スーパーヒーロー戦記
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第10話 迫り来る悪魔達。炸裂!ライダーキック
「今回も収穫はなし……ですね」
太平洋上を飛行するジェットビートル。その中にはそれを操縦するハヤタ隊員とその隣には人間状態のユーノが座っていた。
時空管理局と協力体制を取ったお陰で3つのジュエルシードは易々と見つかった。だが、それ以降のジュエルシードが中々に見つからないのだ。
今手元にあるジュエルシードは7つ。残りはまだ16個も世界中に散らばっている事になる。早く見つけねば大惨事になる事は間違いない。
「そろそろなのはや甲児君達に連絡を入れた方が良いかもね」
「そうですね。やっぱりあの二人が居るのと居ないのとじゃ違いますしね。まぁ……僕としては余りあの二人を巻き込みたくないって思いなんですけど」
俯きながらユーノが呟いた。彼なりの責任があるのだろう。
本来なのはも甲児もこのジュエルシード関連の事で巻き込まれる事がなかった存在なのだ。
だが、自分が関わってしまったが為に今回の事件に巻き込まれてしまったのだ。それが今でもユーノの中で罪悪感として渦巻いていたのだ。
そんなユーノの肩をハヤタ隊員がそっと叩いた。
「気にする必要はないよ。あの二人だって君のせいだって思っている訳じゃない。君やこの世界を助けたいと言う気持ちで動いているんだ。かく言う僕だって同じさ」
「有難う御座います。ハヤタさん」
やはりハヤタ隊員は大人であった。どんな時でも冷静に対処しチームを導いてくれている。今ではこのメンバーのチームリーダー的存在でもあるのだ。
「さぁ、一旦帰ろう。これ以上飛び回ってても燃料の無駄遣いになるだけだろうし」
「そうですね」
上空で旋回し、ジェットビートルはある場所に向かった。それは太平洋上に忽然とその姿を現している巨大な時空穴であった。
ビートルがその穴の中に飛び込んでいく。その先にあったのは次元航行船アースラであった。異世界の技術の結晶であるアースラはそうそう地上界に姿を表す訳にはいかないのだ。その技術を巡って争いが起こる危険性を回避する為だ。
「こちらハヤタ。これより着艦する。ハッチを開いてくれ」
『了解、後部ハッチから着艦して下さい』
オペレーターとの会話を終えた後、アースラの後部ハッチが開く。其処へビートルが向かいアースラ艦内に着艦した。
着艦を終えるとハヤタとユーノはビートルを降り、真っ直ぐそのままブリッジへと向かった。
ブリッジには今数名のスタッフが計器に目を光らせている。そして、そのブリッジの中央にある座席には艦長であるリンディが座っていた。
「お疲れ様。ユーノ君、ハヤタさん。今回はどうでした?」
「いいや、全然見当たらないね。高性能の探索装置を使ってはいるんだけど中々見つからない」
「そうですか、もしかしたら既に誰かが見つけて回収していると言う線もあるかも知れませんね」
リンディが顎に手を当てながらそう呟く。もしそうだとしたら一体誰が回収をしたと言うのだろうか?
ジュエルシードはとても危険な存在なのは明白な事だ。だが、その力は悪の道を行く者達にとってはとても魅力的な代物となる。
何せ単体でも膨大なエネルギーを得られる代物なのだ。それを兵器に転用出来れば恐ろしい兵器となりえる。
それだけは何としても阻止せねばならないのだ。
***
ショッカーの追撃から逃れたなのはと緑川博士の二人は今荒廃した廃工場の中に隠れていた。本郷の導きで此処に隠れるように言われたのだ。
「大丈夫ですか? 緑川さん」
「あぁ、それより済まなかったね。何の関係もない君を巻き込んでしまって」
緑川博士が謝罪をした。彼女もまたショッカーの姿を見てしまった。ショッカーは自分達を見た者を決して生かしてはおかない。彼女もまたショッカーに狙われる存在となってしまったのだ。
それが緑川博士に自責の念として圧し掛かってきた。
だが、なのはは首を横に振った。
「気にしないで下さい。私も本郷さんを探して此処に来たんですし。それにショッカーとは前にも会った事があるんです」
「そう言えば、君と本郷君は何処で知りあったんだい?」
「私がうんと小さい頃に、お父さんが仕事で大怪我して動けない時があったんです……」
それは、なのはがまだ小学生に入る前辺りの頃。
なのはの父高町士郎はその時行っていた仕事が元で大怪我を負ってしまい寝たきり状態となってしまったのだ。
そんな父の看病を母桃子が行い、店の切り盛りを兄の恭也と姉の美由紀の二人で行っていたのだ。だが、そんな中幼いなのはは家の中で一人寂しくしているのであった。
まだ幼い彼女の面倒を見ている暇がなかった為だ。その為とても寂しい思いをしていた時期があったのだ。
