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スーパーヒーロー戦記

作者:sibugaki
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第7話 バラージの青い瞳

「成る程、バルタン星人の他にギャンドラーと名乗る異星人までもが現れたのか」

前回の科学センターでの戦いの一部始終をムラマツキャップは聞いた。
バルタン星人に続き宇宙を騒がす極悪集団と呼ばれているギャンドラーが地球に襲い掛かってきたのだ。
更に、ギャンドラーはなのはが集めているジュエルシードを狙っているようだ。
目的は分からないがこれから先、恐らくギャンドラーとジュエルシードを巡って激しい戦いが予想されるのは間違いない。

「イデ、科学センターからの検査結果はどうだったか?」
「はい、たった今知らされた情報を元に私自家製の探索装置を開発しています。完成すれば広範囲に渡り探索が出来る筈です」

イデ隊員が喜び勇んで言う。
科学特捜隊の科学分野で秀でたイデだからこそ出来る事だ。
彼の探索装置が完成すればギャンドラーに先立ってジュエルシードの発見、並びに捕獲が可能になる。

「しかし、出来れば捕獲も我々で行えれば良いんだがなぁ」
「残念ですがそれは無理ですね。探索は出来ても捕獲をするには特殊な装置がないと出来ませんからね。それでそれが出来るのはなのはちゃんの持っているレイジングハートしか出来ないんですよ」

流石のイデも其処までは出来ないと言っている。
レイジングハード等のデバイスの解析は科学特捜隊の科学技術でも困難な物でありその為ジュエルシードの捕獲をする為にはなのはの存在が不可欠な物となってしまっている。

「仕方あるまい。イデは引き続き探索装置の完成を急いでくれ給え」
「了解しました」

イデが了解する。


その頃、甲児は科学特捜隊格納庫に来ていた。
彼の前では愛機でもあるマジンガーZが立っている。
現在数名のスタッフによるマジンガーZの整備が行われていた。
前回の戦いでそれ程傷を受けた訳ではないので整備は楽な物であった。
だが、甲児の心境は複雑な物であった。
原因は前回の戦いであった。
飛行するバルタン星人に対しマジンガーは余りにも無力であった。
もし、これから先飛行型の敵が現れたらマジンガーZは間違いなく苦戦を強いられる。
かと言ってなのはでは怪獣と戦うには余りにも力不足であるし、ウルトラマンでは時間制限がある。
何とか打破出来る方法が欲しかった。
その為の相談も兼ねてやってきたのだ。

「幾らなんでも無茶だ。20tはあるマジンガーZを自在に飛ばす飛行ブースターの開発なんて無理に決まってるだろう」
「其処を何とか出来ませんか? 空さえ飛べればマジンガーだって異星人と対抗できるかも知れないんですよ!」
「つってもなぁ。俺等科特隊の科学技術じゃマジンガーの整備だけでもキツイ状況なんだ。その上マジンガーの飛行ブースターの開発なんて無理だ」

返答は悲しい物であった。
現状でマジンガーは飛行出来ない。それを決定付けられてしまったのだ。
マジンガーが飛べない以上飛行型の敵に対しては地上から狙い撃つと言う分の悪い戦いを強いられる事となる。
それを聞いた甲児は不貞腐れながら格納庫を後にした。

「くそっ、このままじゃ俺がなのはちゃんやウルトラマンの足を引っ張る羽目んなっちまう。どうすりゃ良いんだ!」

壁を叩き甲児は悩んだ。やはり空を飛ぶ力が欲しい。
幾ら無敵のマジンガーZでも空中戦と言う穴をもし敵が知ったら其処を重点的に攻めて来るのは明白だ。
そうなる前に何としてもマジンガーを空へ飛べるようにしなければならない。
でなければ、この先マジンガーに待つのは敗北の二文字だけなのだから。


甲児が悩んでいるのと同じ様に、なのはもまた悩んでいた。
自分ではジュエルシードの封印は出来ても決定的なダメージを与える方法がない。
その為甲児のマジンガーZやウルトラマンの助力なしでは物体に憑依したジュエルシードや怪獣に太刀打ちできないのだ。
現在必死に攻撃魔法の練習に励んでいるが中々上手く行かず苦悩の日々が続いている。

「なのは、あんまり自分を責めちゃ駄目だよ」
「うん、でも…私がもっと戦えるようにならなくちゃ皆に助けられてばっかりだし…」

ジュエルシードの封印だけ出来たとしても他の戦闘で戦力にならなければ意味はない。
しかし今のなのはにとって怪獣や機械獣の存在は余りにも強大な存在でもある。
何とか敵に大ダメージを与えられる方法があれば良いのだがその方法が見つからず再び苦悩の日々を送る。
そんな悪循環に似た感情が今、科学特捜隊の中を覆っていた。
その日の夜、なのはは不思議な夢を見た。
砂漠の中にある町。
その町は廃れてしまっており、現在は老人しか居ない。
その町を治めていると思われる一人の美しい女性。
その女性が必死に祈りを捧げている像があった。
その像は何処かウルトラマンに良く似ていた。
そして、そのウルトラマンらしき像の手には青く輝く石が持たれていた。




