gの人間界に生息していた奴ばかりだ。
多分だけどフリードではグルメ界の生物の能力を使えないんだろう、仮に俺がフリードみたいな体を得たとしても使いこなせるとは思えない。
つまり俺が何を言いたいのかと言うとあの再生能力は生物によるものではないんじゃないかと思うんだ。あんな異常な再生能力を持った人間界に住む猛獣は俺も知らないからな。
(こういう時に仙術を使える小猫ちゃんや魔法を使えるルフェイがいてくれたら楽なんだけどな……まあ仕方ないか)
俺の嗅覚ではなにも感じない、だから相手の氣の流れを読んで体内を探れる小猫ちゃんや魔法でサーチできるルフェイがいてくれたら楽だと呟く。
だが彼女達はこの場にいない、なら俺がどうにかするしかない。
(……使うか、まだ慣れていないけどそうも言ってられないからな)
俺は精神を集中させると氣を集めていく、そして目が金色に変化して感覚が敏感になった。
「仙術!」
そう、俺が使ったのは小猫ちゃんが使う仙術だ。元々俺は仙術は使えなかったんだけど最近になって使えるようになったことが分かったんだ。
俺が仙術を使いこなせるようになったのは小猫ちゃんと黒歌の氣が俺の体内に流れ込んだことで素質を持っていた俺も仙術を使えるようになったと黒歌が教えてくれた。
えっ、どうやって俺と小猫ちゃんと黒歌の氣が混じり合ったって?そ、それは……その……
『雄と雌が子供を作る際にするこう……』
「ドライグ!黙れ!」
俺は必至でドライグを止めた。言えるワケねえだろうが!チョメチョメしてたら使えるようになっただなんてよ……!
ま、まあとにかく使えるようになったんだ。流石に小猫ちゃん達と比べたら練度も低いし感覚が鋭くなるくらいにしか使えないが俺の鼻……嗅覚も使えばいい。
「仙術・龍脈颪!」
俺は強化された感覚を嗅覚に集中させて奴の匂いをかぎ分けた。すると先程までは匂わなかった場所から強い血の匂いが漂ってきた。
それは奴が持つ覇者の剣からだった。返り血ではなく剣の内部からまるで心臓を流れる血流のような濃厚な匂いを感じ取った。
「……まさかお前、自分の心臓を剣に埋め込んだのか?」
「ッ!?……気づいたのか?流石イッセーくんだねぇ♪」
俺の指摘にフリードは一瞬驚いた様子を見せたが直ぐに嬉しそうに顔を歪めて笑みを浮かべた。
「ああそうさ、俺はこの体を貰う際に自分の心臓を覇者の剣に埋め込んでコアにしたんだ。このコアが無事な限り俺は不死身の再生力を発揮できるってわけよ」
「じゃあその剣をへし折ればお前を倒せるって訳だな」
「出来るのかよ?お前にこの剣を折ることがよォ……!」
フリードは挑発するように俺に覇者の剣を突きつけてきた。
確かに今の時点では俺はあの剣に傷一つ付けられていない、流石はオリハルコンだ。恐ろしい硬さなのを実感する。
「それでもやってやる、さっきあんな啖呵を吐いておいてやっぱり出来ませんなんて情けないにもほどがあるからな」
「そうこなくっちゃなぁ」
俺は拳を構えるとフリードは剣を振るい闘気を纏った。
「ようやくこの体にも慣れてきた、チマチマした小手先の変身はもう終わりだ。君を相手にするに相応しいボディにならせてもらうよ」
フリードはそう言うと再び体を変化させていく、そして人間の形をベースにしながら筋肉を増大させて体格を大きくさせていく。
「様々な猛獣の長所だけを取り出して生み出した肉体だ、流石にゴムとか鋼鉄化みたいなことは出来なくなったけどもうそんなギミック系は必要ないよね?だってシンプルなのが一番強いんだから」
「それは同感だ」
俺も素手で殴り合うのが好きだからフリードの意見に同意した。
「さあ、続きをやろうか」
「ああ、決着をつけるぞ」