そんな時であった。なのはが家の前の玄関の所で座り込んでいた時にバイクと共に一人の青年が現れたのだ。
「やぁ、驚かせたかな?」
「えっと、貴方は?」
「僕は本郷猛。君のお兄さんに頼まれてね。君が元気にしているか見て来て欲しいって頼まれたのさ」
それが彼女と本郷猛の出会いであった。
また、これは聞いた話だったのだが、喫茶翠屋の方には本郷の知り合いで同じ様に喫茶店を経営している立花籐兵衛と言う人の協力のお陰で何とか盛り返したそうだ。
それで、なのはは本郷と何気ない話をしたり、一緒に遊んで貰う事で寂しさから開放されたのだ。この二人がいたお陰で今の翠屋があり、高町家があるのだ。
「だから、本郷さんが行方不明って聞いたら居ても立ってもいられなくて……」
「そうだったのか…すまない。本郷君を巻き込んでしまったのはワシなんじゃ。ショッカーの怪人に相応しい人材を探せと命じられ、やらない場合は娘の命がないと言われ、それで仕方なく……」
そう言った所で緑川博士は泣き崩れた。大事な娘の命とは言えそれだけの為に一人の青年の人生を捻じ曲げて良い訳などない。その思いから緑川博士は涙を流していたのだ。
「あの、ちょっと水汲んできますね」
そんな緑川博士を気遣ってかなのはは少し離れた場所にある水道へと向かった。コップに水を注ぎながらなのははふと窓の外に映る青空を見上げた。
「本郷さん、どうしてるんだろうなぁ?」
***
此処は喫茶店アミーゴ。
立花籐兵衛が経営する喫茶店で彼の煎れるコーヒーがかなりの人気で毎日それを求めて訪れる遠方からの客が多い。そしてこの立花籐兵衛だが、彼自身もかつてはライダーであり、今は多くの若手ライダーのコーチを行っている。勿論本郷猛もその中の一人なのだ。
「本郷が行方不明になってから既に一週間か……一体何処に消えちまったんだアイツ?」
新聞の見出しには今でも行方不明者続出と言う記事が載せられている。そして、その中の名簿にはあの本郷猛の名前も載っていたのだ。
それが立花の中で心配が更に募っていた。
そんな時、勢い良く扉を開く音が聞こえた。見ると其処には慌てた顔をした本郷が居た。
「ほ、本郷! お前今まで何処に行ってたんだ!? いきなり行方不明になったもんだからこちとら偉く心配したんだぞ!」
「すみません、おやっさん。それより今は急いでいるんです」
「お、おい本郷! 待てよ!!」
一礼して逃げる様に去ろうとした本郷の肩を立花が掴んだ。
「何も教えずに行くなんざ水臭いじゃねぇか。俺はお前のコーチなんだぞ。ちったぁ話してくれても良いんじゃねぇのか?」
「すみませんおやっさん。一通り片付いたら全て説明します。ですが今は……もし此処に恭也達や、緑川博士の娘さんが訪れたら、伝言をお願い出来ますか」
「分かった。本郷……理由は分からんが何時でも俺は力になってやるからな!」
「有難う御座います。おやっさん」
そう言い残して本郷はアミーゴを出て行った。
「やれやれ、偉い事を引き受けちまったもんだなぁ」
そう呟きながら立花はパイプを吹かす。するとまたしても扉を勢い良く開いた。
其処には先ほど本郷が伝言を頼んだ高町恭也達と、そして緑川博士の一人娘のルリ子が来ていたのだ。
「お久しぶりです。立花さん!」
「おぉ! 恭也に美由紀ちゃん。それにルリ子ちゃんまで。今日はやけに来客が多いなぁ~」
「立花さん、本郷さんが行方不明と聞いて飛んできました!」
美由紀が事の経緯を話す。本郷猛が行方不明なのは既に殆どの者が知っている事なのだ。故に知り合いの二人が飛んできたと言う事になる。
「あぁ、それなんだがなぁ。さっき本郷から言伝を頼まれてな。ルリ子ちゃん。君のお父さんが見つかったようだ」
「本当ですか?」
途端にルリ子の顔に笑顔が戻る。彼女は数週間前に父が行方不明となり心配の余り元気がなくなっていたのだ。そんな彼女の顔に元気が戻ってきたのを見て立花も恭也達も一先ずホッとする。
「それで、本郷も其処に居るんですか?」
「あぁ、場所はこの紙切れが指してるところだ」
「成る程、分かりました!」
「ワシはルリ子さんを連れて行く。君達も乗って行きなさい」
「いえ、自分の足で行きますんで」
立花の申し出を断り恭也と美由紀は置いてあったバイクに跨る。立花もまたルリ子を連れて自前の車に乗り込み本郷の記した場所へ向かう。
***
その頃、本郷は一人廃工場へ向かっていた。怪人達との戦闘を終えて急ぎ其処に向かっていたのだ。
「なのはちゃん、緑川博士。何事も無ければ良いが…」
本郷の胸中は複雑であった。何か嫌な予感がする。あの程度であの蜘蛛男が死んだとは思えないのだ。
もしかしたら既に緑川博士の隠れている場所に向かったのでは?