      ***




「う~ん、変な夢だったなぁ~」

朝、目を覚ましたなのはが目を擦りながらそう言った。
回りを見渡すと其処は普段見慣れた部屋じゃない。
其処は科学特捜隊内に用意された仮眠室だった。
今なのはは科学特捜隊の中で寝泊りしている。
なのはのもう一つの悩みの種であった。
もうかれこれ何日家に帰ってないだろう。
きっと家族は心配している。
一応連絡はしているがその度に家族の心配そうな声が聞こえてくる度になのはは自分が悪い事をしている様な気がしてきた。
早く家に帰りたい。
そんな思いがあった。

「…起きよう」

何時までも暗いままではその日一日が暗くなってしまう。
仕方なく服を着替えて皆の待つメインルームに向かう。
すると其処には既に皆が集まっていた。
そして、イデの顔には物凄い隈が出来上がっていた。

「ど、どうしたんですかイデさん? その顔は」
「やぁなのはちゃん。やっと完成したんだよ! 私お手製のジュエルシード探索装置がね!」

そう言ってイデが机の上に置いたのは大掛かりな装置であった。
幼いなのはにはそれがどんな装置なのかさっぱり分からず首を傾げるばかりであった。

「なのは、この装置凄いよ。レイジングハートや僕の探索能力以上の範囲の探索が出来るんだ。これなら今まで以上にジュエルシードの捜索が容易になる筈だよ」
「本当!」

ユーノが言うのだから間違いはなさそうだ。
そう実感するとなのはの顔にも久しぶりに笑顔が浮かぶ。
ジュエルシードを見つけて封印する事こそ今自分がなすべき事なのだ。
だったらそれに全力を注ごう。
そう割り切るなのはであった。

「そんでよぉイデさん。今どこら辺にその反応はあるんですか?」

甲児が尋ねるのを聞きイデが装置を見る。

「う~ん、この反応からすると…此処ら辺りだね」

そう言ってイデが指したのは日本から遠く離れた砂漠地帯であった。
しかも砂漠のど真ん中と来ている。

「何でまた砂漠なんだよ」
「仕方ないさ甲児君。それよりキャップ、反応があるのでしたら調査してみる必要がありそうですね」
「うむ、早速ビートルで向かうとしよう。一応甲児君のマジンガーも運搬して行く。現地に向かうのは私とハヤタ、アラシ、イデ、そしてなのはちゃんと甲児君だ」
「キャップ。私はどうするんですか?」
「フジ君は残って通信を行ってくれ」

ムラマツキャップの決定にフジ隊員は多少不満ながらも了解した。
それからすぐに出動メンバーを乗せたジェットビートルがマジンガーZを吊るしながら出発した。

「装置の反応が近づいてます。もうすぐですね」

イデが装置を見ながら言う。
既に日本を離れユーラシア大陸に位置する広大な砂漠に来ていた。
辺り一面砂と照りつける太陽しかない死の世界。
それこそが砂漠なのだ。

「日差しが強いなぁ。私帽子持って来るべきだったかなぁ?」

窓越しから照りつける太陽を見てなのはがそう呟く。
そんな呟きを聞いて皆が笑みを浮かべていた正にその時だった。
突然ビートルの操縦が不能になってしまったのだ。

「どうしたハヤタ?」
「分かりません! 操縦不能です。緊急着陸します!」

ハンドルを幾ら動かそうと反応しない。
皆の顔に焦りが映る。
そのまま、ジェットビートルは広大な砂漠の中に墜落してしまった。
幸い地面が柔らかい砂であった為にビートル自身の破損は軽微な物であった。

「やれやれ、偉い目にあったぜ」
「しかし、一体何故突然ビートルが操縦不能になったんでしょうか?」

ビートルを抜け出した一同が話しをしていた。

「整備不良…って訳じゃなさそうだな」
「みたいですね。発進前に確認しましたが何処も以上は見られませんでしたし」
「では一体何故?」

一同に疑問が募る。
とにもかくにも此処にジュエルシードの反応が見られるのだ。探索するしかない。

「よぉし! 此処は一丁俺とマジンガーZで軽く探し出してやりますよ!」

自身の胸を叩いて甲児が言う。
そしてマジンガーに乗り込もうとした正にその時、甲児は改めてそれに気づいた。

「な、無い! マジンガーZが無い!」
「ええぇっ!」

それには一同が驚いた。
確かに目の前にあるのはビートルだけだ。
マジンガーZの姿が何処にも見当たらない。
まさかあの広大な砂漠の中に落ちてしまったのでは。

「そ、それじゃ私が空から探しますよ」

なのはがそう言ってレイジングハートを手に持とうとした。
が、其処で彼女もまた気づいた。

「あ、あれ? 無い、レイジングハートが無い!」
「な、今度はレイジングハートがないだって!」

それは由々しき問題であった。
レイジングハートが無ければジュエルシードの封印が出来ない。
それにデバイスが無ければバリアジャケットを纏えない状態だ。
いわば今のなのはは唯の女の子である。

「仕方ない。此処から先は歩きながらジュエルシード並びにマジンガーZとレイジングハートの捜索を行うとしよう」

ムラマツキャップがそう言う。
一同は二人三班に分かれてそれぞれ捜索を行った。
ムラマツとイデはジュエルシードの捜索を。
アラシと甲児はマジンガーZの捜索を。
なのはとハヤタはレイジングハートの捜索をそれぞれ行った。