俺とフリードは同時に駆け寄って拳と剣を交差させた。
「おおおォォォォォッ!!」
「がああァァァァァッ!!」
激しくぶつかり合い火花を散らすナイフと覇者の剣、至近距離での戦いでは剣を振りにくいはずなのだが奴は剣を腕の中に入れて刀身を短くしてナイフのように振るってきた。
しかもパワーも上がりスピードも増している、素手での戦いも俺に劣らない練度があり激しい殴り合いに持ち込まれた。
「はあっ!」
「ぐっ!?」
鋭いアッパーを後退してかわす俺、だがフリードは素早く身を翻してローリングソバットのような蹴りを腹部に打ち込んできた。
200㎏を超える俺の肉体をぶっ飛ばしたフリードは空中を走るように飛んできて俺の腹に膝を打ち込んだ。
地面に大の字で叩きつけられた俺は上から高速で剣の刀身を伸ばして突っ込んできたフリードを見て素早く身を起こした。
その瞬間フリードの覇者の剣が地面に突き刺さり巨大な爆発を起こした。俺は爆風に乗りながら後ろに飛んで距離を取ろうとする。
「弾丸斬!」
フリードは懐からゴツイ銃を取り出すと俺に向かって銃弾を放つ、しかもその銃弾は高速で回転しながら斬撃を纏っていたんだ。
「ぐあっ!?」
先程の突きから回避行動をとっていた俺は体勢を崩していてマトモに喰らってしまった。
「ぐううっ……!」
「貰ったァァァ!!」
腹を抑える俺の背後にフリードが高速で移動して斬りかかってきた。
「させるか!」
その一撃をフォ―クシールドで防いだ俺は奴の足にフライングフォ―クを刺して拘束する。
「10連釘パンチ!」
「天罰の盾!」
俺は釘パンチを奴の持つ覇者の剣に打ち込もうとしたがフリードの首にかけられていた十字架から盾のような結界が現れて俺の釘パンチを防いだ。
「ぐわああァァァッ!?」
そして釘パンチの衝撃が俺の腕に走ってダメージを与えられてしまい俺は吹き飛んだ。
「相手のダメージを撥ねかえせる一度だけ使える教会のアイテムさ、使う気は無かったがイッセー君に勝てるなら俺はムカつく古巣の道具だって遠慮なく使ってやるぜぇ!」
そして吹き飛んだ俺に高速で接近してフリードは脇腹を斬り付けてきた。
「おらァァァッ!!」
傷を負いながらもフリードの首を掴んで高速で回転して振り回した、そして遠心力を付けてフリードを投げ飛ばした。
「レッグフォ―ク!」
フリードに向かってレッグフォ―クを放つが、奴は空中で体勢を変えて宙を蹴るように高速移動をするとレッグフォ―クをかわして地面に着地する。
「うおおぉぉぉっ!」
俺はフリードに接近戦を仕掛けようとするがフリードは銃を取り出して見えない弾丸を打ち込んできた。
「がっ!?」
「俺ってどっちかっていうと銃の方が好きなんだよねぇ」
フリードは高速で辺りを動き回り俺の全身に見えない銃弾を撃ち込んでくる。
「ぐうっ!?くそっ、チョコマカと鬱陶しいぜ……!」
一発の威力は大したことないがそれでも連射されると厄介だ。
「……そこだ!」
俺は仙術と嗅覚で確実に奴の動きを探り当ててフリードを捕まえた。
「パワーボム!」
そしてプロレスの技で奴の頭を地面に叩きつけてめり込ませた、そして持っていた銃を蹴り飛ばした。
「レッグナイフ!」
そのまま覇者の剣を折ろうとするが素早く身を起こしたフリードが自分の体を盾にして攻撃を受けた。
「このっ……!」
逃がすまいとパンチを打ち込む俺だがフリードは足の裏で受け止めるとそのまま前蹴りで俺を吹っ飛ばした。
「重ね十字斬り!!」
フリードは斬撃を縦に飛ばして俺に当たる直前で横に斬撃を放ち重ねる事で十字架のような斬撃へと変化させて防御しようとしていた俺の腕を切り裂いた。
斬撃を重ねて威力を上げやがったのか!