そんな予感がしたのだ。
「急ごう!」
バイクのアクセルレバーを思い切り回す。バイクが唸りを上げて速度を上げる。本郷の胸中を表すかの様に…
その頃、廃工場の屋根の上には本郷の不安の種である蜘蛛男が一足先に辿り着いていた。
だが、その姿は異様さを増していた。
手は四本に増し牙は更に鋭くなり、体からは体毛が生えていた。
明らかに蜘蛛を思わせる姿であった。
「裏切り者は…殺す!」
蜘蛛男が唸るように呟く。
彼が戦闘員達の手引きによりショッカー本部へと運ばれたのは数時間前に遡る。
「しくじったな蜘蛛男。ショッカーは小さな失敗も許さない。貴様は廃棄処分だ!」
「お待ち下さいショッカー首領! 今一度私に機会をお与え下さい。必ずや緑川博士を殺し、本郷猛を連れ戻して参ります。何卒、御慈悲を!」
蜘蛛男は哀願した。その願いを聞き入れたのか、蜘蛛男の横になっている手術台に向かい幾本もの手術用アームが向かってきた。それを見た蜘蛛男は安堵する。
「あぁ、ありがたき幸せ。必ずやショッカー首領のご期待に応えて見せます!」
「良くぞ言った。それともう一つ、貴様の姿を見たあの小娘も殺せ! あの小娘は只ならぬ存在だ。必ずや我等ショッカーの障害となるやも知れぬ。手段は問わん!」
「お任せ下さい。ショッカー首領!」
「ショッカー首領のご期待に応える為、お前等には死んで貰う!」
そう言い、蜘蛛男の口から太い糸が垂れ下がってきた。それが、屋根の中に入り廃工場の中へ入っていく。
その頃、水を汲んできたなのはがコップを緑川博士に渡した。
渡された水を飲み干すと緑川博士はひと心地つけたのかほっと溜息を吐く。
「有難う、少し落ち着いたよ」
「良かった…それにしても、本郷さん遅いなぁ」
チラリと廃工場の外に繋がる扉を見てなのはが呟いた。
すると、外の方でバイクの止まる音が聞こえた。
「本郷さん? ちょっと見てきますね」
「あぁ、頼む」
緑川博士を残しなのはは廃工場の入り口前に立つ。
そっと扉を開き外を見た。其処に居たのは本郷であった。
「や、誰にも見つかってないかい?」
「はい、緑川さんも中に居ます」
「良かった」
どうやら取り越し苦労だったようだ。
安堵しながら廃工場の中へ入る二人。
だが、その時中から緑川博士の声が聞こえてきた。
唯の声じゃない。うめき声だ。とても苦しそうな声が聞こえてきたのだ。
「緑川博士!」
「そんな、緑川さん!」
急ぎ駆けつけた本郷が見たのは太い蜘蛛の糸に絡まれて首を絞められている緑川博士の姿があったのだ。
「み、緑川博士!」
「ほ、本郷君!」
急ぎ駆けつけた本郷が蜘蛛の糸を引き剥がそうと力を込める。だが、その糸は思ったよりも頑丈で中々千切れない。
「緑川さん! しっかりして下さい!」
なのはも必死に糸を引き剥がそうと糸を引っ張った。
だが、改造された本郷でも千切れないのに子供であるなのはに千切れる筈もない。
逆に反動で後方にこけてしまった。
その丁度直後、反対側の扉を開いて誰かがやってきた。
やってきたのは緑川博士の一人娘であるルリ子であった。
ルリ子が見たのは奇妙な糸で雁字搦めにされた父を知り合いの本郷が絞め殺しているように見える場面であった。
「な、何してるの! やめて! お父様を殺す気なの?」
「違う、違うんだ!」
バッと二人の間に割って入ったルリ子が父を抱きかかえる。
だが、その時には既に遅く、緑川博士は蜘蛛の糸に首を絞められて絶命してしまった。
「あぁ、お父様…」
「み、緑川博士…」
息を引き取った緑川博士を見て二人は悲しみにくれた。そんなルリ子が猛に憎しみの目線を向けた。
