リュカ伝の外伝
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お金に罪は無い!
(グランバニア王都:西中央地区・アパパホテル)
ザルツSIDE
生まれて初めての疲労感に私は浸る。
数十分前まで私は、私の彼女である幼い頃から付き合っているメリーアン・モルトと男女の秘め事に励んでいた。
出会ってから10年以上にも及ぶ仲であるのだが、早過ぎた出会いの為だろう……我々には口吻を楽しむ時間も必要としていなかった……私の方がそんな気になっていただけではあるのだが。
しかし今日に限っては違う。
偶然の事でしかないのだが、私自身の過去の過ちによる些かのセンチメンタルな状況で、彼女の心に決意の火を点した状態になった。
その結果……私は人生で初の男女同伴用の宿泊及び休憩施設に利用目的で入店。
施設内個室のベッドの上で衣類を纏わず仰向けにて放心状態……
そんな私の右側には、私の二の腕を枕代わりにし、尚且つ私の身体に抱き付く彼女。
当然の事ではあるのだが、そろって裸……全裸である事は主張しておこう。
付き合いの長さで解るだろうが、お互いに裸を見た事は多数回に及んで経験がある。
仮に現状の様な状態になる直前の昨日に、我々がお互いの全裸を目の当たりにする機会があったとしても、それは何時もの事と感じて性的な興奮をしてるとは思えない。
だが今日は……と言うか、今は事情が違う。
まるで熟れた成熟男性の様に徒労感を装い室内の天井を眺め続けているが、私の右頬に当たる彼女からの視線に目を合わせてしまえば、その時は私の中に存在している男性的思考回路が暴走を始め、身体の疲れよりも自らの快楽を求める行動に突き進む事だろう。
だが……世の中とは自分の思い通りに行く事が低確率である。
この行為の経験値の低さを悟られたくない私とは打って変わって、本日中……と言うか今すぐに熟練選手に成長したい私の彼女は、天井から目を離さない私の顔を自身の両手で掴むと、無理矢理に覗き込んで再三唇を重ねてくる。
すると勝手に反応する私の……男の……部位……が……
ザルツSIDE END
(グランバニア王都:西中央地区・アパパホテル)
メリーアンSIDE
誰にも異論は言わせない!
私の初体験は今日である!
今この場にて隣で裸の男が私の彼氏であり正真正銘の初体験だ!
だって気持ち良さが違うもの!
だって満足感が違うもの!
だって……大好きなんだもの!
私の彼は何時も小難しい事を考えながら生活をしている。
だけど私は幼馴染み……今の彼が難しい事を考えてないのは解っている。
私との関係が進展(と表現して良いのか?)して恥ずかしがっているのだ。
昔から好きな絵の事や、最近になって始めた写真の事を考えてるフリをして私の事を……それも先程までしてたHの事を考えているんだ。
このラブホに入って既に3時間は経過っているだろう。
当然その間は勃起っていた……彼の方だけ。
私はそれを鎮める行為をする素振りの追加要求をしていたので、疲れという意味では我々はお互い様な状態でしょう(笑)
結果……本日は随分な時間が経過しており、このままこのラブホに泊まって行く選択肢もあるのかも?
そうすれば、まだ続きが発生する事も考えられるしぃ……
と言ったら、
「いやいやいや……流石にお腹空いたよ。何か食べにここからは出よう」
と彼らしい答えが戻ってくる。
私も詳しい訳では無いのだが、こう言う場所って飲食物を注文出来るのでは?
王都内のラブホの位置を事前に教えてくれて陛下……では無く、プーサン社長はそう言っていたけど……ってか、何であの人詳しいの?
でもそんな知識を披露する必要も無いだろうし、今日はシャワーを浴びてここから出る準備を……
時間短縮の為に一緒にシャワーを浴びる提案をしたけど、
「そ、そんなコトしたら、時間短縮どころか……もっと深みに嵌まっちゃうよ!」
ってダメ出しされたわ。深みにハメて欲しいのに。
(グランバニア王都:西中央地区)
お互い別々に身を清め衣服を纏ったら、ラブホの受付で精算。
なんかやっぱり気恥ずかしいわ……
この精算システムは如何にかならないモノなのかしらね?