「斬撃・白鳥!!」
フリードは覇者の剣を振るい白鳥が羽を広げて飛ぶような巨大な斬撃を放ってきた。俺はそれをサイドステップで回避したが僅かに足を切られてしまった。
「うおおおっ!」
だが痛みを無視して高速でフリードに接近して5連釘パンチを腹にブチ当てた。でもフリードは当たる瞬間に自分で後ろに飛んで衝撃を分散させた。
そして壁を足場に空中を複雑に飛び回ると俺の背後に現れて斬り付けてきた。
俺はそれを回避して反撃に移るがフリードもそれをかわして攻撃を仕掛けてきた。残像が見える程の素早い攻防を繰り返した俺達は俺が後ろに後退したことで攻防はいったん終了する。
「ぜやああぁぁぁぁっ!!」
フリードは正拳突きを放ってきたが俺はそれを左手で受け止めた、そしてカウンターで腹部に重い一撃を叩き込む。
だがフリードはそこに腕を差し込んで防御していた、それでもゴキッと骨を砕く音が辺りに響いた。
「10連釘パンチ!!」
その隙に反対の腕で釘パンチを奴の腹に打ち込んだ。フリードは血を吐きながら吹き飛んでいく。
「ぐふっ……!」
だが俺も血を吐いて膝を付いてしまった。ここまで来るのに何戦もしていてカロリーをかなりつかってしまった。
さっきフリードに猛獣の肉を貰ったが直に消耗してしまうとは……自分の体ながら燃費の悪さに溜息が出そうだ。
「……ぐはっ!?」
だが血を吐いたのは俺だけでなくフリードも同じだった。奴は再生できるはずなのに顔色が悪くなっていて息も荒れていた。
『なんだ、流石に再生も無限ではないのか?』
「……」
俺は仙術を使い奴の体を強化された嗅覚で嗅いでみた。するとタンパク質や脂質、炭水化物などが分解される匂いが奴の体から漂ってきたのを感じ取った。
「これは死臭か?どうして奴の体から……まだ生きているのに」
俺はその匂いが死臭だと判断した。生物は死ぬと免疫機能が停止して体内のバクテリアが身体を作る物質であるタンパク質などを分解し始める、その時の匂いが死臭だ。
だがフリードは生きているからそんな匂いがするのはおかしいんだ……まさか!?
「フリード、お前の体はもう既に死んでいるのか?」
「……へぇ、そんなことまで気が付いたんだ」
俺の指摘にフリードは驚いた様子を見せた。
『どういうことだ、イッセー?』
「グルメ細胞に負けてエネルギーを奪われてミイラになってしまうみたいにあの体はエネルギーをどんどん使ってしまうんだ。そして遂にタイムリミットが来た……」
俺の仮説にフリードはにんまりと笑みを浮かべて話し始めた。
「ご名答♪この体になれば長くは生きられない、しかも全力で戦闘したらその時間は一気に短くなる。多分後10分程度しか持たないんじゃない?」
「馬鹿な……それを知っていて何でそんな体になったんだ!?」
「決まってるでしょ?イッセー君を殺すためだよ……♪」
「そこまで俺を恨んでたのか?」
「恨みとはちょっと違うなぁ……最初は僕ちんも恨みかと思ってたんだけどさ、そういうのでもないって最近気が付いたんだよね」
俺は死ぬ事を分かっていてあんな体に改造したのはフリードがそこまで俺を恨んでいるからだと思ったが奴は首を横に振った。
「俺さぁ、舐められるのが嫌いなんだよね。だから俺は俺を舐めた奴を例外なくぶっ殺してやった。イッセー君に軽くブチのめされてさ、俺を舐めやがってってブチ切れたわけよ」
「じゃあやっぱり恨みじゃないか」
「違う違う、これは恨みなんて簡単な感情じゃない。その日から俺はイッセー、お前を殺す事だけを思って修行をしてきた。そしてエクスカリバーを手に入れてお前に挑んだけどまた負けた……そこから俺はただお前に勝ちたい、お前を超えたいとしか思わなくなっていった」
「……」
「そう、これは『愛』!!俺様ちゃんはイッセー君に心底惚れこんじゃったって訳よ!今まで何をやってもくだらないとしか思えなかったこの人生で唯一執着してやりたくなったんだ!コレが愛じゃなければ何が愛なんだい!?」