「ねぇ、ユーノ君。レイジングハートって何処に落ちたか、分かる?」
「う~ん、流石にこんなに広大な砂漠の中じゃ見つけるのはかなり難しいよ」

流石のユーノもお手上げ状態であった。
そんなユーノを見てなのははガックリと肩を落とす。

「落ち込んでても仕方ないさ。とにかく頑張ってそれを探そう」
「は、はい!」

ハヤタの励ましを聞いてなのはは頷く。
だが、懸命に探したにも関わらずレイジングハートは結局見つからず仕舞いであった。

「ふぅ…しかし流石は砂漠だ。日差しが凄いなぁ」

額に流れた汗を拭いながらハヤタはチラリと後ろを歩くなのはを見た。
予想外の出来事であったのだろうかなのはの服装は普段の服装と変わらない。
それで砂漠の中を歩くのは正直かなりキツイ。
なのは自身もすっかり下を向きながら歩いている。

「大丈夫かい? なのはちゃん」
「は、はい…大丈夫です」

そうは言っているが余り元気がない。
そんななのはにハヤタは心配そうに見つめていた。
なのはの肩に乗っていたユーノもまた心配そうに見つめていた。
それからまた少し歩いていた時だった。
なのはの視界が歪に歪みだしてきたのだ。

「あ、あれ? 目の前が…クラクラしだして…」

そう言った直後、その場でなのはが倒れてしまったのだ。

「なのは! どうしたの?」
「なのはちゃん!」

倒れたなのはを抱かかえたハヤタがそっと彼女の額に手を当てる。

「いかん、熱中症だ! 何処かで休める場所を探さないと」
「あ、ハヤタさん、あれ!」

ユーノが指差す場所。其処にはおぼろげながらも町が見えた。恐らくあそこなら涼める場所もあるだろう。
ハヤタは急ぎその町に向かった。
町は石造りの建物ばかりが建っておりその町に住むのは殆どが老人ばかりと言った不思議な町であった。
町の誰もがハヤタを珍しそうな目で見ていたのだ。

(この町には老人しか居ないのか?)

疑問に思うハヤタがそのまま町を歩く。すると、そんなハヤタの前に一人の女性が現れた。
明らかに彼女だけ年が若い。
それに格好も高貴な風に見える。

「貴方は一体?」
「私の名はチャータム。私は貴方達の到着をお待ちしておりました」
「僕達を待っていた?」

意味深な事を言うチャータム。
ハヤタはそれに眉を傾げた。
だが、今は詮索をしている場合じゃない。

「それよりチャータムさん。何処かで涼める場所はありませんか? 実は連れの子が熱中症に掛かってしまっていて」
「それは大変ですね! 神殿の方にお越し下さい。其処なら多少は涼める筈です」
「有難う御座います」

ハヤタは一礼してなのはを抱えたまま神殿の中に入っていく。
この都こそ、失われた幻の都こと、バラージの都なのであった。




     ***




ムラマツキャップとイデ隊員は必死にジュエルシードの捜索を行っていた。
が、懸命な捜索にも関わらずジュエルシードは発見出来ず照りつける太陽が二人の下に降り注いでいた。

「見つかりませんねぇキャップ」
「ふむ、仕方ない。一旦ビートルに戻ってフジ隊員に応援を頼もう」

仕方なくビートルに戻ろうとしたムラマツキャップとイデ隊員。
だが、ビートルがあった場所に向かったのだが、其処には何故かビートルの姿が何処にも見当たらなかった。

「あれ? おかしいなぁ。確か此処にビートルがあった筈なのに」

イデが疑問を感じながら前に進んだ。
その時、突如イデの足元が崩れだし体の半分がスッポリと埋まってしまったのだ。

「イデ! 大丈夫か?」
「キャッ、キャップゥゥ!」

イデが悲鳴を上げながらムラマツキャップに助けを求める。
ムラマツキャップも必死に助けようとしたのだが下手に近づけば自分も引き込まれてしまう。
その時、偶々近くを通りかかった甲児とアラシ隊員が二人を見つける。

「キャップ! イデ!」
「二人共大丈夫ですか?」

急ぎ二人の元に駆けつける甲児とアラシ。
アラシが念の為に持っていたロープを使いイデを引き上げる。

「はひぃ、危うく生き埋めになる所でしたよぉ」

助かったイデがそう言う。
そして、ムラマツが深い穴の先を見た。
其処にはバラバラに砕かれたビートルの残骸が其処に埋まっていたのだ。

「キャッ、キャップ! あれ、俺達の乗ってきたビートルですよ!」
「危なかった。もう少しイデを助けるのが遅かったらあのビートルの二の舞だった」
「え、縁起でもない事言わないで下さいよぉキャップゥ」

イデが半泣きで言う。
その時、深い穴から巨大なハサミが姿を現した。
まるでアリ地獄だ。

「あの野郎! アイツがビートルを!」

アラシが持っていたスパイダーショットをハサミに向かい放った。
すると、巨大なハサミから強力な磁場が発生された。
すると吸い寄せられるかの様にスパイダーショットが飛んでいってしまったのだ。

「あぁ、俺のスパイダーが!」
「これでは駄目だ。一先ず一旦退却だ!」
「くそぉ、マジンガーZがありゃぁあんな野郎一捻りなのによぉ!」

口惜しく甲児が言いながら一同はその巨大なハサミから逃げるように退散して行った。





     ***




「う…う~ん」
「気分はどうですか?」

目を覚ましたなのはの目の前に居たのは独特の衣装を着た美しい女性であった。
そして、自分が不思議な建物の中で眠っていた事に気づいた。

「あの…此処は?」
「ノアの神殿です。貴方は熱中症に陥った為に此処に運び込まれたのです。後少し来るのが遅かったら危なかったんですよ」

女性がそう言う。
確かにその通りだ。自分は探索途中で酷い目眩が起こり、その後砂漠の上で倒れてしまったのだ。
その後は良く覚えていないのだが恐らくハヤタが運んできてくれたのだろう。

