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オシリスの犬とジャッカルの色

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第一章

               オシリスの犬とジャッカルの色
 ウプウアウトは冥界の主オシリスに使える神である、その姿は黒い犬である。
 その彼がオシリスに仕える冥界の神の一柱であるアヌビスに問われていた。
「オシリス様は何処におられるか」
「今は自室におられます」
 ウプウアウトは正直に答えた。
「イシス様と共に」
「そうか、ではそちらに伺おう」
「何かありましたか」
「大したことではない」 
 アヌビスはジャッカルの頭で答えた。
「別にな」
「ですが何があったかお話してくれますか」
「うむ、今日死んだ者で厄介な者がいてな」
「その者のお話をされますか」
「そうしたいのだ」
 こうウプウアウトに話した。
「功罪が共に大きくな」
「裁きをどうするか」
「そのことでな」
「わかりました、私も今からオシリス様の下に向かいますので」
 ウプウアウトはそれではと応えた。
「共に行きましょう」
「そなたはそなたでだな」
「私の役目はオシリス様の護衛です」
 犬の姿をした紙は真面目な顔と声で答えた。
「ですから」
「それ故にだな」
「実は用足しに出ていましたが」
「それも終わってか」
「はい」
 それでというのだ。
「これより戻ります」
「そうするか、では行こう」
「オシリス様の下に」
 こう言ってだった。
 ウプウアヌトはアヌビスと共にオシリスの下に向かった、そのうえで彼の部屋の前でじっと座って彼の護衛を務めた。
 彼は兎角真面目であった、それでだった。
 その姿を見てだ、オシリスは自身の妻であるイシスに言った。
「ウプウアウトにはいつも感謝している」
「常に護ってくれるので」
「私のいる場所に常にいてくれてな」
 妻に微笑んで話した。
「非常にだ」
「感謝されていますね」
「そうだ、だからな」
 ここでだ、オシリスは言うのだった。
「実は考えがあるのだ」
「といいますと」
「あの者に別の姿になることも許そうと思う」
「別の姿に」
「犬の姿だがな」 
 彼のその姿のことを話した。
「しかしな」
「その他の姿にもですか」
「なることをな」
「許されますか」
「そうしようと思うがどうだ」
「いいかと」
 笑顔でだ、イシスはオシリスに答えた。
「彼にはそれだけの功績があります」
「そうだな、そしてだ」
「これからもですね」
「私の傍にいてもらう」
「そうしてもらいますね」
「これからもな」
 こう言ってだった。
 オシリスはウプウアウトに別の姿になることを許した、その上で冥界の神の玉座に座る地震の前に控える彼に尋ねた。
「それでどの姿になりたいか」
「この犬の姿と、です」
 ウプウアウトはオシリスに畏まって答えた。
「兵の姿になりたいです」
「兵のか」
「私の役目はオシリス様をお護りすることなので」
 それ故にというのだ。 
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