「なんて迷惑な愛だ、俺の気持ちとか考えないのか?」
「僕ちんがそんなこと考えると思う?」
「……思わない」
一方的な執着に俺は溜息しか出なかった、迷惑にもほどがあるぞ。
「だからさぁイッセー君、俺は命なんてどうだっていいんだよ?お前に勝てるなら死んだってかまわない……俺の生き様って奴だよぉ」
「……」
俺はフリードの事を理解していなかったんだな、アイツは人の命を奪って楽しむ快楽殺人者だと思っていた。
でも実際はそれ以上に狂っていた、俺に勝つためなら命すら捨てる執念を持っていた。
……俺も腹を括るか。
「オート……」
『待てイッセー!お前何をする気だ!?』
俺はオートファジーを使おうとするとドライグが止めた。
『馬鹿か貴様は!オートファジーは最後の手段だ、その後にジュエルミート級の食材を食わなければ死んでしまう事を忘れたのか!?』
「忘れていないよ、ドライグ」
『ならなぜ使おうとした?ここはD×Dだ、美味い食材なんざなにもない!使ったら確実に死ぬんだぞ!?』
「でももうカロリーはない。エネルギーを補給するにはこれしかない」
『そんな事をしなくても奴は時期に死ぬ!時間をかければお前の勝ちだ!その方が合理的だろう!』
「確かにそうだ。でもよドライグ、そんなみみっちい勝ち方をしようとする男がヴァーリに勝てるか?」
『ッ!!』
ドライグは必至で俺を止めようとしてくれた、だが俺の最後の言葉に何かを思い出したかのように言葉を止めた。
「フリードは最低な奴で今でも大嫌いだ。でもそんな奴でも命を捨ててまで俺に勝とうとしてる、俺はそこだけは男として共感できるんだ」
『……イッセー』
「一人の男として俺は逃げねえ、全身全霊を持って奴を迎え撃つ。やらせてくれ、ドライグ」
『まったく……お前は馬鹿だよイッセー。だがそうだな、ドラゴンである俺が随分とみみっちい事を考えるようになってしまった。そんな勝ち方をするくらいなら死んだ方がマシだ。好きにやれ、イッセー』
「ありがとうよ、ドライグ」
ドライグにお礼を言うと俺はオートファジーを使いエネルギーを回復する。
「いくぞ、フリード!」
「来やがれ、イッセー!」
俺達は同時に両方の拳をぶつけ合い拮抗する。
「うおぉぉぉぉぉぉっ!」
「しゃぁぁぁぁぁぁっ!」
そのまま激しいラッシュのぶつけ合いに持ち込んだ、剣や手刀がお互いの肉を削り地面に血をまき散らしていく。
決定打を当てられないままお互いに後退した。だがフリードは覇者の剣に真っ赤な炎を纏わせて力を溜めていた。
「これが俺の必殺の剣『超魔爆炎覇』……この一撃で終わらせてやる!」
決死の表情でそう言うフリードには確かな覚悟を感じ取った。俺も釘パンチを放とうとするがあることを考える。
(釘パンチを当てようとしてもフリードは自分の体を使って防ぎに来るはずだ。普通に戦っても覇者の剣には当てさせてくれないだろう)
フリードは釘パンチを警戒している、覇者の剣に当てられないように今までも自分の体を盾にすることがあった。
(ならフリードが予想できないような新しい技を使って覇者の剣を折るしかない、だがそんな技があるか?釘パンチ以外でオリハルコンを折れるような技が……)
俺は必至でそう考える、すると腕にできた十字の傷が目に映った。
(この傷はさっきフリードにやられた重ね十字斬りの……そういえばフリードは飛ぶ斬撃と直接の斬撃を合わせて威力を上げていたな、もし俺にもそれが出来れば……)
俺はある考えを頭に思い浮かべて行動に移そうとした。
「……勝負!」
そして俺とフリードは同時に駆け出した。
「フライングナイフ!」
俺はまずフライングナイフを四角の形に4回、真っ直ぐに1回と合わせて5回に分けてフリードに放った。
(釘パンチを確実に当てるための牽制か?体で受けて確実に釘パンチを防御すればいい!)