「そうだ、あの…私と一緒にオレンジ色の服を着た男の人が居ませんでしたか?」
「えぇ、その人は貴方を此処に置いておくと探し物があると言って町を出て行きました」

恐らくハヤタだ。
彼は自分を此処に置いた後に再び捜索に戻ったのだ。

「あの、何処に行ったのか分かりますか?」
「残念ですが其処までは分かりません」

なのはの問いに女性は首を振る。

「あの、私すぐに探しに行きたいんです」
「危険ですよ。砂漠は容易く人の命を奪います。それに、この地にはアントラーが居ます」
「アントラー?」
「砂漠の悪魔です。アントラーは道行く旅人を食らう恐ろしい魔物なのです」

女性の言葉には迫力があった。
その魔物とは恐らく怪獣の事だろう。
だが、そうだとしてもこのままずっと此処に居る訳にはいかない。
第一今のなのはには防衛手段がないのだ。

「それでも、皆の所に行きたいんです。お願いします」
「フフッ、貴方はノアの神の言った通りの子みたいですね。小さいながらも頑固な所があります」
「え? 私を知っているんですか?」
「ついて来なさい」

女性がそう言って歩き出す。
なのははその女性の後に続いて歩き出す。
見れば見るほど不思議な建物だった。
一面土を固めたような壁で作られている。
かなり古めかしい作りの建物であった。
そして、二人は神殿の奥に辿り着く。
其処には分厚いカーテンが掛けられておりそれを取り払うと、其処には何かの人を象った像が置かれていた。

「あ! ウルトラマン!」

其処に居たのは間違いなくウルトラマンであった。
そして、そのウルトラマンを象った像の手には青く輝く石が持たれていた。

(あれ? この光景、何処かで見た気が…)

それは此処に来る前になのはが見た夢と同じ光景だったのだ。
砂漠の都、綺麗な装飾を施した女性、ウルトラマンを象った像、青い石。
間違いない。これは夢で見たのと同じ光景だ。

「ノアの神です。ノアの神はかつて遥か昔にこの都に訪れた災いを振り払ってくれました。そして、神はこの青い石を守り石として託してくれたのです」

女性はそう言うとその場に跪き祈りを捧げる。
なのはも女性と同じようにその場に跪き祈りを捧げた。
何を祈ったかは祈っている者本人にしか分からない事でもある。
やがて、祈り終わった女性が立ち上がりなのはを見る。

「なのはさん」
「は、はい!」
「ノアの神が申しました。貴方にこの石を託すようにと」

そう言うと女性が像の持っていた石を取るとなのはに手渡す。

「え? で、でもこの石はこの町の守り石なんじゃ?」
「ノアの神のお告げです。きっとこの石が貴方を守ってくれると。それと、砂漠を歩いていくつもりならこれを着ていきなさい」

女性がなのはに手渡したのは黒い布であった。

「これはアバヤと言ってこの地の伝統的な衣装です。砂漠の日差しはとても強い。素肌を曝け出していては火傷になる危険があります。これで全身を覆いなさい」
「あ、あの…えっと…」
「私の名はチャータムです。礼など要りません。全てノアの神のお告げなのです。この町にはもう若者が居らず、広大な砂漠を歩く力を持った者は残念ながら居りません。ですが、この石がきっと貴方を守ってくれる筈です。貴方の旅の無事を祈っています」
「チャータムさん…」

其処から先の言葉は見つからなかった。
なのはは深く一礼した後アバヤを全身に纏い青い石を手に町を出た。
町の外は一面広大な砂漠であった。
そんな中、一人はぐれてしまったなのはは探し物の他に仲間達を探す為に再び広大な砂漠を歩く事になった。
相変わらず砂漠の気候は暑いのだが、チャータムがくれたアバヤのお陰か不思議な事にそれ程暑さを感じる事がなかった。
まるで極普通に道を歩いているかのような感じがしたのだ。

(不思議だなぁ。この服を着てるとあんまり暑さを感じないや)

その証拠に幾ら歩いても汗を掻くことがない。
恐らくこのアバヤには特殊な力が備わっているらしく、そのお陰でなのはを強い日差しと過酷な環境から守ってくれているのだろう。
心強い限りである。
それから暫く砂漠を歩いていた時だった。
目の前に砂漠の色とは一風変わった物を見つける。
それは黒い何かであった。
疑問に思ったなのはがそれに近づく。
黒い物体は固い岩盤の様な物だった。
嫌、これは金属の硬さだ。
もしやと思い回りの砂を軽く退ける。
其処から現れたのはマジンガーZの顔であった。

