高卒の知将
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第一章
高卒の知将
野村克也は知将である、だが。
「あれっ、監督は高校を卒業されて」
「ひっそりと南海に入ったんや」
野村はとある若いファンに笑って話した。
「そうしたんや」
「そうだったんですね」
「自分二十代やな」
「二十四です」
「岩隈と同じ歳やな」
今監督を務めている楽天のエースである彼と、というのだ。
「それやろ知らへんな、わしの昔は」
「高校を卒業されて」
「南海に入ってな」
「今に至るんですね」
「そや、ほんまな」
こう話すのだった。
「長かったわ」
「今に至るまで」
「そやった、しかし自分わしを大卒やと思ってたか」
「知将と言われてるんで」
「知将かどうかは学歴で決まらんからな」
野村はこのことが真顔で話した。
「データと分析そして采配や」
「そうしたもので決まりますか」
「わしもそうやし森もやろば」
「西武で監督だった」
「森もな」
彼もというのだ。
「高卒やぞ」
「そういえばそうでしたね」
「頭のええ悪いは学歴では決まらへん」
「では何で決まるかというと」
「今わしが言うた通りや」
まさにというのだ。
「ものを知っててそれを上手に応用する」
「知将はそうであって」
「頭がええっていうのもな」
「そういうことですね」
「若し学歴で知将になるなら」
そうであるならというのだ。
「アメリカのスタンフォードから連れて来るか?」
「東大でなくて」
「野球はやっぱりアメリカやからな」
「そうなりますか」
「そや、しかしスタンフォードから監督呼んでもわしみたいに戦えるか」
それはというのだ。
「無理やろ」
「そうですね」
「そや、野球も何でも学歴では決まらんわ」
野村は若いファンに笑って言った、そのファンは成程と頷き以後学歴で人を判断することはしなくなった。それは当然野球も同じで。
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