「人殺し! お父様を返して!」
「ま、待って下さい! 本郷さんは緑川さんを殺してないんです! 助けようとしてたんですよ!」
「貴方は黙ってて頂戴!」
弁明しようとしたなのはを黙らせてルリ子は本郷を睨んだ。
その目は愛する父を奪われた憎しみの炎で燃え上がっていた。
「聞いてくれ、ルリ子さん! 僕は殺してない。助けようとしたんだ!」
「嘘よ! 私見たわ! 貴方がその手で緑川博士を殺す場面をちゃんと見たのよ! 言い逃れは出来ないわよ!」
「本当なんだ。信じてくれ!」
必死に言い合いをする本郷とルリ子。
その時であった。
「猛!」
「本郷!」
声と共に立花と恭也、そして美由紀が入ってきた。
場は更に困惑を極めた。
「おやっさん、それに恭也に美由紀まで」
「本郷…って、何でなのはも此処に居るんだ?」
「お、お兄ちゃんに、お姉ちゃん!」
一気に狭い廃工場の場は壮絶となった。
ルリ子は父緑川博士を本郷に殺されたと思っており、本郷は違うと叫び、なのはは兄恭也と姉美由紀の二人に何故此処に居るのかと問い詰められている現状であった。
その中、立花だけは場の空気に着いて行けずどうしたら良いのかと悩んでいた。
その時、本郷は背後から誰かの視線を感じ取った。
「危ない、ルリ子さん!」
「きゃぁっ!」
咄嗟に本郷はルリ子を突き飛ばした。
その直後、緑川博士の胸には一本の毒針が突き刺さっていた。
その突き刺さった毒針を中心に緑川博士の体が徐々に溶け出し泡となって消えてしまった。
「な、何だ今のは?」
「皆、すぐに此処から逃げるんだ! 此処に居たら危ない!」
「待て本郷! 今のは何だ? 何で人が溶け出したんだ?」
「恭也。詳しい事は後で話す。だから今は逃げてくれ!」
「…分かった」
本郷の顔を見てか恭也は頷く。
そして一同は廃工場の外へ出て行った。
だが、それを出迎えたのは大勢の戦闘員と改造された蜘蛛男であった。
「逃がさんぞ本郷猛、緑川博士は殺した、後は此処に居る奴等を皆殺しにするだけだ!」
「いかん、恭也! 皆を連れて此処から逃げろ!」
「お前はどうするんだ本郷!?」
「行け! 早く!!」
怒号を上げる本郷。が、そんな皆の周囲を戦闘員達が取り囲む。
「我等ショッカーの姿を見た者を生かしては返さん! この場で全員死んで貰うぞ!」
「ショッカーだと? 何故お前たちは俺達を殺そうとするんだ?」
「我等の野望の妨げになるものは誰であろうと容赦せん! 掛かれぇ!」
蜘蛛男の命を受けて戦闘員達が一斉に襲い掛かって来た。だが、それらを恭也と美由紀が次々と蹴散らしていく。
「舐めるなよ! こんな物で倒される程俺達は柔な鍛え方はしてない!」
「そうそう、伊達にお兄ちゃんやお父さんにしごかれてる訳じゃないんだからねぇ」
「お、おのれぇ! こうなれば!」
蜘蛛男が飛翔すると、蜘蛛の糸を吐き出した。
その糸の放った先にはルリ子となのはが居た。
「きゃぁ!」
「しまった! ルリ子ちゃん!」
「なのは!」
立花と恭也が叫ぶなか、蜘蛛男に連れ去られる二人。
「させるか!」
そんな蜘蛛男の背中にしがみつく本郷。
「ええぃ、離せ! この二人はまず先に抹殺する命令が下されているのだ!」
「そうはさせん! これ以上貴様等ショッカーの犠牲者を出して溜まるか!」
(ショッカーの犠牲者? もしかして猛さんは…)
ルリ子が猛を見る。
其処には緑川博士を殺した人間の顔とは違い熱い炎の様な目をした本郷が居た。
「邪魔だ! 捕獲が命令だったが邪魔するなら…死ねぃ!」
「うおっ!」
上空を飛翔していた蜘蛛男にしがみついていた本郷を無理やり突き落とす。