「あった! こんな所にマジンガーZが」

マジンガーZを発見出来たなのはの顔に笑みが浮かぶ。
もしかしたらマジンガーの通信機を使えば皆に居場所を教えられるかも知れない。
そう思っていた時だった。

「イーーッ!」
「イーーッ!」

回りから妙な奇声が上がった。
振り返ると其処には奇妙な服装をして、顔に妙なペイントを施した数人の男性が立っていた。
その男性達がなのはと、マジンガーZを睨む。

「え? あ、あのぉ…貴方達は誰ですか?」
「イーーッ! 間違いない、これがそうです」

男の一人が後ろを向いてそう言う。
すると突然其処から姿を現したのは不気味な姿をした怪物であった。
顔には巨大な複眼がつけられており口には虫の様な牙が生えている。
全体から見て蜘蛛をイメージとした服装であった。

「ホァッ! ホァッ! ホァッ! 見つけたぞ、これがあの光子力を動力源とするロボットか! これを持ち帰れば我等ショッカーの世界制服の目的がまた一歩前進すると言う物よ!」
「ショ、ショッカー?」

聞いたことの無い組織であった。
だが、少なくともこのマジンガーZが狙いなのは明白な事だった。

「イーーッ! 蜘蛛男様。早速運搬の作業に取り掛かります」
「待て! 我等を見た者が居るようだぞ」

蜘蛛男がそう言う。
すると一斉になのはを見る。
その視線を見たなのはの肩が震える。

「我等ショッカーの姿を見た者は生かしてはおかん! それが、例え女子供であろうとな!」

蜘蛛男がそう言うと回りに居た戦闘員達も皆なのはに対し威嚇し始める。
明らかにかなりヤバイ状況だった。
目の前に要る輩達は明らかに普通じゃない。
それに、今のなのはにはレイジングハートがない。
その為バリアジャケットを纏う事もデバイスで迎撃する事も出来ない状況なのだ。
正しく絶体絶命の状況と呼べた。
だが、そんな時、何処からともなくギターの音色が聞こえてきた。
その音色は何処か悲しげな曲で、そして儚げに聞こえてきた。

「な、何だこのギターの音色は?」

戦闘員達や蜘蛛男もその音色の主を探していた。
そして、それはマジンガーZの頭部に立っていた。
黒いジャケットとズボン、それにカウボーイハットに白いマフラーをし、白いギターを弾いている。

「貴様! 一体何者だ! 我等の邪魔をするとどうなるか分かってないのか?」
「フッ、ショッカーともあろう者が子供相手にムキになってるのを見ててつい茶々入れたくなっちまってなぁ」

青年が笑いながらそう言う。
ギターを背中にしょい返すと飛翔して蜘蛛男の前に降り立つ。
戦闘員達が警戒の眼差しを青年に向ける。

「貴様、余程死にたいらしいなぁ? 死ぬ前にこの俺様の名を聞かせてやる!」
「その必要はないぜ。ショッカー怪人の蜘蛛男。噂は知ってる。何でも毒針の腕前は超一流。狙われた者の末路は絶対の死。巷じゃもっぱらの噂だ」
「当然だ。俺はショッカーで改造された改造人間だ。この俺様の毒針は猛毒だ。食らえば忽ち肉が溶けてこの世から骨の一本も残さん。俺の腕前は世界一よ!」

自信満々に蜘蛛男が言う。
だが、それを聞くと青年が鼻で笑い出した。

「世界一? 確かにそうだろうよ。だがなぁ、お前さんの腕前…【日本じゃぁ二番目】だぜ」

青年が指日本を突き出してそう言い放つ。
それには蜘蛛男も怒りを露にしだす。

「な、何! この俺様が二番目だと! では日本一は誰だ!」
「フッ…目の前に居るだろう?」

帽子の唾を持ち上げて自分を指差す。

「な、なにぃ! 貴様ぁ、何処の馬の骨とも知らない分際で生意気な事を…どうやら余程死にたいようだな」
「く、蜘蛛男様! こいつはあの早川健と言う男です! かつて我等ショッカーも狙っていた男です」
「何! 貴様、まさかあの私立探偵の早川健か?」
「ほぅ、どうやら俺の名もそれなりに知れ渡っているようだな。ところで、どうするんだ? 勝負するのかしないのか?」
「聞くまでもあるまい」

忽ち戦闘員達がその場から退き、蜘蛛男と早川健の二人になった。
二人が互いにじっと睨みあっている。

(馬鹿め、貴様など俺の毒針で一瞬にしてあの世に送ってやる)

蜘蛛男の脳裏には毒針を食らい肉が溶け骨も残さず消えていく健の姿が浮かんでいた。
そして、一瞬の勝負が始まった。
蜘蛛男が口から猛毒の染み込んだ毒針は発射する。
が、それとほぼ同時に早川は両手から何かを飛ばした。
一瞬針がぶつかり合う音がしたかと思うと蜘蛛男の目の前にそれはあった。
それは蜘蛛男が飛ばした毒針であった。
真ん中から真っ二つに裂けている。
そして、蜘蛛男の頭部にある角に何かが突き刺さっていた。
それは細い針であった。
早川は細い毒針を更に細い針で真っ二つに裂き、尚且つ蜘蛛男の頭部の角に突き刺したのだ。

「え? えぇ! 一体何がどうなってるんですかぁ?」
「お嬢ちゃん。要は俺が日本一だって事さ。これで分かっただろ? 俺の腕前が」
「ぐぐっ…た、確かに腕前は分かった。だが、そんな物此処では何の役にもたたんわ! やれ!」
『イーー!!!』

