アンチへの対処
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第三章
拡声器を使ってだ、大音声で言い出した。
「俺達主役だぞ!」
「お前等モブとは違うんだぞ!」
「長期連載作品の主人公だったんだぞ!」
「しかも正義の味方だぞ!」
「雑魚共俺達を好きになれ!」
「馬鹿共調子に乗ってんじゃねえぞ!」
こう叫ぶのだった、しかも二人で。
「いつもいつもネットで悪口書きやがって」
「見てるから覚悟しろよ!」
「悪口書いた奴に迷惑メール送ってやるからな!」
「ウィルスばら撒くぞ!」
「わかったら俺達を応援しろ!」
「モブは黙ってそうしろ!」
「うるせーー馬鹿」
喚く二人に仕事帰りに橋を通りかかった印章店勤務の若い兄ちゃんが言った。
「そんなのだから嫌われるんだろうな」
「ああん、何言ってんだ兄ちゃん」
「名前もねえモブが偉そうに言うなよ」
「主役様にタテつこうってのか?」
「手前の彼女さんに手前の浮気写真捏造したの送るぞ」
「俺そんなことしないからな」
兄ちゃんはきっぱりと言った。
「浮気なんてな」
「けっ、真面目ちゃんがよ」
「男は何人何十人とやってナンボだろ」
「俺達まだ経験ないけれどな」
「将来はエロゲの主人公みたいになるぞ」
「うわ、最低」
今度は制服姿の女子高生がドン引きして言った。
「本当にこいつ等ないわ」
「そうよね、最低よねこいつ等」
その女子高生と一緒にいた同じ制服の娘も言ってきた。
「何もかもが」
「早く死ねばいいのに」
「本当にね」
「うっせぇブス!」
「手前等さっさとドキュンに騙されて付き合って痛い目見ろ!」
「何なら手前度のスマホにウマバエの画像送るぞ!」
「それか家に不幸の手紙送るぞ!」
二人は変身した姿でこめかみに青筋を立てて右手の中指を突き立てて言い返した、それも二人並んでだった。
「お前等もモブだろうが!」
「モブが偉そうにすんじゃねえ!」
「何度も言うが俺達主役なんだぞ!」
「星河の覇皇の八条さんや夢幻水滸伝の綾乃さん達と同じだぞ!」
「何でそれでバッシングしかねえんだ!」
「ふざけんじゃねえぞ!」
「あのな、お前等」
今度は道頓堀のすぐ傍に事務所がある大手芸能事務所所属の売り出し中の若手芸人が言ってきた。それも呆れた顔で。
「好かれたいならちゃんとせえ」
「ちゃんとって何だろ」
「手前売れてるからっていい気になるなよ」
「売れてても作中じゃモブなんだよ」
「所詮主役じゃねえんだよ」
「その意識があかんのや」
芸人はきっぱりと言い切った。
「昭和帝のお言葉思い出せ」
「ああ、あれだな」
先程の兄ちゃんが応えた。
「雑草という草はない」
「はい、そうです」
芸人はその通りだと答えた。
「めっちゃええ言葉ですね」
「流石昭和帝だよな」
「そうですよね」
「どの草にも名前があって役割がある」
「そやから雑草って草はないって言われました」
「いや、稀代の賢君だよ」
「素晴らしい方でしたわ」
芸人は昭和帝への敬愛を心から言った、そして女子高生二人もその話を聞いて自分達のスマートフォンで昭和帝のことを調べて言った。
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