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金木犀の許嫁

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第二十六話 里帰りをしてその二

「もうです」
「大阪までですね」
「すぐにです」
「行けますね」
「そうですから」
 だからだというのだ。
「少しの間です」
「待っていればいいですね」
「その間寝ておられても」
 そうしてもというのだ。
「全くです」
「問題ないですか」
「本を読まれても」 
 そうしてもというのだ。
「いいです」
「本ですか」
「スマートフォンでも読めますし」
 今はというのだ。
「いいですね」
「そうですね、ただ」
 ここで真昼が言ってきた。
「最近です」
「最近とは」
「私青空文庫読んでるんですが」
「あちらですか」
「はい、色々な作品がありますね」
「著作権が切れたものですね」
 幸雄もこう返した。
「そうですね」
「はい、そちらを読んでるんですが」
「色々な作品がありますね」
「それでなんですが」
 真昼は幸雄に言った。
「芥川龍之介の作品もありますが」
「芥川の策hんでどの作品がいいか」
「はい、よかった教えてくれませんか」
「これまでどんな作品を読まれたでしょうか」
 幸雄は真昼に尋ねた。
「芥川は」
「地獄変に」
 真昼はこれまで読んだ芥川の作品のことを答えた。
「蜘蛛の糸、鼻、杜子春と」
「そうした作品ですか」
「他にも読んできましたが」
「河童や或る阿呆の一生は読まれてないですね」
「はい」 
 その通りだとだ、真昼は答えた。
「どうも」
「そうですか、ではです」
 幸雄は真昼の話をここまで聞いて述べた。
「出来れば末期の作品はです」
「芥川のですね」
「読まれない方がいいです」
「それはどうしてでしょうか」
「芥川は自殺していますね」
 真昼に今度はこのことを話した。
「そうですね」
「はい、有名ですよね」
「そうですね、自殺して」
 そしてというのだ。
「その直前精神的にかなり参っていて」
「それで自殺したんですね」
「そうでしたので」
「それで、ですか」
「芥川の末期の作品は」
 それはというのだ。
「暗鬱なもの狂気に満ちたものと」
「そうしたものばかりなので」
「それで、です」
 その為にというのだ。 
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