蜘蛛男が命じると戦闘員達が一斉に早川に襲い掛かる。
そして、殴る蹴るなどの暴行を始める。

「あぁ、早川さん!」
「ハハハ、馬鹿め! 我等ショッカーに楯突くからそうなるのだ!」

悲鳴に似た叫びを上げるなのはの前で蜘蛛男が勝ち誇ったかの様に笑う。
その前で戦闘員達が未だに暴行を続けていた。

「どれ、そろそろ良いだろう」

戦闘員達が暴行を止めて引き下がる。
だが、其処には誰も居なかった。
無論、暴行をしていた筈の早川の姿など何処にもない。

「い、居ない! 奴が居ない! 一体何処に居るんだ!」

居なくなった早川を探す一同。
その時、遠くから何かがこちらに向かってくる音がした。
戦闘員達が音のした方を向く。
其処で見たのは、赤いスーツを纏った何者かが操る赤い車が目の前に迫っていた光景であった。

『ギイィィィィッ!』

成す術もなく轢き逃げされていく戦闘員達。
残ったのは蜘蛛男唯一人であった。

「な、何者だ貴様!」

車から降りた者を前に蜘蛛男が指差す。
するとその者は笑いながら声高々に名乗る。

「ズバッと参上! ズバッと解決! 人呼んでさすらいのヒーロー! 怪傑ズバット!」
「か、怪傑ズバットだとぉ!」
「そうだ。罪のない人々を殺し、今正に幼い命を奪おうとするその悪行。このズバットが許さん!」
「ほざけ、返り討ちにしてくれるわ! ホァァァッ!」

雄叫びを挙げて蜘蛛男がズバットに向かっていく。
蜘蛛男が繰り出す攻撃の数々を難なくかわしていくズバット。
そして、かわし様に手から鞭を取り出し蜘蛛男の首に放つ。
首に絡まった。

「グゥッ!」

首に絡まった鞭を解こうともがく蜘蛛男。
だが、そんな蜘蛛男を後ろから蹴り倒す。
うつ伏せに倒れた蜘蛛男の上に跨りズバットが鞭の力を更に強める。

「さぁ、聞かせて貰うぞ! 2月2日に飛鳥五郎と言う男を殺したのは貴様か?」
「何、2月2日だと? 知らん。その時俺はまだ調整中だった。殺人が出来る筈がない!」
「しらばっくれるんじゃねぇ。正直に吐いた方が身の為だぜ!」
「ほ、本当だ! う、嘘じゃない! い、命だけは助けてくれぇ!」

先ほどまでの威勢はどうした物か。一転して助けを求める情けない姿が目の前に映っていた。

「さぁて、どうした物か? このまま首の骨をへし折ってやっても良いんだがなぁ。そうすりゃ喜ぶ連中も大勢居るだろうよ」
「ひ、ヒィィッ!」

不気味に呟くズバットに恐怖を感じる蜘蛛男。
だが、その時ズバットのヘルメット部分からなにやら警告音らしき音が聞こえてきた。

「ちっ、肝心な時に!」
「い、今だ!」

僅かに力が緩んだ隙に蜘蛛男がズバットの拘束を掻い潜り逃げ延びる。

「覚えていろ怪傑ズバット! 貴様の顔は覚えたからなぁ!」
「やれやれ、悪党に覚えられるのは慣れっこなんでな。生憎俺はてめぇの顔を覚える気はねぇぜ」
「おのれぇ、今に目に物を見せてやる! 覚えていろぉ!」

そう言い放つと蜘蛛男はまるで煙を撒くかの様に消え去ってしまった。
今から追っても間に合わない。
そう判断したズバットはスーツを脱ぎ元の早川健に戻った。

「さてと、怪我はなかったか?」
「は、はい! 有難う御座います」
「なぁに、礼は要らないぜ。何せこれは俺の性分なんでな。ところで、何でまた一人でこんな広大な砂漠を歩いてるんだ?」

事情を知らない早川はなのはに尋ねた。
それになのはは答えた。
自分達の仲間が逸れてしまい今一人で探し回っていた事。
そして目の前に埋もれているマジンガーZを引き上げようとしたらショッカーの怪人に襲われた事。

「鳴る程、これが音に聞いたスーパーロボットマジンガーZか。しかし乗り手が居ないんじゃ木偶の坊と同じだな」

早川が動かないマジンガーを見て呟く。
言い返そうと思ったが止めた。
確かに早川の言う通りだからだ。
確かにマジンガーは凄いロボットだ。
だが乗り手が居なければマジンガーもその力を発揮する事が出来ない。

「早川さん、マジンガーを動かす事って出来ませんか?」
「フッ、任せな。俺は何をやらせても日本一の男だぜ」

笑みを浮かべながら早川はパイルダーのハッチを開き中に入る。

「成る程、こりゃ素人が動かそうとしたら1年は掛かる代物だな」
「そ、それじゃ駄目なんですか?」
「フッ、前にも言った筈だぜお嬢さん。俺はロボットの操縦に関しても日本一なのさ」
(聞いた気がしないんですけど)

内心そう呟くなのはを他所に早川は操縦桿を握り締める。
エンジンを始動させて操縦をする。
すると今まで動かなかったマジンガーZが動き出したのだ。
砂場から立ち上がり雄雄しきその巨体が大地に立ち上がる。