フリードは構えを解かずに突っ込んできた。そして4つのフライングナイフをかいくぐって向かってくる。
(今だ!)
直感でフリードの動きを先読みしていた俺は釘パンチの為に握っていた拳を開いて手刀にする、それと同時にフライングナイフの軌道が上に上がり上昇する。
「超魔爆炎覇!!」
そしてフリードが覇者の剣を勢いよく振り下ろした。
「新必殺!『テーブルクロス・エスタート』!!」
俺はフライングナイフと直接のナイフが×の字に交差するように攻撃を放った。その一撃は覇者の剣を根元から断ち切り見事にへし折ったんだ。
「なっ……!?」
「俺の勝ちだ、フリード」
フリードはコアを折られたことで全身から血を流してその場に倒れてしまった。
「ま、まさかフライングナイフにナイフを重ねて威力を上げるとは思わなかったぜ……あの4回の斬撃も俺を誘導するためのものだったか……焦って選択を間違えちまったぁ……」
「はぁ……はぁ……お前がヒントをくれたんだ。おかげで良い技ができた、ありがとうよ」
「ぐはっ……」
フリードは血を噴き出して倒れた。
「……」
俺はフリードに複雑な感情を持ってしまった。コイツはアーシアに酷いことをしようとしたし罪もない一般人を殺した、俺が知らないだけでそんな事を何度も繰り返したはずだ。
でも俺に勝とうとして命まで捨てようとした、やったことは絶対に許せないが戦士としては敬意をもってしまったんだ。
『イッセー、先に進むぞ。オートファジーが終わる前にアーシアを救出してG×Gに帰るんだ』
「……そうだな」
ドライグにそう言われて俺はその場を後にしようとした。だが出口を開けようとしたとき、何か物音がしたので振り返ってみると……
「ま、まだだよ……イッセーくぅん……!!」
フリードが立ち上がってきたんだ、体の半分が溶け始めていたがそれでも立ち上がった。
「もうよせ、フリード!今ならまだ助かる可能性が僅かにあるかもしれない!与作さんの所に連れて行ってやる!そして罪を償ってやり直せ!俺はお前の事が嫌いだけど死んでしまえとまでは思っていないんだ!」
「大きなお世話だ、俺は反省も後悔もする気はねぇ……はぁ……はぁ……生きる気もねぇ、お前を殺して俺は死ぬんだ……」
奴は右手を銃のような形に変化させた、そしてエネルギーをチャージしていく。
「残った俺の生命力を全てつぎ込んで弾にして放ってやる……!!」
「ぐっ……!」
不味い、この距離じゃ釘パンチを当てる前に攻撃が撃たれてしまう!
