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それもまた一興

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第一章

                それもまた一興
 長崎は雨が多いと言われている、そしてそれは本当のことである。
 サラリーマンをしていて今は有給を取ってこの街に観光に来ている三井勇也、面長で細長い眉ときりっとした目に黒髪をショートにして一七一程の背の彼は今その雨に遭ってだった。
 苦い顔になってだ、高校からの交際相手でOLをしている一緒に長崎に来ている西園寺英梨長い黒髪を後ろでツインテールにしている太く短い眉と色白できりっとした目で小さな赤い唇と一五五位の均整の取れたスタイルの彼女に言った。二人共ズボンである。
「近くのお店に入る?」
「そうね」
 英梨は勇也のその言葉にすぐに頷いた。
「それじゃあね」
「丁度そこにコンビニあるし」
「あそこに入って」
「傘買おう」
「それでね」
「また歩こう」
「そうしましょう」
 カップルでそんな話をしてだった。 
 二人で傍のコンビニに駆け込んでそうしてそこでそれぞれ傘を買った、その上でまた外に出てだった。
 歩きはじめた、雨は結構強く英梨は不満そうに言った。
「長崎は今日も雨だったって」
「歌にあるけれど」
「その通りよね」
「そうだね」 
 勇也も不満そうに応えた。
「あの歌の通りね」
「雨になったわね」
「これからどうしようか」 
 勇也は英梨に尋ねた。
「予定通り回ってく?」
「さもないと行きたい場所全部行けないでしょ」
 英梨は勇也に顔を向けて答えた。
「そうでしょ」
「それはね」
 勇也もそう言われて答えた。
「そうだよ」
「だからね」
「雨でもだね」
「結構強いけれど」
 その雨がというのだ。
「行きましょう」
「そうだね」
「幸い今二人共ズボンで」
 英梨は自分達の服の話もした。
「普通の靴だし」
「ヒールじゃなくて」
「歩きやすいし」
 だからだというのだ。
「もうね」
「今日行きたい場所皆行こうか」
「ええ、グラバー園の方行って」
「あちらにある観光名所をね」
「皆回ろうか」
「そうしましょう」  
 カップルで話してだった。
 それでグラバー園の方まで歩いていってそこにある観光名所を巡って名物も買った。夕方までそうしたがずっと雨は降ったままであり。
 夜もだった、それで英梨は長崎の居酒屋で飲みながら一緒にいる勇也に対してやれやれといった顔で言った。
「殆ど濡れなくても」
「今も降ってるね」
「ええ、ずっとじゃない」
「お昼からね」
「雨多いところっていうのは」
「本当だね」
「お店に入って」 
 そうしてというのだ。
「こうしてね」
「飲むにしても」
「降ってるし」
 実に嫌そうに語るばかりだった。
「しかも結構強く」
「そうだったね、ただね」
 勇也は長崎の海の幸を食べつつ言った、刺身である。 
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