「凄い! マジンガーが立ち上がったぁ!」
「ま、俺に掛かればざっとこんなもんさ」

そう言うと早川はパイルダーを分離して地上に降ろす。
ヒラリとパイルダーから飛び降りるとギターを背負い再び砂漠の地を歩き出す。

「俺の出来るのは此処までだ。その持ち主が余程の近眼でなけりゃこのでかい図体を見れば一発で気づくだろうよ」
「有難う御座います。早川さん」
「フッ、縁があったらまた会えるだろうよ。お嬢ちゃん」
「はい、でも私はお嬢ちゃんじゃなくて高町なのはって名前がありますよ」
「そうかい、そんじゃまた何処かで会おうぜ」

それだけ言い残すと早川は去ろうとする。
だが、其処でピタリと立ち止まり早川は再びなのはの方を向く。

「そう言えば砂漠を歩いていた時に偶然見つけたんだが、これは君のか?」

そう言って早川がポケットから取り出したのは待機状態のレイジングハートであった。

「あ、レイジングハート!」
「どうやらお前さんのだったみたいだな。いきなり空から降って来たもんだからてっきり飴玉かと思っちまったぜ」

ニヤリと笑いながら早川が言う。
それを聞いたなのはが不安になる。

「あの…もしかして舐めました?」
「嫌、齧っただけだ」

本人は問題なさそうに言っているが大問題だ。
確かに見てみると微かに歯型がついている。
ちょっと嫌な気分だった。

「ま、そんな訳なんでな」
「あ、はい」

カッコいいのか良くないのか今一分からない人でもあった。
だが、これで空から甲児達を探す事が出来る。
それは何よりも嬉しい事であった。

「おぉぉぉい!」
「あ、皆!」

だが、探す必要はなかった。
早川が立たせたマジンガーZを目印にして甲児やハヤタ達が駆けつけてくれたのだ。

「なのは、熱中症は大丈夫なの?」
「うん、チャータムさんがくれたこれのお陰で砂漠も平気だったんだ」
「チャータム、誰だその人?」

甲児が首を傾げる。
チャータムの存在を知っているのは今の所ハヤタとなのはだけなのだ。

「あ、それよりもジュエルシードはどうでした?」
「それがさっぱり見つからないんだよ。もしかしてイデの装置壊れてるんじゃないのか?」
「失礼な! 僕の作った装置は完璧です! 故障している筈がありません!」

アラシの言葉にイデがムッとしたのか言い返す。

「じゃぁ何で見つからないんだよ。こっちぁお前さんの言ってる場所を何遍も探してるんだぜぇ!」

甲児が不満そうに呟いている。
どうやらそちらもかなり苦労したようだ。
その時だった。
遠くの方から雄叫びが聞こえてきた。
見ると巨大なハサミを持った怪獣が砂の中から現れたのだ。

「な、何ですかあれは?」
「アイツ! 俺達のビートルを沈めた野郎だ!」

甲児が憎らしげに言う。
どうやら今回のビートル不調の原因はあの怪獣にあったようだ。

「いかん、あの方向にはバラージの町が!」
「チャータムさん達が!」
「よし、俺がマジンガーで蹴散らしてやらぁ!」

甲児がそう言ってパイルダーに乗り込みマジンガーとドッキングする。

「待ちやがれクワガタ野郎! てめぇの相手は俺とマジンガーZがしてやらぁ!」

マジンガーZがバラージの町を壊そうとするアントラーに殴りかかる。
が、Zの拳はアントラーの硬い甲殻のせいで全く通らない。

「か、かてぇ…何て頑丈な野郎だ! だったらこれを食らえ!」

次にZの口から猛烈な突風が発せられた。
ルストハリケーンだ。
その中には強力な酸が含まれている。
食らえば忽ち腐食しボロボロにされる代物だ。
それを食らったアントラーの甲殻が徐々に腐食しだしていく。
だが、その時アントラーの体から眩い閃光が発せられ、瞬く間に体の傷がなくなってしまったのだ。

「キャップ、間違いありません! ジュエルシードはあの怪獣の中にあります!」
「何だって!」

イデが装置を見て叫ぶ。
其処には確かに怪獣の中に反応があるのが検地されていた。
だとしたらこのままZだけで戦うのは振りな状況だ。

「くそぉ、こんな時スパイダーがあれば甲児の援護が出来るってのによぉ」
「愚痴ってても仕方あるまい。我々はバラージの町の市民の救助を行うんだ!」
「了解!」

ムラマツキャップの指揮の元、皆が住民の避難を行う。
が、その先ではジュエルシードを宿したアントラー相手に苦戦を強いられているZの姿があった。
このままではZと言えども危険である。
その時だった。
眩い閃光と共に上空からウルトラマンが颯爽と現れたのだ。

「ウルトラマン!」
「有り難ぇ。助かったぜ!」

ウルトラマンを見て甲児も安堵する。
Zがまずアントラーのハサミを押さえ込む。
動きの止まった所へ今度はウルトラマンが腕からスラッシュ光線を放った。
しかしその光線の殆どが貫通せずに弾かれてしまう。

「ウルトラマンの武器が通じない! だったらこれで溶かしてやらぁ!」

今度はマジンガーの胸からブレストファイヤーが発せられた。
赤く輝く熱線がアントラーの体に浴びせられる。
だが、何時まで当ててもアントラーの甲殻は溶ける気配を見せない。