「フライングフォ―ク!!」
俺はフライングフォークで攻撃を止めさせようとしたが攻撃が当たってもフリードはチャージを止めなかった。
「くたばれ、イッセー!!」
そして奴の右腕から凄まじい光線が放たれようとする。
「……こうなったらやるしかねぇ」
俺は両手を合わせて合掌した、そして自身の中に残っていたカロリーとドラゴンのオーラを混ぜ合わせて両手に集める。
「リアスさんのグレモリー砲……そして黒歌が仙術のエネルギーとカロリーを混ぜる事が出来るという話を聞いて技のイメージは出来ていた。でもエネルギーの消耗が大きくて使う気にはなれなかった」
そして両腕に集まったエネルギーが掌に圧縮されていく。
「お前の最後のあがきに付き合ってやるぜ、フリード!喰らえ……ドルオーラ!!」
そして俺は両手からドラゴンのブレスのような破壊光線が放たれて同時にフリードも極太の光線を放った。
二つの光線がぶつかって激しい衝撃波を生み出す。
「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ……!!」
「ぐううぅっ……俺はアーシアを助けに行くんだぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
残った力を全て振り絞りドルオーラに注ぎ込む、そして俺のドルオーラはフリードの渾身の一撃を飲み込んで巨大な爆発を起こした。
「……」
爆発が収まった後、俺はフリードの元に向かう。奴は下半身を失っていて顔以外が溶けかけていた。
「やあイッセーくん……負けちゃったよぉ」
「フリード……」
「命まで使ったのに勝てないのか……悔しいな」
フリードの顔は穏やかだった、これから死ぬにしてはあまりにも清々しくて死ぬとは思えないほどに。
「でもなんにも後悔なんてしてないよぉ……こんなにも満たされたのは初めてなんだぁ。クソみたいな理由で生まれて一度も満足したことなかったけど今は清々しい気分だ……それに死んでもイッセー君も地獄に落ちれば続きが出来るし気長に待たせてもらうよ」
「お前の生まれなんて知らないがまあろくでもない大人たちに利用されてきたんだろうな。でもお前もお前でクソだと思うし何より俺は地獄になんて落ちねぇよ、落ちるならゼブラ兄だろうし」
「なんだよ冷たいなぁ……さっきは生きれるかもしれないって助けようとしてくれたじゃんかぁ」
「あれは……お前の勘違いだ」
「えー、俺はしっかり聞いたけどなぁ」
「うるさい」
いくら最低のクソ野郎でも一人で死ぬのは可哀想だ、せめて俺だけでも見届けてやろう。
「まあ確かに迷惑かけたし楽しませてくれたお礼にとっておきの情報を上げるよ。俺達にグルメ細胞をくれたのはジョアという奴さ」
「ッ!?」
俺はまさかこんなところで探している人物の名前を知れるとは思わなかったので目を見開いて驚いた。
「ジョアだと?それは確かなのか?」
「偽名かどうかは知らないけど俺っちはそう聞いたぜ。男か女か分からなかったけど曹操っていう奴を従えていたな」
「曹操……こりゃ当たりかもしれないな」
曹操の事を知っていた俺はその情報が当たりかもしれないと思った。
「良い情報が得られた。ありがとうよ、フリード」
「けけけッ……俺にまで礼を言うなんて真面目だね、イッセーくん……」
フリードの顔も溶け始めてきた、もう限界か……
「何一つ面白くもなかったクソみたいな人生だったけど最後にイッセー君に会えて良かったよ……続きは地獄でやろうぜ」
「だから地獄にはいかねえよ……あばよ、フリード」
そしてフリードは顔も全て溶けてしまい液体になってしまった。
「……俺も行かねえとな」
フリードの最後を見届けた俺は先に進もうとする。だが限界が来た俺は倒れてしまった。
「クソッ、オートファジーが終わりかけているな……俺もヤベェか……」
俺は最後の力を込めて携帯のメールにメッセージを入れる。その相手は小猫ちゃんだ。
「小猫ちゃん、悪ぃ……助けてくれ……」
そして俺の意識は闇に沈んでいくのだった。
後書き
小猫です。イッセー先輩からメールが来て何かあったのかもしれない、そう思った私は彼の元に向かおうと思ったのですがシャルバの激しい攻撃のせいでこの場を離れられません。
シャルバは何故か部長を狙っているみたいでこのまま先に行くわけには……えっ、リアス部長?私に先に行け?でも……
……いえ、分かりました。私がイッセー先輩を助けに行きますのでどうか祐斗先輩とゼノヴィアさんの事をお願いします。
次回第139話『シャルバの恐ろしい野望!勝利の鍵はサイラオーグ!?』で会いましょう。
次回も美味しくいただきます、にゃん♪
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