そしてまた彼の魔道車に乗って飲食店を探す。
この西中央地区は、どちらかというと工業地帯なので飲食店を探すのには不向きみたいだわ。
仕方ないから北回りにこの地区を抜けて、大人なムードが漂いまくる港地区へとご自慢のAstlerを走らせる。
私達は既に事(大人の情事的な)を済ませてきてるので、他の方々とは違うのだが、この辺のお店を利用している……もしくは利用しようとしている男女はムードを何よりも大切にしている為、多少の高さ(金銭的な意味)を気にしないで店選びをしている。
だけど私達は違い、今の空腹を解消する事だけにスポットが当たっている。
港に面した大きめの道沿いに彼は魔道車を駐めて、そこから少し路地に入り安めの店を探し始める。
ザルツの乗っている魔道車が、こう言う場面を想定しての設計なのか、背の高いビルが建ち並ぶ細い裏路地でも、あの魔道車なら難なく入れるとは思ったけど、停車させておく事は私には解らないから、今のところは表通りに駐める方向性でいた方が良いって、彼の通った教習所の先生が言ってたそうだ。
そんなワケで見つけたお店が、ラーメン屋のチェーン店『スマキヤ』って店だ。
この店を選んだ理由は……値段だ。
空腹を満たすのが目的だから、安ければ何処でも良い。
もう既に時は21時を指しており、22時頃がラストオーダーのこの店も、そんなに混雑はして無かった。
早々に座れて、即座に食べれて、速攻で店を出れた私等は再度彼の魔道車に乗って自宅方面へと……
別に今まで互いの部屋で寝泊まりした事は何度もあったワケだし、私の親もそれは解っていてザルツと一緒だったら何も気にしないから、今日は彼の部屋で寝ようと思ってたけど、寧ろ今日の方がダメって事で、私達は互いの家に帰る事と決定する。
明日は日曜日なのだから今からの夜更かし(H+Hなオールでも!)子供じゃぁ無いんだからねぇ!
「さ、流石に家族に声が!!」
しかし真面目男ザルツちゃんからのお応え。
しかも明日はルディー君と互いの車を見せ合う約束をしているそうだ。
アイツの魔道車かぁ……
サラボナ通商連合のルドマン最高商評議会議長の孫だから、金だけは持ち合わせがあるらしい。気になるわぁ……
「アイツ……何時も自分で言ってるけど、お金だけは持ってるみたいだからね。どんな魔道車なんだろう? 私も行って良い?」
「駄目なワケないだろ。明日は一緒にGEOのビルへ互いの車で集合なんだ。私はその事も楽しみにしているんだよ」
「……? 何か楽しみがある?」
「えっ……!? だってプリ・ピーが練習したりしてる所属事務所の建物に入れるんだよ! た、楽しみじゃないかい!?」
「あっ……成る程ね!」
「ま、まぁ君最近何度か訪来しているんだったね……」
「し、仕事帰りに偶然プーサン社長や、その奥様に出会った事があってからね」
「う、羨ましいよ……」
「でもそんな些細な理由を使って、プリ・ピーやGEOの社員さん等に迷惑は掛けられないでしょ」
「それは……そうだね」
「ルディー君みたいに自由奔放な性格でも無い限り、そんなに頻繁にGEOに出入りは出来ないし、彼氏だからって私もアナタを連れては行けないわ」
「それも……確かに!」
「……でも、そう考えると、ルディー君って凄いわね」
「何がだい?」
プーサン社長と自身の家庭の事は秘密にしなきゃならないのに、気にもせず(気にしてはいるのかしら?)プーサン社長の下に遊びに行っている。
でも二人の正体を知らないザルツに言うワケにもいかないわねぇ……しまったわ。私自らが言い出した話題なのに、これ以上は話を広げられない!