「ぶ、ブレストファイヤーが効いてない! こいつぅ!」

唸る甲児。
するとアントラーがハサミを振り上げる。
ハサミを持っていたマジンガーは軽々と宙へ投げ飛ばされてしまった。
そしてそのまま地面に叩きつけられる。

「ぐぁっ、くそぉ! 何てパワーだよ!」

衝撃の余り咽返る甲児。
私服状態の為か衝撃を吸収できず諸にそれを食らってしまったのだ。
動けないマジンガーに向かいアントラーがハサミをギチギチ言わせながら迫ってくる。
そうはさせまいとウルトラマンが前に立ち、腕を十字に組んでスペシウム光線を放つ。
が、そのスペシウム光線でさえアントラーの分厚い甲殻を破る事は出来ず拡散して散ってしまった。

「そんな、スペシウム光線も効かないなんて!」

驚愕であった。
Zとウルトラマンのあらゆる攻撃が全く効かない強敵の出現であった。
既にウルトラマンの胸のカラータイマーも点滅しだしている。
後もって30秒位しか時間がない。
どうすればあのアントラーを倒せるのか?

「あ、そう言えば」

ふと、なのはは思い出したかの様にチャータムから貰った青い石を目の前に出す。

「お願い、ノアの神様。バラージの皆を助けて下さい」

必死に石に向かい祈るなのは。
すると青い石が閃光を放つ。

「え?」

青い光を放った石は何とそのままなのはの首にとりつけてあったレイジングハートに吸い込まれていった。
驚くべき光景であった。

「れ、レイジングハート…大丈夫?」
【大丈夫です。それよりも、あのアントラーを倒す方法が私達にはあります】
「ほ、本当!?」
【まずは私を起動して下さい。其処でお教えします】
「分かったよ」

言われた通りにレイジングハートを起動させバリアジャケットを纏いデバイスを手に持つ。
すると、突如レイジングハートの形状が変わりだした。
まるで銃口の様な形になったレイジングハートを持つ。

【マスター、デバイスの先端をアントラーに向けて下さい】
「こ、こう?」
【魔力エネルギーを収束します。私が合図したら引き金を引いて下さい】
「うん!」

頷くなのは。
するとレイジングハートの先端に桜色の魔力が集まっていく。
その光は今までのよりも遥かに大きく、そして輝いていた。

【出力50%突破、もう少しです】
「急いで! 急いで!」

なのはが急かす。
その前ではウルトラマンとマジンガーZが必死にアントラーと戦っている。
もう時間がない。

【出力98、99、100%! 今です】
「いっけぇ!!」

アントラーに向かい真っ直ぐ引き金を引いた。
すると収束した魔力砲が一気に放たれたのだ。
放たれた魔力砲はアントラーの胴体を貫いていく。
風穴を開けられたアントラーはそのまま力なくその場に倒れこみ、やがて爆発した。

「な、何だ? 今の攻撃」

マジンガーから見ていた甲児はすぐ下でなのはがレイジングハートを構えているのを見た。

「もしかして、なのはがやったのか?」

爆発し、脅威の去ったバラージの町。
ウルトラマンは空へ帰っていき、町には再び平穏が訪れたのであった。




     ***




「しかし凄いなぁなのはのあの一撃」

戦闘を終えた一同はなのなの元に集まっていた。
原因は彼女がアントラーを仕留めた際に放った魔力砲である。
スペシウム光線すら弾き返したアントラーの分厚い甲殻をぶち破ったのだ。

「えっと、私も咄嗟だったもんで、そのぉ…」
「でも凄かったよなのはちゃん。今回は君に二回も助けられたな」
「あぁ、全く神様仏様なのは様だぜ」
「そ、そんなぁ///」

皆に褒められてなのはも思わず赤面しだす。

「そう言えば、その魔力砲って何て名前なの?」

イデが最もな疑問を投げ掛ける。
それを聞かれたなのははハッとする。
そうだ、名前なんて考えてなかった。
だが、何時までも名無しでは格好がつかない。
そう思ったなのはは少し考えた末に…

「そうだ、ディバインバスターってのはどうでしょうか?」
「ディバインバスターかぁ、良いじゃん。カッコいいぜぇそれ」

甲児は勿論皆は大絶賛であった。
かくして、なのはに新しい決め技として強力な魔力砲【ディバインバスター】が付属された。

「さぁ、帰りましょう」

なのはが満面の笑みでそう言う。
だが、それを言った途端、皆の顔が曇った。

「実はなのはちゃん、ビートルはあのアントラーのせいで壊されてしまったんだ」
「おまけに通信機器もお釈迦になっちゃってて、二進も三進もいかない状況なんだよ」
「えええええええええええええ!」

一難去ってまた一難。
このまま暫くこの砂漠の地で過ごすしかないのだろうか。
そう不安になっていた。
正にその時。
一同の上空に突如として一隻の巨大な飛行船が姿を現せたのだ。

「な、何だあれは!」
「まさか、また異星人の襲来か?」

一同が空に浮かぶ巨大な飛行船を見て警戒しだす。
すると、そんな一同の前に突然映像が映し出された。

『皆さん、安心して下さい。私達は敵ではありません。私達は時空管理局。貴方達の救助にやってきました』

翠色の髪をした女性がそう言う。
かくして、一同はこの女性の言う時空管理局と接触した。
彼等は果たしてこれから先どう物語に絡んでいくのか?
その詳細はまた後の話で。




     つづく 
 

 
後書き
次回予告
久しぶりに故郷に帰ってきた少女の前に現れたのはもう一人の少女であった。
彼女の目的は一体?

次回「もう一人の魔法少女」

お楽しみに 
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