飛べない本郷にとって上空約40メートルから落ちればひとたまりも無い。
「本郷さぁん!」
なのはが叫ぶ。だが、もう間に合わない。
後に残るのはトマトの様に潰れた本郷の体だけ。
そう思えた。だが、その時本郷のベルトのバックルが落下の際に生じた風を一身に受けた。
すると本郷の姿がみるみる内に緑の仮面を被ったヒーローへと姿を変えたのだ。
「とぉっ!」
地面に着地した仮面のヒーローはすぐさま飛翔して蜘蛛男の目前までやってきた。
「何!」
「二人は返して貰うぞ!」
言うなり二人を無理やり手元に取り返し蜘蛛男を蹴り落とした。
蹴られた蜘蛛男は上空で回転して態勢を立て直す。
その目の前に仮面のヒーローは舞い降りた。
「現れたな、仮面ライダー!」
「ショッカー、貴様等の野望は俺が打ち砕く!」
拳を握り締めて仮面ライダーが言う。
「ほざけ! 今の俺は改造手術によりかつての以上の力を身につけたのだ。死ねぃ! 仮面ライダー!!」
蜘蛛男がそう言い放つと口から蜘蛛の糸を吐き出してきた。
ライダーはそれを飛翔してかわす。そして、後方に回りこもうとした時、何と蜘蛛男の4本の手からも蜘蛛の糸が出てきたのだ。
「何!」
蜘蛛の糸に絡め取られて動きを封じられた仮面ライダー。
其処へ迫る蜘蛛男。
「勝負ありだ! 死ねぃ!」
鋭く尖った爪の生えた手を振りかざす蜘蛛男。
だが、其処へ桜色の閃光が放たれた。
その閃光はライダーを絡めていた蜘蛛の糸を焼ききっていく。
それを放ったのはデバイスを起動させたなのはであった。
「仮面ライダー! 今の内に!」
「有難う。とぉっ!!」
礼を言い、再び天高く飛び上がった。
そして空中で一回転した後に蜘蛛男に向かい蹴りのフォームを取った。
「ライダーキィィック!!」
仮面ライダーの決め技であるライダーキックが炸裂した。
バッタを元にした改造人間なだけありジャンプ力と脚力が増強されているのだ。
特にキックの威力は凄まじく改造手術を施された蜘蛛男すらも圧倒出来たのだ。
「ぐぎゃああああああああああ! 覚えていろよ仮面ライダー! ショッカーを裏切った者の末路は、死なのだあああああああああああ!」
そう言い残すと蜘蛛男はその場に倒れ、泡となって消え去ってしまった。
消え去った蜘蛛男を見るなのはと仮面ライダー。
「やりましたね」
「あぁ、君の助力のお陰だ。感謝する」
「う、う~~ん」
隣で気を失っていたルリ子が目を覚ました。
仮面ライダーはすぐさま変身を解いてルリ子に近づく。
「ルリ子さん、大丈夫ですか?」
「どうして、私を助けてくれるの? 貴方は父を殺した人間の筈なのに、どうして?」
「ルリ子さん、聞いてくれ。緑川博士を殺したのは僕じゃないんだ」
「見てなさい、本郷猛! 必ず父の仇を討つわ!」
それだけを言い残してルリ子は走り去って行った。
本郷は残念そうに肩を落とした。そんな本郷をなのはが優しく摩ってあげた。
「元気だして下さい本郷さん。きっと何時かルリ子さんの誤解も解けますよ」
「有難う、なのはちゃん。さぁ、帰ろう。おやっさんや恭也達が心配してる筈だ」
バイクに跨りおやっさん達の待つ場所へ帰る本郷となのは。
だが、本郷の胸の内には緑川ルリ子の誤解が解けない事への蟠りで締め付けられていた。
果たして、彼女の誤解が解ける日は何時なのだろうか?
そして、ショッカーの次なる刺客とは一体?
つづく
後書き
次回予告
青年の下には新たな刺客が放たれた。
少女の下には新たな怪獣の姿が…
次回「集いし力」
お楽しみに
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