「何が凄いんだい??」
「あ……えっ~とね……その……い、何時も実際にお金を沢山持ってるじゃん!」
「そうだね。何だか何時も奢ってもらってるね」
「まぁ本人が稼いだ金じゃぁ無いんだろうけど、ご実家……特に何時も言ってる『お祖父様』は何をなさって財を築き上げたのかしらね?」
「言われれば……そうだね」
「言える事だったら彼の事だから自慢してそうだし……他人に言えない家庭なのかしら?」
ご、ゴメンねルディー君。知ってるのにアナタの家庭を詮索させてるわ。
「彼の故郷自慢は凄いからね。何時もは自己主張が激しくは無いんだけど、サラボナ等を話題に出すと色々と自慢……とは少し違うけど話題を広げてくるからね」
自慢したくてウズウズしてるのが窺える。
「これは私の失礼な推測なんだけど……」
「何かしら? 気になるわねぇ」
何時も何か難しく物事を考えるザルツの、良いのか悪いのか判らない癖が出たわ。
「もしかしてなんだけども、彼の『お祖父様』は昔……と言っても彼や彼のご両親が生まれる前とかに、何らかの大きな犯罪を犯してその時に莫大な財を築き上げての今なんじゃ無いのかな? そう考えれば……何となく辻褄が合う気がするんだが?」
「そうなるの?」
「うん。だって彼はウルフ・アレフガルド宰相閣下と知己を得ているんだ。一体どんな流れで宰相閣下と知己を得られるんだろうと、以前から思っていたんだけど……もしかしたらあの性格の悪い宰相閣下が、過去(歴史的な意味合いを含めて)での彼の『お祖父様』が犯した(達成してしまった)大犯罪の証拠等を掴み、あの人の懐を潤わす結果になったんでは……って考えたんだ」
「い、色々と考えるわねぇ……」
当然ながら全然的外れだけど、確かにそんな事が起こっていれば辻褄は合う様に聞こえるわ。
う~ん……私の彼氏は頭も良い!
「でも……それは無いと私は思う」
「……め、珍しく言い切ったね? 何か私の推理に大きな欠陥が見受けられたかな?」
そ、そうでは……無いのよねぇ(困)
「え~とねぇ……それはねぇ……!! 社t……ゲフンゲフン!! それはね、国王陛下が居るからよ!!」
「……陛下が? 如何言う??」
「私は直接会った事無いから、ザルツからの又聞きでしか宰相閣下を評価出来ないけど、何にせよあの男を登用されたのはリュケイロム陛下なワケだし、陛下があの男如きに騙されるとは到底思えないワケだし……そんな大昔(もしかしたら最近)の犯罪者を脅して金儲けする様な頭は良いのだろうけど、小物感が半端ない奴を偉くするとは絶対に思えないのよ! だから今回のザルツの推理は絶対に違うと思うわ」
「……成る程なぁ!」
(グランバニア王都:東中央地区)
気が付くとザルツの運転は私達が住んでいる東中央地区に到達していた。
「まぁなんやかんや言ってるけどもルディー君のご家庭は金持ちなんだって事だけが解っていれば良いみたいだと思うわよ」
「ん……うん……」
「それに例えザルツの推理が正しくても、彼が使いまくるお金に罪は無いワケじゃない? 私達友達は、友達関係が崩れない程度に彼のお財布に縋らせて頂きましょうよ」
「な、何だか情けないなぁ……」
「でも彼自身が『お金はあるからぁ』って支払い等を買って出てくれるワケだし、ある程度はよろしくお願い致しちゃいましょ……ねっ!」
「そ、そうするしか無いのかなぁ……???」
「それよりも……私の家は直ぐそこだし、また明日迎えに来てよ。彼の魔道車を見るのが楽しみだわ!」
「如何なのかは判らないけど、私のAstlerなんかより格段に高級魔道車だよ! だから私は、思い出という付属品で対抗するんだ」
「思い出ぇ!? 昨日今日納車されたこの魔道車に思い出ぇ??」
「彼は……どんなに頑張っても、そこ……助手席に座って一緒にドライブが出来てしまう様な相手(女性、しかも彼女限定)が居ない。この短時間で出来たとしても、私と君くらいの仲には到底なれない! それを前面に押して勝負に出る!」
「じゃぁ負ける要素は微塵も無いわね! だって今日はその思い出に大きな大きな追加があるのだからね♥」
メリーアンSIDE END
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